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<優しい義母のウラの顔>仕事量を減らした私に「根性ナシ」つぶやきは気のせいなの?【まんが】

ママスタセレクト

写真:ママスタセレクト

数年前の話です。私(シノ)は夫のタクヤと結婚しました。義母はとても感じの良い人でした。義父はすでに亡くなっていましたが、優しくて笑顔が素敵な義母は、親戚や近所の方々からも慕われていました。しかしそれは、あくまでも義母の「表の顔」だったのです。このときまだ私は知りませんでした。この先に待ち受ける義母からのたび重なる嫌がらせを。そして幸せだったはずの結婚生活が崩れていくことを……。

義母の第一印象は、「とても優しい人」でした。はじめて義実家へ行ったときのことです。挨拶する私を温かく出迎えてくれました。

優しい夫に、理解のある義母。「きっとこの結婚はうまくいく」そう思っていました。ただ結婚生活がはじまってみると……。

部屋は荒れていき、食事も適当になり、心の余裕がなくなってケンカが増えてしまいます。夫と顔を合わせるたびに「どちらが何をやったか」で言い争いになっていました。家庭の空気は最悪で、お互いに「このままじゃいけない」と思ったのです。

そして将来子どもが生まれたときのことも考え、私が仕事量を減らして在宅ワークに切り替えることで落ち着きました。忙しくて荒れていた部屋の中でギスギス暮らすよりも、お互いに歩み寄って笑顔で暮らせる方法を見つけることができて良かった。そう思っていたのですが……。

「俺が家のことする余裕ないからさ、シノの負担を軽くして家事をやる時間を確保したんだよ」「おかげでお互い穏やかに過ごせる時間が増えました」私たちがそう伝えると、義母は信じられないといった表情です。「そう……」

義母のことを悪く言う人は誰もいません。夫も夫の姉や妹も義母のことを慕っていたし、親戚の方々にも「こんな素敵なお義母さんでうらやましい」と言われるほどでした。私にもはじめは優しく接してくれていたのに……働き方を変えてから義母の態度が豹変したのです。義母からの「根性ナシ」の言葉はあまりに突然で、しかも小声だったため、はじめは「気のせいかな?」と思っていました。しかしこの義母のささやきは、気のせいではありませんでした。

食べかけや腐ったおかず渡され……嫌がらせにはキッパリ宣言

まだご飯をよそっているときに炊飯器のフタを思いっきり閉められたのです。熱い炊飯器に手を挟まれ、私は思わず声をあげます。

「もー! 母さん、気を付けてくれよなー。シノ、大丈夫?」私の声を聞きつけて夫がやってくると、義母は態度をガラッと変えました。「全然大丈夫じゃないじゃない! 赤くなってる! 本当にごめんね! こっちに来て冷やしましょう!!」かいがいしく世話をしはじめた義母に私はあぜんとするばかりでした。

食事中も義母は、お皿に残ったキャベツの千切りや刺身のつま、食べかけのフライなどを私のお皿に盛ってきました。

帰りぎわに義母から強引に渡されたおかずの容器を自宅で開けてみると……。中には腐ったおかずや、カビの生えた果物などが入っていました。

「あ、シノさん? ゴメンナサイね! 私、渡すはずのものを間違えちゃって……。今日は本当に何から何まで迷惑かけちゃって本当にごめんなさい……。中身は捨ててくれていいから」

義母は私に嫌がらせをしたあと、必ずしおらしく謝ってきます。「わざとじゃないの」「本当にごめんなさい」それもすべて義母の作戦なのでしょう。最初は戸惑っていた私ですが、腐ったおかずを渡され、さらにその容器を洗って返せと言われ……。さすがにこれは「わざと」だなと気付きました。義母には申し訳ありませんが、私は何度も嫌がらせをされたままメソメソするタイプではないのです。そっちがそう出るなら、会わなければいいだけ。突然の私の言葉に、夫は焦っていました。

信じない夫「まさか母さんが?」義母の執拗な嫌がらせは続く

「ごめん! 母さんがおっちょこちょいで……」夫は嫌がらせをするたびにしおらしく謝る義母のことを信じきっています。「わざわざ腐ったお総菜を渡してくるのは、おっちょこちょいのレベルじゃないでしょ?」「本当にごめん。俺が処理するからさ! そんなこと言わないでよ」

