NTTデータなど3社、企業向けワーキングケアラー支援を事業化 法改正・人的資本経営に対応
NTTデータ(東京都江東区)、NTTデータ ライフデザイン(同)、東京海上日動火災保険(東京都千代田区)の3社は10月24日、働きながら家族の介護を担う「ワーキングケアラー」を支援する新事業を開始すると発表した。企業を通じて、仕事と介護の両立を支援する包括的なサービスを提供する。
NTTデータが8月に設立した新会社を中核に、東京海上日動が資本参画することでサービスの高度化をはかる。今後、法人向けの展開を進める方針。
仕事と介護の両立が企業課題に 新サービス立ち上げの背景
日本では高齢化が急速に進行しており、2030年には働きながら家族の介護を担う「ワーキングケアラー」が約318万人に達すると見込まれている(経済産業省試算)。それに伴う経済損失は9.1兆円とされ、企業にとっても対応が求められる課題となっている。
介護との両立に直面した従業員は、業務パフォーマンスの低下や離職リスクを抱えることがあり、人材確保が困難な中、企業の持続的な成長にも影響を及ぼす可能性がある。こうした状況を踏まえ、従業員が安心して働き続けられる環境の整備が企業に求められている。
2025年には改正「育児・介護休業法」が段階的に施行され、企業には介護との両立を支援する体制整備が法的に義務付けられる。こうした背景のもと、NTTデータは2025年8月に「NTTデータ ライフデザイン」を設立。社内での導入と効果検証を経て、同年10月から外部向けにサービスを本格展開する。
また、東京海上日動火災保険は、NTTデータ ライフデザインに資本参画し、介護領域における知見を生かしてサービスの高度化および法人向けの販売体制強化を支援する。
企業と従業員を支援する「ケアラケア」の全体像
「ケアラケア」は、企業とその従業員を対象に、「仕事と介護の両立支援」を目的としたサービス。企業には制度運用支援と実態把握を、従業員には生活支援を提供する。法人向けと個人向けのサービスを一体的に構成し、介護離職リスクの軽減と業務継続の支援をはかる。
企業が抱える「見えない介護リスク」に対応
企業向けサービスでは、法令対応にとどまらず、従業員の状況を可視化し、実効性のある両立支援施策をワンストップで提供する。
実態調査・報告企業全体を対象に介護実態を調査。従業員のタイプ分類や潜在的な課題を整理し、専門家による評価を加えた「介護実態診断レポート」として提供する。データに基づいた離職防止策の立案や生産性維持に活用できる。パーソナルレポート従業員個人の介護リテラシーや家庭環境、親の介護ステージなどを分析し、行動変容の参考となる指針を提示する。パーソナルカウンセリング介護負担の大きい従業員に対し、専門家が個別にヒアリングを行い、介護プランの方向性を助言。カウンセリング後には、具体的な内容を記載した個別レターを送付し、継続的に支援する。
ワーキングケアラーと家族を継続的に支援
個人向けサービスでは、ワーキングケアラーの心理的・身体的な負担の軽減をはかり、要介護者の自立支援を目的とした支援を行う。
コンシェルジュ相談・伴走支援介護専門職によるコンシェルジュが、継続的に相談に対応。状況に応じた最適な支援策を提案する。見守り・駆け付け支援要介護者の自宅状況を遠隔で見守り、異常を検知した際には提携事業者が駆け付けて対応する。生活支援サービス介護保険外の支援として、家事代行、外出・通院付き添い、運動・食事サポート、保険・終活・住まいに関する支援など、多様なサービスを全国の事業者と連携し提供する。サービス内容は今後拡充される予定。
全国展開・データ活用も視野に 3社の成長戦略
2025年度は、まずNTTグループ各社への導入を進め、2026年度以降は全国の大手・中堅企業への展開を見込む。法人向けサービスに加え、個人向けサービスの提供も拡大する方針。
個人向けサービスは、共創パートナー企業と連携して提供を開始しており、今後は全国の民間介護事業者との協業を通じて、サービス領域と提供エリアを拡大していく。
将来的には、サービス提供により蓄積されるデータを活用し、医療・金融・食・生活支援といった周辺分野にも事業を広げる構想を描く。2030年度までに法人500社への導入、個人30万人の利用を目標とし、売上規模100億円の達成をめざす。
同事業を通じて、介護離職の防止と人材定着を支援し、人的資本経営への貢献を目指す。安心して働き続けられる環境づくりを後押しする方針だ。
発表の詳細は、NTTデータの公式リリースで確認できる。