カモ井加工紙「mt factory tour vol.13」(2024年9月11日~9月24日開催)~ 来場者1万人超え!マスキングテープづくしの工場見学に行ってきました
デニム、帆布(はんぷ)、畳縁(たたみべり)……倉敷で生まれたものづくりは数多く、お土産としても人気のあるものばかりです。
そのなかでも、カモ井加工紙が製造するマスキングテープ「mt(エムティ)」は、豊富なラインナップとお手ごろに買える気軽さが魅力のアイテムです。文房具として使うことはもちろん、お掃除やインテリアとしても使えるシリーズもあるので、幅広い年代から愛されています。
県外の友人にお土産でmtを渡すと、おしゃれなデザインと使いやすさに喜ばれるので、筆者もよく購入しています。
ファンも非常に多いと聞くmt。その魅力を知るべく、年に一度開催されるmtの工場見学に行ってきました。
工場見学のようすと企画された想いを紹介します。
カモ井加工紙が主催する「mt factory tour」とは
「mt factory tour」は、カモ井加工紙株式会社が年に一度開催する工場見学ツアーです。2012年にスタートし、2024年で13回目の開催となりました。2024年の開催期間は9月11日から9月24日の2週間でした。
倉敷のお土産として人気のあるmtの製造工程を見学できるほか、豊富なラインナップのmtの販売や、mtを使ったワークショップなどが楽しめます。量り売りやひもくじなど、少し変わった展示販売もありました。
ここでしか手に入らないような限定アイテムも並ぶので、毎年参加するリピーターも多いそうです。
カモ井加工紙は、2024年で創業101年目を迎えました。次の100年を目指して新たな取り組みをおこなうようすが、mt factory tourからも伝わってきました。
mt factory tour vol.13のようす
筆者は2024年9月18日(水)の午前中の工場見学に参加しました。工場へ向かうバスは、JR倉敷駅近くのカモ井パーキングから発車します。
パーキング内で受付を済ませ、参加証となるパスカードと帰りのバスチケットを受け取ります。バスチケットには、帰りに乗るバスの時間が記載されていますが、空席さえあれば指定時間以外のバスに乗車しても良いそうです。ゆっくり落ち着いて工場見学ができるのはうれしいですね。
しばらくすると、mtらしさ満載のラッピングバスがやってきました。かわいいバスのデザインに思わず写真を撮りたくなります。
車内ではカモ井加工紙のプロモーションビデオを視聴し、スタッフのかたからの注意事項説明などを受けているとあっという間に工場に到着しました。
バスを降りるとすぐにノベルティが手渡されます。
バッグのなかにはmtグッズが入っていました。ランダムで「切断体験アタリ券」や「ひもくじ参加券」が入っている場合があるため、ノベルティの中身はすぐに確認します。
筆者は残念ながら当たりませんでしたが、十分すぎるノベルティの内容に大満足です。
mt製造の裏側が見られる工場見学
ノベルティを抱えながら、いよいよ工場見学スタートです。
工場のなかは清潔感があり、天井から吊るされたカラフルなのぼりが明るく着飾っていました。
工場内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。
まず紹介されたのは、「リワインド」という工程です。柄が印刷された大きな幅のマスキングテープを、機械を使って紙管(しかん)に巻いていきます。
1本の芯に巻かれるマスキングテープの長さは7m。昔は15m巻いていましたが、10m、7mと少しずつ減っていったそうです。
mtが巻かれる芯は特注品で、芯の内側にはmtのロゴが印刷されていました。工場見学に参加しないと知らなかった豆知識でした。
リワインドで出来上がったマスキングテープは「半製品(はんせいひん)」と呼ばれ、続いて切断機にセットされます。