「シノも疲れているんだよ。とりあえず今日はゆっくり休んで。あとのことは俺がやっておくし、実家へのことももう少しゆっくり考えよう?」夫は言いますが私は納得できません。その日はいったん話を終わらせましたが、タクヤが義実家に帰るとき私が一緒に行くことはなくなりました。

ある日、ひとりで義実家へ向かった夫。夫の姉や妹から「なんでシノさん来ていないの?」と聞かれ、義母は「私が嫌われても仕方のないことをしたの……」と涙ながらにしおらしく反省してみせたのです。

私は義母と会うつもりもなかったし、今後も義実家に行くことはないと思っていました。それなのに義母はある休日、突然訪ねてきたのです。

義母はケーキやデパ地下のお惣菜を差し出してきました。「……私と仲良くする気がないのは、お義母さんの方じゃないんですか……?」「まぁまぁ。シノもいろいろ環境が変わって戸惑っているところもあるんだよな? とりあえず母さんが旨いものたくさん買ってきてくれたんだし、食べようぜ?」夫がお皿やお茶の準備をはじめたので、私は食器棚の前で伝えます。

「さ、準備ができたわ~。運ぶわね~」そう言いながら大きなお盆を持った義母。しかし私の目の前まで来て大きく手を滑らせます。「キャー!」義母の叫び声とともにお盆に乗っていた食器がすべて落ち、派手な音を立てて割れてしまいました。それは私が「使わないで」と言った食器だったのです。義母は一応、夫にとって大切な親です。夫と結婚している以上、まったく会わないことは難しいかもしれない。今日くらいはお茶を共にしてもいいかな……そんな仏心を出した自分を大きく悔やみました。義母は私が親からもらった大切な食器をすべて割ってしまったのです。

天然のフリして「わざとですよね?」義母との関係を絶った私

義母は必死に謝り、私に土下座をしてきました。

私は必死に謝る義母を見ても、まったく心が動くことはありませんでした。この人は私のことが心底嫌いなのだろう。わざと「天然」のふりをして私に嫌がらせをしてくるのだと、そのとき悟りました。

「母さんもこんなに必死に謝っているし、俺も謝るよ。食器はまったく同じものとはいかないけれど、俺が同じブランドのものを……」夫は義母をかばおうとし、義母も同調します。「私が買うわ! ね? シノさん、それで許してくれないかしら?」しかし私はきっぱり言い渡しました。「もういいです。割れたお皿は戻らないし、新しいものを買ってもらったところで意味はないから。その代わり、もう二度とお義母さんには会いません」

私は夫に告げます。「もうお義母さんの話はしないで。私は義実家との関係を断つけれど、あなたにそれを付き合わせるつもりはないの。お互い自分の実家を大切にしていきましょう」それからも夫は時おり義実家に帰っていたようですが、私は特に義母を気にすることなく日々を送りました。穏やかな結婚生活で在宅の仕事も順調。そして数年が経ち、私たち夫婦は2人の子どもに恵まれていました。

私が義母に会うことはありません。夫がひとりでケントやルミを義実家に連れて行っていました。

義母に大切なお皿を割られてしまったとき、私の中で何かが吹っ切れたような気がしました。もちろん悔しいけれど、これを機に義母と縁を切ることができたと前向きに捉えることにしたのです。夫はひたすら謝ってくれましたが、義母がわざとやったとは思っていないでしょう。「わざと」の証拠がない以上、私もそれを主張し続けることはできませんでした。まぁ夫からすれば実の親が妻に意地悪をしているなんて、信じたくないのかもしれません。私はただ、一刻も早く義母と絶縁したい気持ちでいっぱいだったのです。その後、わが子の誕生を経ても私が義母と会うことはありませんでした。夫と子どもたちだけ義母と交流をし続けていたのです。

留守中に寝室へ「大切にしていた形見がない!?」犯人は……

義実家から帰ってきたケントとルミが見覚えのない新しい洋服に着替えています。行くときは私の母が買ってくれた洋服やリュックを背負って行ったのに……。子どもたちが義実家に行くと、そんなことが何度かありました。しかし結局わが家から着ていった洋服が戻ってくることはなかったのです。

