【鎌倉市】「らしさ、に出あえる」不登校の子どもたちを受け入れる学びの場「鎌倉市立由比ガ浜中学校」が開校しました
様々な理由から学校に行けなくなった子どもたちを、特別なカリキュラムの構成によって支援し学びの場を提供する「学びの多様化学校(旧称:不登校特例校)が、この春鎌倉市に開校しました。
鎌倉市HP:鎌倉市立由比ガ浜中学校(学びの多様化学校)について
神奈川県下では、横浜市・大和市に次いで3校目となります。
通学しやすい立地と最新の設備が揃う
画像出典:湘南人
場所は江ノ島電鉄由比ガ浜駅すぐ。鎌倉市内全域から通学しやすく、市立御成中学校の分校という位置付けでの開校は県内初となります。
2階建てで海側に面した校舎は日当たりも良く、従来の建物で必要なエネルギーを50%以下まで削減できる省エネ性能を持つZEB認証の「ZEB Ready」を取得し、環境に配慮した校舎設計となっています。
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2階には広々とした「つどいスペース」が設置され、カウンセリングルームやスタッフルームのインテリアも含め、IKEA横浜との協働で空間デザインが施されました。「つどいスペース」はポップで明るく、居心地の良さを演出しています。スタッフもIKEA横浜に足を運び、試行錯誤を重ねながらデザインの決定を進めました。
IKEA横浜の取り組み :<教育・福祉施設デザイン事例集:鎌倉市教育委員会>
広がる支援の輪
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キャスター付きで様々な形態に組み合わせることが可能なデスクとチェアは、株式会社ガイアエデュケーションから寄贈されたもの。
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音楽や技術家庭科など様々な教科の実習室「C-Lab(シーラボ)」には、個人や企業から寄贈されたVRや3Dプリンターが設置されています。
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ブックオフからは、今後も定期的に本が贈られる予定だそうです。
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開校セレモニーでは
4月12日には、転入学式に先立ち開校セレモニーが開催されました。
セレモニーでは女子生徒(14)が代表して挨拶。
「私が伝えたいのはこの学校を作ってくれたことへの感謝です。今まで授業を受けられなかったり人と関わる機会がなかった私たちにとって、新たな場所となってくれました。これから授業が受けられると思うと本当に嬉しいです。みんなと創り上げていくドキドキワクワクがいっぱいの学校生活が楽しみです。そして一緒に学ぶ仲間達、これからの学校生活を楽しんでいきましょう。」
未来を思い描きながら話す姿は、頼もしいほどに堂々としています。
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「小学校から学校に行けなくなって、家で会話することもなく沈黙の状態が数年間続いていました。今回由比ガ浜中学校に通うことが決まって、数年ぶりに娘の笑顔が見られて感動しました。今中学3年生なので1年間だけでも楽しく通ってくれたらと思います。」
保護者代表の言葉に、うなずきながら涙を拭う親御さんの姿も。
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岩田明分校長(ここではリーダーと呼ばれています)は、学校に通いたいと思う気持ちはとても尊いと話されます。
「みんなが通いたくなる場所にしたい。その思いを実現するためにここまで力をあわせてやってきました。この学校の意義はそこにあると思います。とにかく安心できる場所となりたいなと思っています。自分らしさ、を大切にしていきましょう。ここには校歌も校章もありません。行事も決まっていません。みんなで一緒にこの学校を創っていきたいと思います。」
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「フリースペースに通っている男の子が、学校に行って教室に行きたいんだ、と話してくれました。そうだよね、教室行きたいよね…その言葉を聞いた時、自分たちのやっていることは間違ってなかったと確信しました。大人は一生懸命『教室』という器を作りますが、その教室に通って学校を創るのは子どもたちです。どんな教室を作っていってくれるのか、これからが楽しみです。」
スタッフの言葉にも、熱い想いが込められていました。
4月15日、転入学式を迎えました
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期待に胸を膨らませた31人の生徒(男子12人・女子19人)は、全員が転入学式に参加しました。早朝はしとしと雨が降っていましたが、式の時間にはすっかり上がって青空が顔を覗かせます。
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鎌倉市教育委員会教育長、高橋洋平さんは、
「ようこそ由比ガ浜中学校へ来てくださいました。吾妻鏡(あずまかがみ)という鎌倉時代の歴史書には、こういう式の前に雨が降り、その後晴れるというのは大変おめでたいとされています。鎌倉の雨も皆さんをお祝いしているようです。由比ガ浜中学校は、自分らしく学び、自分らしく成長できる『らしさ』を大事にする学校です。誰一人として同じ人はいません。自分のいいところに気づいて、仲間達を大切にしながら学び、幸せになってほしいと思います。楽しく学んでいきましょう」と述べられました。
鎌倉の豊かな自然の中で
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つどいスペースの窓から見える景色(敷地は一部工事中)。
「海や大きな公園も近くにあるので、仲間達と外へ遊びに出るのも楽しみです」と、女子生徒は目を輝かしながら話してくれました。
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他の生徒達も学校への思いを語ってくれました。
「支援が充実していて、ここだったら今までの学校と違って通えそうだなと思った。」
「小学校2年から不登校になりましたが、ここにきて明るい気持ちに変われたなと思います。」
「前の学校と違うところは、スタッフとの距離も近いし怖いとかがないところ。校則や小さい禁止事項も無くて自分たちで決めていこうとする縛られない感じがいいと思った。」
「入った瞬間きれいだなって思った。お気に入りは、長いテーブルを囲ってみんなで話ができるところ。」
「やってみたいことは、みんなであだ名で呼びあいたい。」
様々な想いを胸に、新しい学校生活へのチャレンジが始まります。
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同校では、自分のペースで学べるよう年間の授業時間数が一般の中学校(1015時間)より少ない770時間となっています。登校時間は朝9時半。カウンセラーは、平日5日間の内4日間は常勤しているとのこと。
鎌倉市内の不登校児童生徒数は、2023年度時点で約400人。2019年と比べると増加傾向にあります(2019年度は約250人)。
セレモニーに出席した松尾崇鎌倉市長は、「市内には学校に通えない子がまだたくさんいます。ここはスタート地点、これからが本当の取り組みになると考えています」と話されました。
由比ガ浜中学校の定員は30名ですが、来年度の新規受け入れに応じて個別に相談会や面談等は随時行われています。詳しくは「鎌倉市教育文化財部学びみらい課学びみらい担当」までお問い合わせください。
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鎌倉市立由比ガ浜中学校
アクセス
江ノ島電鉄由比ガ浜駅より徒歩1分
住所:〒248-0014 神奈川県鎌倉市由比ガ浜3丁目9
駐車場:あり