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関わる人すべてがハッピーでウィンウィンになる仕組みをーー日本一の地方発多角化ビジネスモデルを築く事業家<株式会社きさらぎ木村光哉さん>【鳥取県境港市】

ローカリティ!

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株式会社きさらぎは、1954年に境港市でカメラやフィルムの販売業として創業し、地域の変遷とともに歩み続けてきました。現在は文具やキャラクター事業などをはじめとした、多岐にわたるサービスを展開する地域密着型企業として成長し、イベントやプロモーションを通じ、地元の活性化に貢献しています。

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木村光哉さん(写真提供株式会社きららぎ)

「まちとともにずっと」を理念として、「日本一の地方発多角化ビジネスモデル」の確立を目指す三代目代表取締役の木村光哉(きむら・みつや)さんにお話を伺いました。

変化することで町とともに成長した「きさらぎ」

(写真提供株式会社きららぎ)

「もともとは祖父と祖母がカメラやフィルムの販売業を始めました。境港の発展とともに工事写真の現像、また、水産業の発展とともに地域企業への文具や事務機の販売をしながら少しずつ事業を広めていきました。

(写真提供株式会社きららぎ)

境港市が漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者水木しげる先生のふるさとであり、水木しげるロードができたことをきっかけとして、ゲゲゲの鬼太郎をテーマにしたキャラクターグッズ製作や土産物の販売へも展開しました」

(写真提供株式会社きららぎ)

木村さんは自社でデザイン会社を立ち上げ、キャラクターグッズのデザインから製造、官公庁や企業向けのデザインまで幅広く手掛け、地域資源を生かした商品を自社で展開する仕組みを作りました。また、空港内でのショップ運営や境港市の複合施設の指定管理を担当し、クルーズ船の受け入れなど地域観光を盛り上げる体制を整備。これらの事業を社内で循環させ、観光や地域需要に応じて自主企画を行うなど地域とともに成長する持続的なビジネスモデルを築いています。

祖父の代から地域貢献の精神を引き継ぐ

「祖父が境港市の青年会議所の立ち上げメンバーだったんです。先代社長である父も同じく活動していましたので、三代続けている人は珍しいとよく言われます。株式会社きさらぎはそういった地域活動を含め、境港と一緒に商売をさせていただいてきた企業なんですよ」

木村さんは地域活動を通じて「街に根ざし、市民にとってなくてはならない存在」であることを常に意識し、企業として正しくビジネスをし、「誠実な企業」であることで地域の人々に高クオリティのサービスを提供することを理念としています。

市民も行政も社員もハッピーな仕組みをつくる

(写真提供株式会社きららぎ)

きさらぎは、「境港の人たちに、地方ではなかなか見られないようなクオリティの高い文化体験をしてもらいたい」という思いから、市の指定管理を行っている「境港市民交流センター みなとテラス」の施設で、年間を通じて文化振興や自主事業に力を入れています。特に「トトトト」というイベントは、広いエリアから多くの来場者が集まります。毎年盛り上がりを見せ、地域の人々にとって欠かせないイベントとして地域の満足度を高めています。

株式会社きさらぎが運営する境港市交流センター「みなとテラス」 (写真提供株式会社きららぎ)

またそのイベントには他部署からの社員が応援に駆けつけ、会場の設営・撤去や当日の運営を全て自分たちで行い、社員がチームとして一体感を持って取り組みます。

「市民も行政も社員も、みんながウィンウィンでハッピーな状況が私にとって一番幸せなことです。その仕組みを作り出せていること、そしてその気持ちを共感してくれる社員たちがいるのが心からうれしい」

過去に社内で行った「幸せ度アンケート」の中で「地域のために働くことが企業の成長につながる」というポイントがとても高い結果だったとうれしそうに話す木村さん。「地域貢献が会社の発展に直結している」と社員が感じていることが木村さんのさらなる活動の源につながっています。