私が打ち合わせを終えて帰宅すると、どことなく自宅に異変が生じていることに気が付きます。「誰か家に来た?」私が聞くとケントが答えました。「ばぁばが来たんだよ!」

「ごめんごめん。今日、シノが珍しく仕事で家を出ているって言ったら、突然やってきたんだよ~」「……だからって……家に入れないでよ……。もうやめてよね?」「分かった分かった」しかし、この日のできごとが大事件に繋がっていくのです。

寝室には子どもたちのためのベビーモニターを設置してあります。私が留守中に昼寝をしていたルミの就寝具合をチェックするために、日中の映像を再生していると……。なんと、眠るルミの後ろで私のチェストをあさる義母の姿がハッキリと映されていたのでした。私は急いで自分のチェストの引き出しを確認します。すると……まだ義母との仲が良かった頃に、一度だけ義母に見せたことがある「宝物」がないのです。

「大好きだった祖父が大切にしていたネクタイピンで。亡くなるときに形見分けとして譲り受けたんですよ」結婚当初、まだ優しかった頃の義母にそう伝えた記憶があります。

子どもたちが義実家に行くと、たまに衣類や持ち物がすべて変わっているのは気になっていました。ただ子どもたちの前では義母のことを悪く言わないようにしていました。これ以上義母の話など聞きたくもないし、心を乱されたくなかったというのが本音。それなのに義母は懲りずに私の留守中に家に上がり込み、私のチェストから大切なネクタイピンを盗ったのです! 今までも許したつもりはありませんでしたが、私はもう「子どもたちも会わせることはできない」と思ったのでした。

あきらかに窃盗なのに!かばう夫に幻滅「離婚してください」

私はベビーモニターに記録されていた映像を夫に見せます。「手にネクタイピンの箱を持って部屋を出ていってるでしょ? これ、泥棒よ? 警察に連絡するわ!」

「何か事情があったのかもしれないし……。お願いだから少し待ってくれ……」そう頭を下げられたので、ひとまず夫が義母から事情を聞くまでは待つことにしました。そして数時間後、帰宅した夫は……。

ベビーモニターの映像を見せながら夫が「どういうこと?」と確認すると、義母はこう言ったのです。「タクヤ……! あなたこそ大丈夫なの? シノさん、不倫しているわよ!!!」

「シノさん、急に仕事で出るなんて言うから、今までそんなことなかったのにおかしいなって思って……。きっと不倫をしているんだって……だから証拠を見つけないとって……。そう思って探していたら、ネクタイピンを見つけて、これがあるとあなたの家庭が不幸になるって思ったから、私はつい……」義母は謝罪の言葉を並べたてて号泣していたそうです。 義母は私が不倫をしていると勘違いをしていたこと。そのことで義母は夫をとても心配していたこと。今までの嫌がらせの数々はなんとか私に不倫をやめさせるために、義母がしていたこと。夫は、そう言いたいのでしょうか? そして話はまだ続きます。

「今回の件は、良かれと思ってやった行動が裏目に出てしまった結果だからさ。警察とか言わないで、俺に免じて許してやってくれよ」夫は深々と頭を下げます。そのとき私は悟りました。あぁ、この人はこんなことがあっても、私ではなく義母の味方なんだ……。私の言葉よりも義母の言葉を信じるんだ。私の気持ちよりも義母の気持ちを優先するんだ……。

こんな状況になっても義母をかばい続ける夫には、心底愛想が尽きました。窃盗を働いた義母を警察に突き出して、大ごとにしてやりたい気持ちはあったものの、夫の態度を見て「一刻も早くこの家族と関わりを絶ちたい」気持ちが強くなってしまったのです。離婚することに夫はすぐには同意しないでしょう。けれど私の気持ちは固まっています。離婚するにあたっての話し合いをする時間も含めて、ひとまず子どもたちを連れてこの家を出よう。そう思ったのでした。

余命わずかでも「二度と会いたくない」心の底から義母が憎い

「離婚」を伝えても夫はその意味がまるでわかっていない。私の気持ちは一切考えず、義母を擁護する夫に私は心底愛想が尽きてしまったのです。 離婚の話が進まないため、私はいったん子どもたちを連れて実家に戻ることにしました。

夫から何を言われても、離婚する以外の選択肢は私にはありません。「離婚する決心がついたら連絡ください。年内に結論が出せないようなら、警察に行きます」と返事をするのみでした。

私が家を出て1ヶ月後。事態が大きく動きます。電話口の夫は泣いていました。

義母は病に侵されていたのでした。しかし病院に行かなかったため、倒れたときにはもう手遅れの状態だったのだそう。人の命を前に、こんなことを言うのは失礼なのかもしれません。しかし私の心は何も動きませんでした。

