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川崎BT・飯田選手が語る 重み増すファンの存在 「ひとり親家庭招待」で交流

タウンニュース

飯田遼選手(写真提供・川崎ブレイブサンダース)

さまざまな事情で試合会場に来ることが難しい人にも、川崎ブレイブサンダースの試合を会場で観て欲しい--。そんな思いから、ひとり親家庭を川崎市とどろきアリーナ(中原区)でのホームゲームに招待する企画を続ける飯田遼選手(29)。開始から約4カ月が過ぎ、招待者の累計が30組100人を超えた。企画の手ごたえとチームへの思いを、自身の言葉で語った。

ひとり親家庭を試合に招待する「飯田遼シート」を始めたのは昨年11月だった。当初は1試合1組から始めたが、応募が急増したため、1試合25人まで枠を広げた。それでも各回とも抽選という人気ぶりだ。

招待家族には、選手名入りタオルやメガホンなどの「お土産」も贈られる。そしてこの「お土産」に、飯田選手が手書きする手紙を同封する。「本当はゲームの後にご家族と記念写真でも撮れたらいいけれど、時間的に厳しいので」。一枚一枚、丁寧に書き綴る。

親子の会話時間にも

両親のいる家庭で育った飯田選手が、企画の対象を「ひとり親家庭」にした理由は、「プロスポーツに触れることが難しい人のために、特別な機会を作りたかったから」。プロ野球やJリーグでも様々な招待企画があるが、「ひとり親家庭」を対象にした企画はほとんどなかった。

招待された家族からは、さまざまな感想が寄せられる。「思春期で難しくなっている息子」と観戦した母親からは、親子の会話が生まれ、「家族の楽しい時間となった。本当にありがたい」。飯田選手は「この企画で親子の関係が少し良くなったなんて、嬉しい」と目を輝かせる。

大学では文武両道

長野県富士見町出身。大学進学時、スポーツ推薦も選択肢にあったが、「教員になりたい」という思いを貫き、拓殖大学の外国語学部に進学した。入試の面接で「体育会との両立は難しい」と指摘されたが、「全部の時間をバスケと勉強に使えばいい」という親の助言の通り、真摯に文武両道に取り組んだ。

バスケの実力も「全国トップレベル」ではなかったが、高校の恩師の「上の選手は山ほどいる。コツコツ頑張れ」という言葉を胸に刻んだ。インカレ3位の成績を残し、卒業後はプロの道へ。「あの4年間で、地道に努力し続けることの大事さを、身をもって実感した」と振り返る。

川崎で2季目を迎えたばかりだが、飯田選手の英語力と持ち前のコミュニケーション能力が、チームに欠かせないものになっている。

今季の川崎は3月末時点で勝率3割、中地区で最下位という厳しい状況だ。主力選手が抜け、新たな指揮官にチーム初の外国人ヘッドコーチ(HC)を迎えるなど、大きな変化が影響したとの指摘もある。

「ファンのために」

そんな状況にあって、自分の責務を問うと、「プレー面はディフェンスと3ポイントで貢献すること。あとは自分なりのコミュニケーション」と即答。HCが英語で話す指示を理解できなかった選手たちから、「何て言った?」と聞かれることも多く、自分からも問い直すことで、「お互いの考えが整理されている」と感じるそうだ。

厳しい戦いの中で、ファンの重みも増した。

昨秋の「出陣式」では、ラゾーナ川崎の広場をファンが埋め尽くした。しかしベテランの篠山竜青選手(36)から「昔は違った」と聞いて驚いた。2011年に前身の「東芝ブレイブサンダース」に加入した篠山選手は、閑散とした会場で戦った時代を知る。「イベントに数人でも来てくれたら嬉しかった」という話を、身の引き締まる思いで聞いた。

「今までの自分は、ただ一生懸命プレーするだけだったけれど、この状況でもファンの方々が『今日こそ勝利を』と思って応援に来てくれる。僕たち選手はもっと強い思いを持って、ファンの心に何か一つでも残るプレーを、しなくてはいけないと思う」

招待家族に一枚ずつ手紙を書く飯田選手

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