コロナ禍で社員一人も離れることなく困難を乗り越える


きさらぎは事業全体の7割が観光関連の産業であるため、2020年からの数年にわたるコロナ禍により大きな損失が発生したことがありました。コロナ禍を乗り越えるため従業員に休業補償も行いながら、「絶対できる何かがある、動き出せるときが来るまで備えておこう」と社員たちが一丸となって次の挑戦に向けて前向きに取り組みました。

その結果、だれ一人離れることなく、コロナが緩和されてきた22年ころからは全力で再始動することができ、23年は創業70年で最高の売上を達成したそうです。「異なる部署の業務でも自分事のように会社を守ろうと取り組む社員の皆さんには感謝をしています」と木村さん。

地域を愛し、地域に愛されるビジネスモデル

「境港は、全国の漁獲ランキングで必ずベスト10に入るんです。ベニズワイガニとクロマグロの水揚げが日本一です。さらに鬼太郎というキャラクターがいて、およそ3万2千人の人口でありながら高い経済活動を誇る町です!」

クルーズ船が停泊する境夢みなとターミナル (写真提供株式会社きららぎ)

境港で生まれ育った木村さんは地元境港市の価値についてそう語ります。木村さんは「わが町の日本一」を見つけることが、地域の競争力と発展の鍵だと語ります。どんな地域でも日本一を語れることが絶対見つかる。それを突き詰めることで新たなビジネスチャンスが生まれると話します。

ロッテの本原正明さん(左)ときさらぎ代表木村光哉さん(右)(写真提供 経済界 佐藤元樹さん)

また、木村さんは、人脈を広げつなげることでヒントが生まれると話します。24年「ゲゲゲの鬼太郎」とロッテの人気菓子「ビックリマンチョコ」のコラボイベントが木村さんの働きかけにより境港市で開催されました。鬼太郎とビックリマンチョコのコラボイベントは22年東京都調布市の「鬼太郎茶屋」で開催されたのに続き今回で2回目。

水木しげる記念館のリニューアルのための長期休館(24年4月20日リニューアルオープン)による観光客数減少を食い止めるとともに、境港の魅力を発信し新しいファンの呼び込みを目指す目的で行われ、木村さんの采配はただのイベントにとどまらず、地元企業だけでなく社会を巻き込み、観光資源を生かすモデルケースとなりました。

「ビックリマンチョコとゲゲゲの鬼太郎」のコラボ企画。妖怪ガイドブックの販売とスタンプラリーの台帳の配布にたくさんの人が訪れて行列ができた (写真提供 境港観光協会)

木村さんは「地域に愛着を持つことで、より多くの人にその価値を伝えたい」と語り、今後も地域の「日本一」の価値を見出すことで、地域の魅力をさらに発展させることに意欲を見せます。この姿勢が、地元住民や企業に新たな可能性と誇りを提供し、境港市が全国の注目を集める都市として成長する原動力となっています。

日本一ハッピーなビジネスモデルを目指す

豊富なビジネス知識と人脈を作る木村さんの明るい人柄について、それに至る経験をうかがうと、「幼少期はもやしっ子で、いわゆる『陰キャ』だったんです」と笑います。そんな木村さんが大きく変わったのは、大学入学と卒業後海外で働いた経験がきっかけでした。「異文化の中でたくさんの人と出会い、違う価値観に触れることで、コミュニケーションの大切さや人とのつながりの価値を実感しました」。その経験が木村さんの人懐っこく明るい人柄を形成し、今ではビジネスと人脈の強力な基盤を支えています。

木村さんの「全てがハッピーになる仕組み」は、今日本の「地方」が抱える多くの地域課題を解決するヒントになるはずです。

地域の発展に貢献しながら、関わるすべての人がハッピーでウィンウィンの関係を築くこの取り組みは、やがて日本全体に広がる多角的なビジネスモデルとして発展することでしょう。

聞き手:畠山智行 執筆者:天野崇子

天野崇子

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