「いま、順番に親戚とかが会いに来ている状態なんだけれど……。母さんがシノと子どもたちに会いたいんだって」「二度と会わないって言ったでしょ。行かないから」「じゃあ、せめて子どもたちだけでも。最後に会わせてやりたいんだよ……」

義母の状況を聞いて「悲しい」「かわいそう」と思えなかった自分に、「私は心の底から義母を憎んでいたのだな」と再認識しました。正直、人の生死に関してここまで自分がドライになれるなんて思ってもみなかったのです。本当は子どもたちを義母に会わせたくはありません。けれど私の個人的な感情に付き合わせるのは違うと考え、ケントの意思を尊重しようと決めました。夫と子どもだけで行かせると、あの義母のことです。私の嫌がるようなことを吹き込む可能性も否めません。監視役として、私はついて行くことにしたのでした。

最期の嫌がらせ「許してほしいの……」私を悪者にしたい義母

義姉に案内されて病室に入ると義母はベッドに横たわっていました。かつて私にさんざん嫌がらせをしてきたときよりもだいぶ痩せてしまっています。周りには夫や義妹、親戚の方々もいらっしゃいました。

私は義母とのやりとりを見せたくないので、夫に頼んで子どもたちをいったん病室から出しました。

義姉と義妹も口々に言います。「シノさん、ほらお母さんも謝っているんだし」「ね? 許してあげてよ。もう最後なんだから……」

親戚たちは私に一斉に「許してあげろ」と言ってきました。弱々しく私の許しを乞う義母。その姿が、私には茶番劇のように見えました。(あぁ……。この人は、私が許さないって分かっているのに……。最後まで私を悪者にしたいんだ、全員の前で……)

いつまでも私に執着して、私を悪者にすることばかり考えて。この人は自分の人生の最期を、大嫌いな私に使っている。バカな人……。すると外で「ママー!」というルミの泣き声が聞こえました。

死に際に謝られたからって、許せない。私の気持ちはその一択だったのです。最後の願いを叶えてあげたいという家族の気持ちだって、重々理解できました。けれど私は義母の願いを聞き入れることができなかった。もしかしたら義母は本気で自分のしたことを後悔して、謝っていたのかもしれません。でも以前と変わらず、自分が亡くなった後も私が親戚から責められ続けるよう仕向けていたのかもしれないのです。そのどちらかは分からないけれど、私は許せなかった。それ以上でも、それ以下でもありませんでした。

【夫の気持ち】母に冷たい妻「もう最期なのに」愛想が尽きた俺

俺(タクヤ)は妻のシノと息子のケント、娘のルミとの4人家族。結婚して間もなく、妻のシノが母さんのことを嫌がるようになってしまった。母さんの失敗に悪気はないのに、シノは毎回ひどく怒る。その間に入るのはとても気疲れすることでもあった。すれ違いは続き、とうとうシノは子どもたちを連れて家を出ていってしまった。そんなとき母さんの余命がわずかということが分かり、シノと子どもたちに病室に来てもらった。けれどシノは母さんからの謝罪を無視したらしい。俺は心底ガッカリしてしまったのだった。

母さんは本当に優しい人だった。長年勤めた職場ではいろいろな人たちから慕われていた。忙しいはずの毎日なのに俺たちきょうだいにも抱えきれないほどの愛情を注いでくれた。幼い頃は気が付かなかったけれど、成長すればするほど「親」という存在がどれだけ偉大だったかということを実感する日々だった。

たび重なる母さんのミスが、ことごとくシノを傷つけてしまい、離婚まで言い渡されてしまった。シノにとって不運なことが続いただけで、母さんはわざとシノを傷つけようとしたわけじゃないのに……。

俺が病室の外で子どもたちと待っていると、シノが出てきた。帰るというシノに子どもを渡して病室に戻ると、姉や妹は怒りに震えていた。「シノさん……酷い……」「お兄ちゃん、なんであんな最低な人と結婚したの? お母さんの最後の願いを無視したんだよ!!!」でも優しい母さんはシノをかばう。「私は……いいのよ……。仕方ないわよ……。みんなシノさんを責めないであげて……」俺は怒りが頂点に達し、慌ててシノを追いかけた。

