ベルカントの名にふさわしい、甘く官能的で優美なベッリーニのロマンティックなオペラ『夢遊病の女』を新国立劇場にて初上演
2024年10月3日(木)~10月14日(月・祝)新国立劇場 オペラパレスにて、2024/2025シーズンオペラ開幕公演『夢遊病の女』が上演されることがわかった。
新国立劇場オペラ新シーズンのオープニングは、ロマン派初期の作曲家ベッリーニの『夢遊病の女』を初上演。作曲家ベッリーニ(1801~1835)は、『夢遊病の女』のほか『ノルマ』『清教徒』などのオペラで知られるベルカント・オペラを代表する作曲家。“ベルカント”の名にふさわしい、甘く官能的で優美な旋律が特徴で、その旋律美はピアノの詩人・ショパンを魅了し、ワーグナーにもその美しさと完璧さが賞賛され、19世紀パリ・ロマン派の楽壇で一世を風靡した。クラシック、特にロマン派音楽のファンの方には必聴の作品だ。
『夢遊病の女』は主題も極めてロマン的で、スイス・アルプスを舞台にした若いカップルの愛の物語が、叙情的で瑞々しい音楽で描かれる。実は夢遊病のアミーナと婚約者エルヴィーノ、エルヴィーノの元恋人で野心的なリーザ、リーザの恋人アルフィオの暮らす村をロドルフォ伯爵が訪れたことで、誤解からすれ違ってしまう恋人たち。歓び、激情、悲しみと、愛をめぐる豊かな感情が美しいアリアで歌われる。
指揮は『トスカ』の伝説的名演に続き、イタリア・オペラを知り尽くす名匠マウリツィオ・ベニーニが登場。ベニーニならではの絶妙な呼吸と劇的な演奏は、イタリア・オペラの真髄を伝えるもの。ベニーニはまたベルカント・オペラの専門家として名を馳せ、メトロポリタン歌劇場や英国ロイヤルオペラなど世界の著名劇場でベルカント・オペラの指揮を任されて、歌手・オーケストラ双方の音楽、とりわけ旋律の美しさを際立たせる手腕が絶賛されている。
アミーナ役には、期待の新星クラウディア・ムスキオが新国立劇場初登場。イタリア出身でシュトゥットガルト州立劇場専属歌手のムスキオは、甘い声と正確なテクニック、そして並外れた演技力でファンを集め、『愛の妙薬』アディーナで「Opernwelt」誌の2023年最優秀歌手にもノミネートされた注目のソプラノだ。今年7月には現地のファンの期待の中でアミーナ役にデビュー、その表現力で感動を誘い、連日スタンディング・オベーションの熱狂を巻き起こした。エルヴィーノ役は世界最高峰のベルカント・テノール、アントニーノ・シラグーザ。世界の主要歌劇場を飛び回り、超絶的なテクニックで圧倒的人気を誇る大スターのシラグーザが、新国立劇場には2013年『愛の妙薬』以来11年ぶり、待望の登場。日本人キャストも妻屋秀和、谷口睦美、伊藤晴、近藤圭と実力派が揃った。
演出は英国ロイヤルオペラなどで活躍する気鋭の演出家バルバラ・リュック。俳優からオペラ演出家に転身し、作品を丁寧に深く読み解く力が賞賛される注目株。
また、『夢遊病の女』は合唱の役割が重要で、オペラの合唱の魅力が余すところなく活かされているのも聴きどころのひとつ。新国立劇場が誇る合唱団がもう一人の主役のように活躍するので、そちらも期待しよう。
なお、本プロダクションはスペインのテアトロ・レアル(マドリード)及びバルセロナ・リセウ大劇場、イタリアのパレルモ・マッシモ劇場との共同制作で、2022 年12月にマドリードで初演されている。
新国立劇場オペラ2024/2025シーズン開幕公演『夢遊病の女』トレイラー La Sonnambula New National Theatre Tokyo 2024年10月公演
【あらすじ】
スイスの小さな村で間もなく結婚を迎えるアミーナとエルヴィーノ。お忍びで村にやってきた領主の跡取りロドルフォ伯爵が投宿した宿屋を、その夜夢遊病のアミーナが訪れ、無意識のまま彼のベッドで寝入ってしまい、集まった村人たちを驚愕させる。不実を疑い結婚をやめると言い出したエルヴィーノと、これを機によりを戻そうとするリーザ。ロドルフォ伯爵はアミーナの潔白を証明しようと奔走するが、若き恋人たちの運命は…。