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1世紀ぶりのパリ五輪、独創的なセーヌ川での開会式はテロ懸念で難題山積

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セーヌ川,Ⓒゲッティイメージズ

観客30万人に半減、緊急時の代替案も

7月26日開幕のパリ五輪はエッフェル塔やベルサイユ宮殿など観光名所を舞台に、1世紀ぶりの華やかな祭典が期待される。その中でもパリ市内中心部を流れるセーヌ川での開会式が大きな見どころだ。

夏季五輪史上初めて競技場外で実施する開会式はパリならではの大胆で独創的な試みとなるが、フランスの地元メディアによると、テロの危険性が懸念されており、ダルマナン内相は警備上の観点からセーヌ川の河岸や橋に受け入れる観客数を当初の60万人から30万人に半減する方針を明らかにした。

実は計画段階から安全面を巡って大会組織委員会とパリ警視庁が激しく対立したことも表面化。最近になって緊急時の代替案をマクロン大統領も認めるなど、市民参加型の斬新なアイデアとは対照的に運営上の複雑さが浮き彫りになっている。

6キロの船上パレード、水質汚染も課題

組織委員会の計画によると、パリ五輪の開会式は7月26日夜8時から3時間程度のスケジュールだ。各国・地域の選手たちが約160隻の船に乗ってセーヌ川沿いのオステルリッツ橋から出航し、ノートルダム大聖堂やルーブル美術館など世界的な観光名所を見ながら、優雅に西へ約6キロの区間を船上パレードする。

終着点はエッフェル塔前のイエナ橋。選手らは船を下りて名所のトロカデロ庭園に移動し、船上オーケストラの演奏や光のショーなどでフィナーレを迎える構想という。

一方でセーヌ川は水質汚染の課題も浮き上がる。パリ市は「泳げる川」の実現に着手しているが、2023年夏に行われたオープンウオーター(OWS)のテスト大会は水質悪化で中止に。

パリ・パラリンピックのトライアスロンテスト大会ではセーヌ川で行うスイムが直前に中止となり、ランとバイクによるデュアスロンに変更された。

相次ぐ爆弾テロ予告、3万人の厳戒警備

深刻化するパレスチナ自治区ガザ情勢を受け、過去にイスラム過激派のテロに見舞われたフランスなど欧州各国でテロへの懸念も拡大している。

2023年10月にはルーブル美術館などの観光名所や空港へ爆弾テロ予告が相次ぎ、2023年12月にはパリ中心部でイスラム過激主義の男にドイツ人観光客が刺殺された。エッフェル塔近くのセーヌ川に架かるビラケム橋付近で事件は起きており、パリ五輪まで半年を切って厳戒ムードが高まっている。

フランスのマクロン大統領は地元テレビに「プランBやプランCがある」と指摘。どんな代替案があるのかは不明だが、通常通りにメイン会場となるフランス競技場で実施するのか、他にもアイデアがあるのか。

「全てのシナリオを想定し、全てのシナリオに適応する」とも述べており、大会期間中は安全面を課題に挙げて連日3万人の警察官や軍隊を配備して厳戒態勢を敷く警備システムを明言している。

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記事:堺俊輔

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