母親のように慕った同居犬の死を悲しむ犬、生前使っていたベッドで眠る(米)
学術雑誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」が2022年2月、社会性が非常に強い犬は親密な関係にあった存在の死に対して悲しみの行動を見せることを報告したが、それを裏付けるような出来事がアメリカで起こった。ある飼い犬が、長年一緒に暮らしてきた母親のような存在の犬の死を悲しんでいた。米ニュースメディア『Newsweek』などが伝えている。
【動画】同居犬と最後の別れを経て、これまでにない行動を見せた犬
米カリフォルニア州在住のナタリア・アルヴァレスさん(Natalia Alvarez)は、今年6月に愛犬で19歳のメスの“ヴァカ(Vaca)”と永遠の別れをした。ヴァカはがんを発症してから4年ほど闘病生活を送っていたが、最後は安楽死によって安らかに息を引き取った。
安楽死の前日に撮影された動画には、ヴァカを母親のように慕っていた同居犬“カネラ(Canela)”が、優しくヴァカの顔を舐めている様子が映っていた。ヴァカとカネラはもともと近所の人が飼っていた犬で、今から17年前の2007年に高校生だったナタリアさんは、鎖で繋がれてアバラが浮いて見えるほど痩せ細ったヴァカに出会った。
ヴァカが可哀想でならなかったナタリアさんは、学校の帰りにランチの残りをあげるようになったが、それから2年ほど経った2009年、ヴァカの飼い主が子犬を飼い始めたことに気づいた。この子犬がカネラだった。カネラは鎖ではなくロープで繋がれており、ナタリアさんはカネラにもランチの残りをあげることにした。
その後、ナタリアさんは地元の動物保護団体にヴァカとカネラを引き取りたいと相談したが、飼い主は2匹を手放さなかった。そこでナタリアさんはある計画を思いついたそうで、米ニュースメディア『Newsweek』の取材に対してこのように語っている。
「母に頼んで、ヴァカとカネラの飼い主と仲良くなってもらったんです。それで私は放課後にヴァカとカネラに餌をあげたり、一緒に遊んだりできるようになったのです。学校に行く前に朝早く家を出て、食事の世話や犬小屋を掃除し、放課後にも同じように餌をあげて一緒に遊びました。」
そして2012年、ヴァカとカネラの飼い主はようやくナタリアさんに2匹を譲ることを承諾した。この頃からカネラはヴァカを信頼しきっており、餌をもらおうとするとヴァカの背後に隠れた。この飼い主はカネラの世話を怠っていたようで、カネラはヴァカのことを母親のように慕っていた。
ナタリアさんのもとで幸せな生活を送っていた2匹だが、4年前にヴァカはがんを発症し、変性疾患にも悩まされるようになった。しかしヴァカは、奇跡とも言えるほどの生命力で4年間を生き抜いた。最後は歩くことも、食べることもできなくなったヴァカの姿を見て、ナタリアさんは苦渋の決断で安楽死させることにした。
最後の別れの時、カネラはヴァカとの別れに気づいたのか、赤いベッドに横たわるヴァカの顔を愛おしそうに舐めて最後の挨拶をした。そしてヴァカは、暖かい太陽の日差しが降り注ぐ木の下で、薬剤を投与されたのち安らかな眠りについた。
この後、ナタリアさんはヴァカの亡骸とともに自宅に戻ったが、カネラはヴァカがいつも横たわっていた赤いベッドで眠っていた。ナタリアさんが投稿した動画には、ヴァカを偲ぶようにしてベッドに横たわるカネラの姿が映っている。ナタリアさんはヴァカを失ってからのカネラについて、次のように明かしている。
「カネラは私がキッチンにいると、いつもやってきて食べ物やおやつをねだっていたんです。だけどヴァカが亡くなった後は、そんなこともしなくなりました。通常与えるご飯だけは食べますが、おやつをもらいにキッチンに来ることはしなくなったんです。それにカネラは赤いベッドで寝るのが好きじゃなかったんですよ。多分カネラにとって快適じゃなかったか、それがヴァカのベッドだと知っていて遠慮していたのかもしれません。」
カネラはしばらくの間、散歩に行くことも拒んで食べ物もあまり口にしなくなったため、ナタリアさんはカネラを動物病院へ連れて行き食欲増進剤を処方してもらった。今では、ヴァカのいない生活にカネラは慣れてきたようだが、ナタリアさんは今回のカネラの動画によって、「動物が愛する者の死を悲しんだり、さまざまな感情を持つ生き物であることを知ってもらえたら」と願っており、このように付け加えている。
「皆さんが犬や他のペットを単なる所有物としてではなく、家族の一員とみなし、扱うようになってほしいと願っています。」
画像は『The Spoiled Pack TikTok「Dogs grieve too」』より
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)