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制作秘話を語る!――ショートムービー「リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」:足立慎吾監督×いみぎむる先生インタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2022年の夏に放送され、大きな話題となったTVアニメ『リコリス・リコイル』が、全6本のオリジナルショートムービーとなって、帰ってきた! 

今回は、喫茶リコリコを舞台に、千束やたきなたちの日常が垣間見られる作品になっています。コメディ要素も高いので、何度も観て、思い切り笑ってください。

アニメイトタイムズでは、ショートムービー「 リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」の公開を記念し、足立慎吾監督とショートムービーの第2話でネーム脚本を務めた、キャラクターデザインいみぎむる先生の対談をお届けします。

 

 

【写真】『リコリコ』ショートムービーの舞台裏がユルくて最高! 足立慎吾監督×いみぎむる先生インタビュー

宮古島から戻ってきて、ハワイへ行くまでの喫茶リコリコの日常を描く

──『リコリス・リコイル』の放送を終えて2年以上が経ちますが、その反響の大きさをどのように捉えていますか?

足立慎吾監督(以下、足立):あまり実感はないんですけど、新たに作品を作るにあたって、こうやってたくさんの人が集まってくれているということが実感なのかもしれないですね。アニメに関しても、アニプレックスとA-1 Picturesがやりたいというならば、僕は作りますよ!

──そこでイヤだとは言わなかったのですね。

足立:雇われなので(笑)。

ただ、新たに作品をを作るというのは、やはり難しいことですし、TVアニメを作っているときに、何も考えていなかったわけではないんですけど、何をすれば喜ばれるのかというのが、オリジナル作品だと選択肢がいくつもあるんです。それをどうしていくか……。

TVアニメを観てくれた人が、この作品のどこを面白いと思ってくれていたのかというのを、作り手である僕らがちゃんと把握して、間違いない開発をしていく必要があると思ったので、そこはアニプレックスの方に確認しました。

──具体的にはどんなことをしたのですか?

足立:アニプレックスには、本当にいろんなセクションの人たちがいるので、その人たちにヒヤリングをしました。たとえばこの商品が人気だとか、音楽はこういう反響がありましたとか、男性、女性、それぞれどういうところが好まれているのかなど。その上で新作の方向性を決めていくというプロセスを取らせてもらっています。

 

 

──いみぎむるさんは、『リコリス・リコイル』で、キャラクターデザイナーとしてアニメに関わっていきました。それは大きかったのではないですか?

いみぎむる:僕自身、「リコリス・リコイル」をやる前は、ほぼ漫画の仕事しかしていなかったんですけど、「リコリス・リコイル」のあとは、漫画以外の仕事が増えたので、自分にとっては大きなターニングポイントになった作品だと思います。今ではもう漫画家とは名乗れない感じになってきているので、自称・漫画家と名乗っていこうかなと……。

足立:すごいよねぇ。アニメ化された漫画家であり(『この美術部には問題がある!』)、この作品で、オリジナルアニメのキャラクターデザインをして、ライトノベルのイラストレーターとしても、作品がアニメ化されている(『負けヒロインが多すぎる!』)。そんな人、いないですよ!

いみぎむる:本当に皆さんのおかげです。

足立:三冠王! 今、どんな気分ですか?(笑)。

いみぎむる:あははははは(笑)。ちょいちょい僕を悪い奴にしようとしてますね。いや、本当に皆さんに感謝しています。

──TVアニメ『リコリス・リコイル』は、スタッフにとってどんな現場だったのでしょうか? フィルムとして、キャラクターの表情など、後半に行くに従って、かなり生き生きしていた印象があるのですが。

足立:特に物語に関してはスタッフに意見を求めたりはしなかったですが、シナリオはともかく、現場単位で出てくる設定とか、画に関する提案とかは、内容に大きく抵触しない限りは、どんどんやってもいいんじゃない?という感じではやっていたので、ある意味ゆるい現場ではあったと思います。

原作モノほど、決まりはないので、自分が考えていたものがフィルムに直接届くという実感は、スタッフにはあったのかもしれないですね。まぁ、これも現場の人に聞いてみないと何とも言えないんですけど、あまりそういう声は監督には入ってこないんですよ(苦笑)。褒める立場で、逆がないというのが監督の仕事なので。

──いみぎむるさんは、この現場で、アニメのことを知る感じだったのでしょうか?

いみぎむる:そうですね。すべてが学びだったと思います。本当に何もわからない状態で、アニメの現場に入ったので、足立さんに教えていただきながら、全部を吸収するスポンジ状態でした。そんな感じだったので、出来上がったものを観せていただいたときは、クリエイターとして成長できたなという実感がありました。

──そこから、アニメの現場にも興味を持ち始めた感じなのでしょうか?

いみぎむる:もともと漫画家になる前は、アニメをやりたかった人間なんですよ。でも、なんやかんやあって漫画に行ったタイプで、自分の漫画がアニメ化されたらいいなという気持ちで漫画家になったので、アニメに関わる機会を得たことは、すごくありがたかったです。

──今回のショートムービー「 リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」に関しては、どのようなコンセプトがあったのでしょうか?