そのとき、母さんに会いに病院へきた親戚のおばさんが通りかかった。言い争いをしている俺たちに驚いて、慌てて止めに入ってきたのだ。

「もうすぐ死ぬ人を前に、お前……なんなんだよ。悲しみもしないし、許しもしない。お前、おかしいよ!」「……私だって……人が亡くなるときは悲しみたいし、一緒に最期の別れを惜しみたかった! でも、それができなくなったのは誰のせい? お義母さんのせいでしょ!!」

俺はずっと「シノは母さんのことを誤解している」と思っていた。すれ違ったり、うまくいかなかったりすることもあるだろう。だからお互いに歩み寄らないと何も解決しないのに、シノはただ怒るだけで、まったく聞く耳を持たなかった。俺はそんなシノでも、なんとかうまくやっていきたいと思って、修復の道を考えていたのに……。今回の出来事は俺にとっては衝撃的だった。死に際の申し出を無視するなんて……。やっぱりおかしいのは母さんじゃなくてシノの方だったんだということが分かって、良かったのかもしれない。母さんは自分の人生をかけて俺にこのことを教えてくれようとしてくれたんだと思うと、また涙が出てきてしまうのだった。

離婚は俺のせい?夫婦が破綻した本当の理由は

母さんの葬式に、シノは来なかった。来なかったというよりも、姉や妹をはじめ親戚一同が「呼ぶな」と言ったので呼ばなかった。俺が面倒をみられないため子どもたちも呼べなかった。

「シノさんとお母さんの間に何があったのよ?」そう聞いてきたのは、病院での俺とシノの言い争いを見ていたおばさんだ。俺は母さんとシノの間にあったこれまでの出来事を話した。

「シノに、母さんが本当は優しい人だって伝わらないまま終わってしまったのは、心苦しいけどね……」俺がそう言うと、姉が怒りをあらわにする。「あの人にそんなこと分かってもらう必要はないわよ!」それを聞いていたおばさんは静かにうなずく。「お母さんがシノさんに嫌がらせをしていたっていう証拠はないんだものね」「そうそう。それなのに……」 母さんの葬儀ではみんなが俺に同情して、優しい声をかけてくれた。やはり、今回の件で悪いのはシノだ。俺は間違っていない。そんなシノに母さんは謝罪をしてくれた。それなのにシノは、母さんの思いを無下にしたんだ。

「味方っていうか、普通に疑問に思っただけよ? その『お母さんは悪くないフィルター』越しで物事を見ていたら、そりゃすべてシノさんが悪くなるわよ」

「だって……あのときのシノさんの顔……。嘘をついているようには思えなかったわ……」

おばさんの言葉の意味を、すぐに理解することはできなかった。シノが母さんのことを理解してくれていれば、母さんのことを許してくれていれば、俺たちはうまくいっていたはずだ。それなのに、なぜ離婚が「俺のせい」になっているのだろう……。しかし次第に俺は「シノに変わってもらうこと」だけを求めていた自分に気付いたのだ。俺はシノのために何もしてこなかったのだと……。ただ時すでに遅し。間もなく俺とシノの離婚は成立したのだった。

亡き母の7回忌、息子が明かした過去の思い出

幼いケントとルミはシノが引き取り、俺は養育費を支払いながら定期的に面会を続けていた。子どもたちと会いながら、俺はよくおばさんの言葉を思い出していた。

もしシノがことごとく母さんの大切なものを壊し、捨て、そのたびに謝ったとしたら。俺はきっと「母さんになんてことをするんだ」とシノに対して怒っただろう。そう考えると、あのときのおばさんの言葉が心に響く。

シノのことを、心から信用してあげられなかった。シノよりも母さんの方を選んでしまった。今回の離婚はいつまでも「母さんの息子」でいた俺の責任だということに、少しずつ気が付いていったのだった。それから、月日はめぐって母さんの7回忌がやってきた。

3回忌のときは体調を崩して来られなかった息子のケントも、今回は参加している。久しぶりに会った俺の姉や妹と思い出話をしているうち、ケントが言い出した。「ばあちゃんの遺品とかって整理したんだよね? 俺の……飛行機型のリュックとか、洋服とか……なかった?」

