もしも『ジョーカー』アーサーがバットマンに出会ったら「アルファオスに畏怖しただろう」「アーサーはゆとりある男に憧れる、自分がなれなかったから」
アーサー・フレック……ジョーカーとして覚醒し、社会に衝撃をもたらした映画『ジョーカー』(2019)のこの男が、もしもバットマンに出会ったら?
1作目『ジョーカー』では、バットマンことブルース・ウェインは子どもとして登場。アーサーは、ブルースの父であるトーマスに一方的な恨みを募らせていた。
バットマンといえば、彼なりの苦悩は大いにあるものの、一般的には大富豪で、手に入れらないものはなく、女性にもモテるようなイメージがあるだろう。一方、アーサーは“持たざる者”である。お金もないし、発作的に笑ってしまう病に悩まされ、社会から馬鹿にされながら、かろうじての生活を続けている。
多くのバットマン神話の中で、バットマンとジョーカーはコインの裏表のような関係だ。ジョーカーは何度も凶行に走ってはバットマンに戦いを挑み、ある時には「お前がオレがいなければ存在し得ない」といったことも指摘する。それでは、映画『ジョーカー』でアーサーの住む世界にバットマンが存在したら、彼はどう感じるのだろう。トッド・フィリップス監督が米に答えたのは、次のようなものだ。
「アーサーはバットマンという“アルファオス”に畏敬の念を抱くと思います。ホントに。アーサーは(彼の存在を)見上げて、拝めるんじゃないかな。それで畏怖する。アーサーというのはいつも、“ゆとりある男”に魅了される。彼にはゆとりがないからね。1作目に登場したマレー・フランクリンは“ゆとりのある男”だった。彼はおそらく、あの共演者たちを“ゆとりのある男”と見たことでしょう。それこそが、アーサー自身が決してなり得なかった存在、“ゆとりのある男”というものです。」
フィリップスの言う“アルファオス”とは、動物の群れの中で最も強く、リーダー的役割を果たすオスのこと。マレー・フランクリンとはロバート・デ・ニーロが演じた人気トーク番組の司会者。アーサーはこの番組に出演し、マレーに認めてもらうことを何度も妄想していた。やがてその念願が叶って番組にゲスト出演するのだが、自分が笑い者にされていると悟ると、“無敵の人”となったアーサーはマレーを射殺してしまう……。
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決して“ゆとりある男”になれなかったアーサーは、確かにバットマンが存在すれば彼に憧れ、一方的な憧憬を募らせては、ある時点で逆上して暴走したかもしれない。あの世界にはブルース・ウェイン少年がいるのだから、年月が経てばバットマンと出会う未来もあるはずだ。果たしてその可能性は?2024年10月11日日本公開の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を観て、また考えるとしよう。
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