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奈落から頂点にのぼりつめたアイドル【浅香唯】なんとデビューから4曲連続100位圏外!

Re:minder

1985年06月21日 浅香唯のデビューシングル「夏少女」発売日

デビューから4曲連続でトップ100圏外


それは、日本のアイドル史上最大のジャイアントキリングだった──。

1985年6月21日、“フェニックスから来た少女” というキャッチフレーズとともに、浅香唯はレコードデビューした。デビュー曲のタイトルは「夏少女」。しかし、曲名から連想されるようなキラキラした世界とは異なり、待っていたのは厳しい現実だった。オリコン週間シングルチャートの最高位は120位(以下、順位は同チャートを掲載)。斉藤由貴、本田美奈子、芳本美代子、中山美穂といった新人アイドルが続々と注目を集めるなかで、浅香唯の存在はまったく箸にも棒にもかからなかった。だが、のちにそのどん底から、前代未聞の大逆転を成し遂げる。

「夏少女」に続く2枚目のシングル「ふたりのMoon River」はオリコン105位。通常、レコード会社はこの段階で売り出しを諦めてもおかしくない。毎年のように多数の新人女性アイドルがデビューしていたこの時代、シングル2枚程度で幕引きとなった “不発” の新人は決して少なくなかった。だが、それでも浅香唯関係者は諦めなかった。

デビュー2年目の1986年1月、セックスの暗喩を含んだ、これまでの路線とは大きく異なる「ヤッパシ…H!」を3枚目のシングルとしてリリース。しかしこれもオリコン100位以内に入れなかった。同じく企画性の高い4枚目の「コンプレックスBANZAI!!」でも結果は同様だった。これら2曲のレコードは、B級アイドルマニアを喜ばせるアイテムにはなったものの、セールス面では惨敗だった。

ようやく5枚目「10月のクリスマス」が雪印のCMタイアップもあり88位を記録したものの、当時の感覚では、“ブレイク間近” と表現するには程遠い成績だった。 デビューから1年3ヶ月でヒット曲はゼロ。こうした場合、レコード会社の期待も、本人のモチベーションも、プロモーション予算も削がれていくのが通常である。しかし、その時点の浅香唯はすでに一発逆転を可能にする切り札を手に入れていた。1986年10月にスタートが告知されたドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』(フジテレビ系)主役が決まったのである。

浅香唯が世の中に発見された瞬間


「卒業」をヒットさせた直後の斉藤由貴が主演した『スケバン刑事』第1作、南野陽子を一躍人気者にした『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』に続く第3作は、和田慎二による原作から大きく離れた変格作だ。“3代目麻宮サキ” こと主人公の風間唯と、長女の風間結花(大西結花)、次女の風間由真(中村由真)という三姉妹の物語になった。三姉妹は風魔忍者の末裔であり、世界を闇に沈めようとする邪悪な忍者集団 “陰(かげ)” に立ち向かう。

忍者に加えて、密教、梵字、陰陽道といった要素が盛り込まれ、さらに映画『スター・ウォーズ』の一部をモチーフとしていた。ヨーダを思わせる ”依田(よだ)“ 、レイアに由来する “礼亜(れいあ)” といった登場人物もいた。このようにいろいろなモチーフがミックスされた極めて娯楽性の高い作品が展開された。

ビデオリサーチによると1986年10月30日放送の『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』第1話は、関東地区の視聴率が20.8%を記録した。それは浅香唯という逸材が、世の中に発見された瞬間だった。

斉藤由貴、南野陽子の前で明かした秘話


話は40年後に飛ぶ。2025年6月7日、東映最後の直営館である丸の内TOEIの閉館企画の一環として、『スケバン刑事フェスティバル in さよなら 丸の内TOEI』なるイベントが開催された。斉藤由貴、南野陽子とともに登壇した浅香唯は、自身がオーディションを経て風間唯役に選ばれた際の経緯を振り返った。 オーディションでは、二代目・麻宮サキの土佐弁のセリフを読むよう指示されたが、つい地元・宮崎の方言が混ざってしまい、その場は笑いに包まれたという。まったく手応えはなかったが、結果は予想外の合格。制作者側は “山猿” をイメージしたキャラクターを想定しており、自分にそのイメージがあったことが、合格の理由だったのだろうと考えているそうだ。