切断機はmtのリメイクシートでかわいくラッピングされており、工場のなかでもひときわ目立っていました。切断機を担当するスタッフが、それぞれ自分の好きな柄のmtで装飾しているそうです。お気に入りの柄の切断機、なんだか愛着が湧きそうですね。
続いて紹介されたのは「コンビネーション機」。同じ柄のmtを大量生産する際に使用される機械です。
見学した際には、切断したmtをロボットがフィルム包装機に入れ、ラベルが貼られていく作業を見られました。ロボットの力も上手く活用しながら、mtが作られているんですね。
大量生産ができるmtもあれば、手作業によって完成するmtもあります。コンビネーション機の向かい側では、人手でフィルム包装の作業がおこなわれていました。
サイズや幅がさまざまなmtは、きちんと切断できているかをチェックされ、一つ一つにフィルムがかぶせられます。社員のかたは手早くスムーズにフィルムをかぶせていましたが、筆者がやったら日が暮れてしまいそうです。
見学中は、社員のかたが工程を説明してくれるだけでなく、「mtで一番売れている色は白なんですよ。ちなみに2位は黒です」と豆知識を交えながら紹介してくれたので楽しみながら歩けました。
見どころ盛りだくさんの「展示室」
見学後は工場の敷地内を自由に散策できます。
展示室エリアでは、「mt art contest2024」の受賞作品や、ラッピングされたクラシックカーを見られました。クラシックカーは子ども達に大人気で、記念写真を撮る親子が多かったです。
ノベルティに切断体験のチケットが入っていた場合は、展示室に設置された切断機で体験ができるそうです。mtを作る体験は、101年目の新たな取り組みのひとつとして取り入れられました。
2階には、カモ井加工紙の歴史が感じられる貴重な展示品が数多く並んでいます。
カモ井加工紙の原点となるハイトリ紙のポスターなど、当時のデザインの流行や時代の流れが垣間見える興味深い展示でした。
見ごたえのある展示室、時間の許す限りじっくりと滞在したくなります。
ファンにはたまらない「mt shop」でお買い物
mt factory tourに参加したら欠かせないのがお買い物。
物販エリアの「mt shop」は非常に奥行きがあり、豊富なラインナップにあちこち目移りしてしまいます。
デニムをイメージしたブルーのmtや、真田紐のようなデザインのmtは倉敷ならでは。県外から訪れた人にとって、思い出に残るお土産になります。
昔の工業用テープのデザインを模したパッケージのmtもありました。現代でなかなか出会えないレトロさとかわいさが詰まっています。若い女性にも人気のある商品だそうです。
筆者は自分へのお土産に「mtちぎはり」というワークショップキットを2種類購入しました。薄くてちぎりやすいマスキングテープの制作キットは、手や指を動かす練習として福祉の現場でも利用されていると聞きました。どの世代でも楽しめる商品です。
「mt shop」では物販だけでなく、過去に製造されたmtの柄もずらりと展示されていました。柄の種類が多いことは知っていましたが、実際に並べて見てみるとバリエーションの多さに圧倒されます。
遊び心あふれる「縁日&アウトレットコーナー」
mt shopを抜けて、次は「縁日&アウトレットコーナー」にやってきました。mtの量り売りやガチャガチャなどがあり、先ほどとは少し違った買い物が楽しめます。
ひもくじは一回1,000円、大小さまざまなmtが吊るされています。ひもくじもガチャガチャも、「なにが当たるかわからない」という遊び心をくすぐられますね。多くの人でにぎわっていました。
めったに手に入らないアウトレット品もこちらのエリアで販売されていました。
筆者が気になったのは、長崎県波佐見町で開催された「mt博2022」で限定販売された波佐見焼のプレートです。抽象的なマスキングテープのデザインがおしゃれな波佐見焼プレート。貴重な品ですがなんとワンコインで買えます。
他にも過去のイベントで販売された会場限定品などが並び、掘り出し物を探して夢中になれました。