「ばあちゃんに会うたび、『このお洋服は誰に買ってもらったの?』って聞かれて。『ママ』とか『ママの方のジジババ』って言うと、決まってデパートに連れて行かれて……」

シノとの結婚生活に反省点は多々ある。今さら反省しても遅いし、謝罪をしたところで受け入れてもらえないのは分かっていた。子どもたちには親の都合で振り回してしまった分、父親の役割をしっかりと果たそうと思っていた。そんなとき母さんの7回忌で、ケントから思いもよらぬ事実を聞くことになる。確かにケントはよく母さんから洋服を買ってもらっていた。ケントを可愛がっているんだな~と微笑ましく見ていたのだが、そんな事実が隠されていたとは思いもよらなかった。

謝りたい!妻を信じられなかった自分の間違い

「捨てたって……何かの勘違いじゃないのか?」「でも、現にないじゃん。あの頃は『なんでこんなことするんだろう?』ってわけわからなかったから、よく覚えてるんだ。今思えば、ばあちゃんは気に入らなかったのかなって……」

「しかも捨ててるって……。どんだけ母さんのこと、嫌いだったんだよ……っと」そう言いかけ、あわてて手で自分の口をふさいだケント。「どうした?」と聞くと、おずおずと口を開きます。「母さんに『亡くなった方を悪く言うのはダメ』って言われていたから……」

ケントはその話をシノにもしたようです。「どうしてばあちゃんって、あんなことしたんだろう~? なんか感じ悪くない?」しかしシノは……。

7回忌を終えてケントが帰った後、俺はあらためて姉や妹と話します。「結局、お母さんは……シノさんのことが嫌いだったってこと?」「で……でも、それもシノさんが何かお母さんに嫌われるようなことをしたからじゃないの?」「そういえば確かずっと昔、シノが……」

「自分以外の人のことなんて、本当のところは分からないはずなのにさ。俺はシノを信じてあげることができなかった。それだけなんだよ……。葬式のときにおばさんが言ったことの意味が、やっと分かったよ……」

ケントの話を聞くまで、シノに何を言われても「母さんがそんなことするはずない」と思っていた。ただもう今となっては、その事実を確かめるすべはない。そもそも「母さんが悪い」とか「シノが悪い」とか、そういう話ではなかったのかもしれない。どちらが悪いとか関係なく、俺は常に「シノの味方」でなくてはいけなかった。今さら気が付いても遅いけれど、気付くことができただけ良かったのかもしれない。シノに謝りたい……そう強く思った。

【私の気持ち】謝る方が許してと言うのは「卑怯」元夫の謝罪に私は……?

時は流れ、成長したケントは義母の7回忌に参列してきたのでした。

タクヤと別れてから私はいっそう仕事を頑張り、子どもたちも元気に成長しています。タクヤとは面会のとき少し顔を会わせる程度で、深い話をすることはありません。ただ養育費は滞ることなく毎月支払われ、子どもたちとの面会も定期的に行われていました。

ある日面会のお迎えに行くと、タクヤに「少し……話せる?」と引きとめられました。子どもたちを公園で遊ばせながら、私たちはベンチに座って話しはじめます。

「なに? 急に……。今まで『母さんは悪くない』って言い張っていたくせに」深々と頭を下げるタクヤに戸惑う私。「ケントからいろいろ話を聞いて……。昔、親戚のおばさんに言われたこととか思い出してさ……。時間とともに少し冷静になったというか……」

「今さら謝られても困る」「許してほしいなんて思わない。ただ……自分の気持ちを伝えておきたくて……。そう、自己満足なんだ。俺の。シノは許してくれないって分かっているけれど、俺が少しでも自分の罪悪感を減らしたいだけなんだ。あのときの母さんと一緒だ」

「許すも許さないも、そんなことを言える権利なんてどこにもないのに。シノに母さんからの謝罪を受け入れることを強要して、本当に申し訳なかった。本当に悪いと思っているなら『許してください』なんて相手に言えないって分かったんだ。悪いって思っている方が……許してって言うのは……卑怯なやり方だ……」

義母の件についてタクヤとしっかり話したのは、あの病院のとき以来でした。まだまだ許す気持ちにはなれませんが、私の気持ちをタクヤが理解してくれたことは嬉しく思います。確かに離婚のきっかけになったのは義母かもしれないけれど、根本的には夫婦間の問題だったと互いに再確認ができて良かったです。これからは子どもたちの両親として、今までよりも笑顔で話す機会を増やして、子どもたちの絶対的な味方でいようと思いました。


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