確かに、三代目のキャラクターは独特だった。初代・麻宮サキ(斉藤由貴)と二代目(南野陽子)は高潔かつ孤高の存在で、いずれも “完成された強さ” を備えていた。それに対して、三代目は元気いっぱいだが未熟な人物としてスタートした。そして、その設定は浅香唯を魅力的にみせるものだった。三女である風間唯が、沈着冷静で頭脳派の長女・結花(大西結花)、喧嘩っ早く反発心の強い次女・由真(中村由真)とぶつかり合いながら、共に成長していく姿が物語の核となった。

浅香唯自身を描いたかのような「STAR」


『スケバン刑事Ⅲ』は風間唯だけではなく、アイドル・浅香唯の成長物語でもあった。1986年10月の放送開始当時、女性アイドルシーンにおいて、おニャン子クラブは依然として強い影響力を持っていた。『スケバン刑事Ⅲ』には、おニャン子を卒業したばかりの福永恵規もレギュラー出演し、主題歌「ハートのIgnition」を歌った。番組の注目度を高めるうえで、おニャン子人気が活用されたのである。最新シングルの最高位が88位というアイドルの立場から見れば、おニャン子は完全に雲の上の存在だった。

しかし、番組の放送が進むにつれて、浅香唯の人気は急上昇。そして、100位以内に入らなかったのがウソのようにレコード売り上げはアップしていった。まず、番組挿入歌に起用された「STAR」(1987年1月)は最高9位に。この曲は浅香唯自身を描いたかのような歌詞内容で、サビに「♪Shooting star」というワードが含まれる。もともと浅香唯という芸名は、スターを目指す女性を描いたコミック『シューティング・スター』(作:大山和栄)のヒロインの名前が由来だったのである。次の「瞳にSTORM」(1987年5月)は『スケバン刑事Ⅲ』の主題歌となり最高4位。

そして、同じく主題歌の「虹のDreamer」(1987年9月)は初登場で1位に輝いた。デビュー当時、辛酸を舐め続けたアイドルが、ついにトップの座をつかんだのである。アイドル史において “デビューから4曲連続100位圏外” という奈落から、頂点にのぼりつめた例はほかに見当たらない(*)。そして浅香唯はドラマが最高潮に達した同年10月、大西結花、中村由真とレーベルを超えたユニット “風間三姉妹” を結成し、ファンを歓喜させ、号泣させた。風間三姉妹の最初で最後のシングル「Remember」は初登場で1位をゲットした。当然の結果だった。

今もなお風間三姉妹ととも


浅香唯にとって、『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』は人生を大きく左右した作品であったとともに、生涯の友に出会った場でもあった。風間三姉妹のメンバーは、実際に姉妹のように仲がよく、番組終了後も今に至るまで親交を深めているとされる。2024年には揃って『唯・結花・由真 三姉妹コンサート2024 ~夢の続きを...~』を開催した。

前述の『スケバン刑事フェスティバル in さよなら 丸の内TOEI』終了後、浅香唯は斉藤由貴、南野陽子と一緒に写った写真をInstagramにアップし、以下のようなコメントを添えている(一部抜粋)。

「初代、斉藤由貴さん! 二代目、南野陽子さん! そして三代目のわたし! そう!イニシャルYが集まってY3‼︎ なかなかレアな集まりに、多くの皆様が目を❤️にして応援してくれました 由貴さん、ナンノさんを前に…もちろん!私の目もハート❤️でございました(中略)大好きな由貴さん、ナンノさんとまた会える日が来ることを願って ってか… 次は… 風間三姉妹の結花と由真も入れてY5で揃ってみたい」


浅香唯の心は、今もなお風間三姉妹とともにある。

註(*)大西結花もデビューから4曲が圏外で、「Remember」で1位を経験しているが、ソロ曲での1位はない。


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