穴場スポット?「リボンハイトリの窯場」を見学
施設の一番奥には、「リボンハイトリの窯場」が展示されていました。当時の作業場がそのまま残されている窯場は、歴史を感じられるディープスポット。お父さんが家族の買い物を待つ間に足を運ぶことが多いそうです。
なかに入ってみると、年季の入った窯が置かれています。
こちらの窯では、1990年ごろまでリボンハイトリのモチが作られていました。モチはモチでも食べ物ではなく、ハエを捕まえるために樹脂やロウから作られる粘着剤のことです。サビの付いた見た目から、長い間活躍していたことが伝わります。
窯のほかにも、当時使用されていた機械や道具なども展示されていました。どれも使い込まれており、貴重な資料です。マニアにはたまらない展示かもしれません。
ファクトリーツアーならではの体験
物販のほかにも、さまざまな見どころがあったので紹介します。
ワークショップが開催された会場では、入り口にカラフルなmtの柄が展示されていました。
壁一面に並んでいる柄は、2008年から2011年に販売されたmtのなかでも、オンライン投票で人気のあった上位101柄。イベント期間中に決選投票がおこなわれ、得票数の多い柄は復刻販売されます。
なかに進むと、缶バッジをアレンジできるワークショップが開催中でした。
ワークショップ以外にも、掃除やラッピングなどで使える文具以外のmtグッズも販売されており、日常のふとした場面でmtが活躍していることを実感します。
「heta box(ヘタボックス)」という商品は、製造過程で生まれるmtのはしっこの詰め合わせです。のりしろ部分のため、本来は廃棄(はいき)されるものでしたが、テープとして十分に使用できるため、商品として販売されるようになりました。
芯が付いたままなので「持ちやすい」という声もあり、幼稚園や保育園の図工などで活躍することもあるそうです。
もうひとつのワークショップがおこなわれている「mt casa shop」にも足を運んでみます。
「mt casa」はmtシリーズの商品のひとつで、貼って剥がせるインテリア向けのmtのこと。壁や家具などに貼るだけでガラリと雰囲気を変えられる、DIYのすぐれものです。
会場には、実際に商品を使ってデコレーションされた買い物かごが置いてありました。せっかくならお気に入りの柄を選んで買い物したくなります。
「mt casa shop」では、好みのmtを3個選び、自分で包装する「シュリンク体験」ができました。値段は300円とお手ごろで、多くの女性が真剣にmtを選んでいます。
選んだmtにフィルムをかぶせて、シュリンク包装機のなかに通していきます。工場見学で見かけた作業を思い出しました。
シュリンク包装機に通されたmtは、熱でフィルムが圧着されていきます。機械から転がって出てくるころには、店頭に並んでいそうな3個セットが出来上がっていました。
最後に好きな柄のラベルを貼って完成です。
自分だけのオリジナルmtセット、開封せずにそのまま飾りたくなりました。
ひと通り施設を回ってみた感想は、工場見学だけではない、多くの魅力が詰まったファクトリーツアーだということ。体験型のワークショップも多く、子どもから大人まで楽しめる内容だったと思います。工場で製造の裏側を見た後に、実際の商品を見てみると、mtに愛着も湧いてきました。
当日は食堂も解放されているので、mtが好きな人なら丸一日滞在できそうです。
mt factory tourは、毎年キャンセル待ちが発生するほど人気で、なかには海外からはるばるやって来るファンのかたもいると聞きました。
大勢のファンの心を掴んでいるmt factory tour。イベントにかける想いについて、カモ井加工紙株式会社の企画・広報主任の荻野紗奈(おぎの さな)さんに取材しました。
担当者インタビュー
──前回が創業100年の節目を迎えるファクトリーツアーでしたが、反響はいかがでしたか?
