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【ミリオンヒッツ1994】ミスチル「innocent world」年間シングル1位でレコード大賞も受賞

Re:minder

1994年06月01日 Mr.Childrenのシングル「innocent world」発売日

リレー連載【ミリオンヒッツ1994】vol.9
innocent world / Mr.Children
▶ 作詞:桜井和寿
▶ 作曲:桜井和寿
▶ 編曲:小林武史 & Mr.Children
▶ 発売:1994年6月1日
▶ 売上枚数:193.6万枚

音楽シーンがすさまじく盛り上がっていた1994年


ちょうど30年前の1994年。あの頃のことはよく覚えている。Jリーグチップス、イチロー、機動武闘伝Gガンダム、スーパードンキーコング…… とにかくワクワクする娯楽に満ちあふれていた当時。田舎の子供の目にも、何か音楽シーンがすさまじく盛り上がっているのは、日々の生活の中ではっきり感じることができた。94年のヒットソングをざっと列挙してみよう。

▶︎ 恋しさと せつなさと 心強さと / 篠原涼子 with t.komuro

▶︎ Don't Leave Me / B'z

▶︎ 空と君のあいだに / ファイト! / 中島みゆき

▶︎ Hello my friend / 松任谷由実

▶︎ survival dAnce~no no cry more~ / trf

▶︎ 世界が終わるまでは… / WANDS

▶︎ TRUE LOVE / 藤井フミヤ

なるほど、胸焼けするほどハイカロリーなラインナップだ。TKにビーイング系、王者B'z、ダブル女帝、月9主題歌と、どこを切っても隙がない。「歌は世につれ、世は歌につれ」とはよく言ったものだが、特にあの頃は音楽シーンを中心にして社会が回っていたとさえ感じる。

“若手バンド” の一角だったミスチル


これだけ豪華なアーティストたちが居並ぶ中で、群雄割拠の年間ヒットチャートを制したのは、当時まだ “若手バンド” の一角だったMr.Childrenによる5枚目のシングル「innocent world」だった。

1989年1月。新元号 “平成” の始まりと時を同じくして現体制での活動をスタートした彼らは、地道なライブ活動を経て注目を集めると、当時サザンオールスターズのアレンジを手がけていた若き天才・小林武史をプロデューサーに迎えメジャーデビュー。その後、ヒットを目指して試行錯誤しながら4枚目のシングル「CROSS ROAD」が半年以上に及ぶロングセラーとなりミリオンヒットを記録。遂にミスチルは人気アーティストの仲間入りを果たした。

知名度が急上昇したタイミングでの次期シングルは、バンドにとって “勝負曲” という位置付けになる。ファンや関係者の期待も高まる中で、楽曲制作に入る前に早くもコマーシャルの大型タイアップが決まった。当時はドラマのそれと同じくらいコマーシャルのタイアップは重要で、とくに15秒間という限られた尺でいかに印象を残せるかがヒットを呼び込む鍵でもあった。

こうして生み出された待望の新曲「innocent world」は日本コカ・コーラ 「アクエリアス ネオ/アクエリアス イオシス」のコマーシャルソングとして大量投下されると、その軽快なメロディは瞬く間に大衆の耳を、そして心を掴んだ。

自身初のオリコンチャート1位に輝いた「innocent world」


シングルのリリースは94年6月1日。初登場で自身初のオリコンチャート1位に輝くと、その後も売れに売れ続け、結果的に「innocent world」は先述したとおり同年のシングルランキング1位という爆発的なヒットを記録した。同曲を収録したアルバム『Atomic Heart』は驚異の約343万枚をセールス。当時ブームになっていたカラオケでも歌われまくり、年末にはレコード大賞も受賞した。

フロントマンの桜井和寿は若い女性を中心にアイドル的な人気を博し、雑誌やテレビでは連日 “ミスチル特集” のような企画が組まれた。Mr.Childrenはあっという間に平成の音楽シーン、ひいてはカルチャーそのものを席巻し、それは一種の “社会現象” といっても大過ないものであった。

​​桜井和寿の内なる葛藤を描いたセンチメンタルな叙情詩


「innocent world」は普遍的なギターロックだ。トリッキーな構成だったり、当時流行っていたダンスミュージックを取り入れたわけでもない。誰もが口ずさめるシンプルな楽曲でありながら、その瑞々しいサウンドは幅広い年代層を虜にした。琴線に触れる優しいメロディ、桜井の特徴的なボーカル。また当時はヒット曲の大半をラブソングが占める中で、桜井自身の内なる葛藤を描いたセンチメンタルな叙情詩というのも新鮮だった。

 近頃じゃ夕食の
 話題でさえ仕事に
 汚染(よご)されていて 
 様々な角度から
 物事を見ていたら 
 自分を見失っていた

この印象的なフレーズは彼らのメインリスナーである若者よりも、むしろ萎びた中高年に響きそうな内容である。リリースから丸30年。私も40を手前にし、飲んだ帰りの終電に揺られながら聴くと、これがもう沁みるったらない。ようやく私もこの曲の歌詞が理解できる年齢になったのだ。しかし桜井さん、24歳の時にこの歌を作ったんだよなぁと、あらためてその感性に脱帽するばかりだ。

​​色褪せることなく多くの人々の心に響き続けているメロディー


今年の3月に放送された『歌う 〜ずっと好きだった曲~』(BSフジ)でウルフルズのトータス松本とシャ乱Qのつんく♂が対談。かつて意識していたバンドとして、共に同期のミスチルを挙げ、事務所やレコード会社から “ミスチルさんがさ〜” とプレッシャーをかけられたという苦い(?)思い出を披露した。当時、どれだけミスチルが音楽シーンに多大な影響を与え、また規格外の存在だったかがうかがえるエピソードだ。

昭和から平成へ、歌謡曲からJ-POPへと時代のフェーズが劇的に変化したあの頃、ミスチルの存在は新時代のポップソングの規範になった。しかも彼らは「Tomorrow never knows」「名もなき詩」等々、歴史に残る名曲を次々と世に放ち、誰にもマネできない境地を突き進んで行った。まるで敵なしのアスリートが自らの持つ世界レコードを更新するように、ミスチルは圧倒的なトップランナーでありつつ、ポップソングのスタンダードをアップデートし続けたのだ。

その恐るべき実力を一気に世に知らしめたのが「innocent world」だった。94年のヒットソングはどれも遜色ない名曲ばかりだが、とりわけこの曲の普遍性は特筆すべきものがある。「♪いつの日もこの胸に流れてるメロディー」ーー リリースから30年が経ち、そのメロディは色褪せることなく多くの人々の心に響き続けている。

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