荻野(敬称略)──
2023年に開催した「mt factory tour vol.12」は、新型コロナウイルス感染症が明けて最初の開催だったことと、創業100周年ということもあり、非常に多くのご応募をいただきました。当日もお祭りのような盛り上がりでしたね。
配布しているノベルティなども、100周年を記念して豪華な内容になっていて、喜んでくださるかたが多かったです。
節目の年だったのでメディアにも大々的に取り上げていただいて、その影響もあってか、今回はmtのファンではないかたもツアーに参加していただけたように感じます。
今までのイベントはどちらかといえばファンのかたが中心でしたが、新たなお客様の参加も増えてきたので、最近はmtの魅力をより多くの人に届けられているような気がします。
──創業101年目となる今回のファクトリーツアーの見どころについて教えてください。
荻野──
今回のファクトリーツアーでは、「101年目を1年目のように」をメインテーマに、次の100年に向けた原点回帰の取り組みをおこないました。
たとえば、過去のハイトリ紙のパッケージデザインを、mtの包装紙としてリバイバルしたものを販売しました。「懐かしい」と思われるかたもいれば、「レトロでかわいい」と斬新(ざんしん)に感じられるかたもいらっしゃって、どの年代からも人気のある商品です。デザインを通して、改めてカモ井加工紙の歴史をお伝えできればと思います。
mtの人気の柄を選んでいただく投票企画も、最近mtのファンになってくださったかたにとって、新鮮に感じられるデザインが多いと思います。過去に販売したデザインを改めてご紹介することで、現在のmtにいたるまでの流れを楽しんでいただきたいです。
あとは、これまでのファクトリーツアーにはない取り組みとして、mtの切断体験など参加型の体験を増やしたのもポイントです。リピーターのかたにも楽しんでいただくために、今後も工夫していきます。
──創業101年目ならではの取り組みは他にもありますか?
荻野──
ファクトリーツアー以外にも、101年目の取り組みを紹介するようなイベントを全国で開催する予定です。
2024年10月は、倉敷アイビースクエアで「mt ex at 愛美赤煉瓦館」というイベントを開催します。
倉敷アイビースクエアは、もともと工場だった建物がリノベーションされて、新たに活用されてきた場所です。「新たな付加価値をつけて、違った使い方をしていく」というのはマスキングテープも同じなので、倉敷アイビースクエアとmtの融合(ゆうごう)をぜひ楽しんでいただけたらと思います。
販売はもちろん、空間の装飾にもこだわっていますよ。
きっと新しいmtの魅力が発見していただけると思います。
イベントを通して、この先の100年に向けた新商品の開発や、これまで廃棄していたものに付加価値をつけて新たに提供するような取り組みをお伝えできたらうれしいです。
──お客さんの生活のなかで、mtはどのような存在でありたいですか?
荻野──
創業100周年のテーマにもなっていた「暮らしにくっつく」。まさにそのような存在でありたいと思っています。
正直、マスキングテープは別になくても困らないですし、そこまで目立つような商品でもないと思うんです。ですが、あったらいろいろと便利ですし、使い勝手も良くて多くの場面で活躍できます。
文具として使っていただくことはもちろん、幅広い世代のかたがたの日常に寄り添えるような商品を今後も作り出していきたいです。
また、お客様にとって、気持ちが少しでも明るくなったり、やる気につながったりする商品であり続けたいと思います。
──ファンのかたにメッセージをお願いします。
荻野──
mtというブランドが誕生して16年ほど経ちましたが、起ち上げ当初から見守ってくださるファンのかたがいらっしゃるのはとても心強く感じています。
mtという商品だけでなく、mtを作る私たち社員や、mtが刻む歴史や歩みも含めて応援してくださるかたがたがいるので、本当にありがたいです。
デジタルが主流になった今の時代、なんでもオンラインで完結できたり、ネット上で情報を得られたりすると思うのですが、やはりアナログの商品ならではの魅力も必ずあると思います。
マスキングテープの和紙の手触りやちぎり心地など、アナログにしか出せない魅力です。そのような感触なども含めて、ぜひmtを楽しんでいただけたらと思います。
全国各地でイベントを開催しておりますので、お近くの際はぜひ足を運んでみてください!
おわりに
筆者は初めてmtの工場見学に参加しましたが、いたるところに参加者を楽しませる工夫や仕掛けがあると感じました。
物販もただ買い物するだけではなく、mtの歴代の柄が展示してあったり、量り売りやひもくじなど購入方法に工夫があったりと、長い時間飽きることなく買い物を楽しめました。
ファンのために初心を忘れず、前進していくブランドだからこそ、mtの作り手を含めて応援されるのだと思います。
筆者もファクトリーツアーに参加してmtのファンのひとりになりました。今度は新たなmtの魅力を発見しに、他のイベントにも参加してみたいと思います。