足立:ショートムービーに関しては、みんながやりたいこと、面白いと思うことを提案してくれたらいいのかな、くらいに考えていたんです。それで上がってきたものを僕が見るという感じだったので、僕から、こういうものを作ってほしいという希望はなかったんです。

そのくらい僕が関わるフィルムではなかったんですけど、結果的に、結構関わることにはなってしまいました。

──喫茶リコリコの日常をテーマに、ハワイに行くまでの期間を描くというのは決まっていたのですか?

足立:そうですね。宮古島から帰ってきて、ハワイに行くまでのところで、物語を作っていこうという話だったと思います。

 

 

役者さんのアドリブなど笑って観られるショートムービー

──いみぎむるさんは、どういった経緯で参加されたのでしょうか?

足立:やりたいと言ってくれたので、「是非!」と(笑)。

いみぎむる:何本かやるのであれば、1本くらいやらせてくれないかなという話を、雑談か何かで言ったのが最初だったと思います。確かショートムービーの第1話のアフレコのときだった気がするんですけど。

足立:だいたい何本やるかも決まっていなかったから、1本増えてもいいんじゃない?くらいの感じだったんです。キャラクターを使って、こんな内容があったら面白いんじゃないかと思う人がアイデアを出してくれる。それを楽しんでもらうのがいいのかなと思っていたので。

最終的に作品らしさを担保するのは、僕がやればいいので、とりあえずやりたい人が、面白いと思うことを取り組めればいいし、このショートムービーを観て、自分も参加したい!という人がいたら、連絡ください(笑)。

 

 
いみぎむる:あと、本編のときに作っていた、喫茶リコリコの美術設定をもっと使いたいよねって話もありましたよね。

足立:ナイスフォローです。忘れてました(笑)。

──第1話でも裏口が出てきましたね。

いみぎむる:でも、自分の担当する第2話では、まったくそれを活かしてないんですけど(笑)。

足立:あなた、プロットも全部守ってなかったですからね(笑)。

いみぎむる:あはははは(笑)。それは言わないでください。

──それはどういうことですか?

足立:お話した通り、僕は打ち合わせにはいなかったので、どんな内容にするのかという話には立ち会っていなかったんです。だから、こういうのをやるんだっていうプロットを事前にもらっていたんですけど、いみぎさんから上がってきたネームが、全然違うもので(笑)。

いみぎむる:最初の打ち合わせのとき、こういうプロットはどうでしょうと言われたんですけど、いろいろあるアイデアの種のひとつだと捉えていたんです。だからいただいたものを一度持ち帰って、改めて自分のネームを描いたんですけど、いざ提出したら、偉い方がざわつく……みたいな(笑)。いやぁ、まさかこんなことになるとは思わなかったです。

──最終的には、いみぎむるさんのアイデアを活かす形だったのですね?

足立:そうです。いみぎさんがそれをやりたいと言うのなら、それを作ったほうがいいでしょうと。でも、いみぎさんに提案したプロットというのは、その後第5話にちゃんと活かされているので、安心してください。

いみぎむる:結果的に、どちらも形になって良かったです(笑)。

 

 

──第2話は、いみぎむるさんがネーム脚本、足立監督がコンテを担当されています。キャラクターをどこまで崩すのか、そのデフォルメ具合は、キャラクターデザイナーならではで、かなり踏み込んだものだったと感じたのですが。

いみぎむる:そうですね。漫画っぽい表現というか、僕から最初に出したのも、文字ではなく漫画のネームみたいな形だったんです。最終的な絵の表現という部分は、演出家のほうで調整してくれるだろうから、どのくらい残るかはわからないけど、描いてみたら、ほとんど残っていたので、嬉しかったです。

足立:ネーム脚本が面白かったので、コンテは、その要素を残しつつ、コマとコマの間をどう埋めていくのかというだけだったと思います。逆に、出来上がったのを観て、どうでした?

いみぎむる:めちゃめちゃいい感じで、最高でした!

足立:アニメは漫画と違って時間の概念があるので、そこをどう作っていけば面白くなるのかは考えたんですけど、いみぎむるさんが描いた絵に関しては、全部そのまま使ったと思います。コンテに、ネームの絵を貼り付けたので(笑)。

いみぎむる:いやぁ、本当にありがとうございます。

──すべて数分で終わるショートムービーで、かなり笑える内容だったのですが、おふたりが、ここは笑ったな、というエピソードはありましたか?

足立:毎回面白かったんですけど、笑っちゃうのは、基本的に収録のときになるんです。

やっぱり自分たちでコンテ・編集までやっていて、見すぎているから客観視できないんですよ。その画に対して、声優さんが予想外のお芝居をしてくれて、初めて面白くなったりするんですよね。だから毎回アフレコでは吹き出していました。

いみぎむる:自分が観た中でいうと、第3話は強烈でしたね。あのビジュアルはなかなかないですよ(笑)。

足立:あれ、面白かった? ちょっと作りながら心配していたんだけど。

いみぎむる:完成した映像を見て、こんなにちゃんと◯◯◯に見えるんだ!と思いました。

足立:わかってくれたなら良かった。視認性がちょっと心配で、短い中で2回くらい出しているので。

いみぎむる:でも、ショートムービーなので、何度も見返してくれるでしょうから。あれは強烈だと思います。

 

 

──たきなは本当に天才だなと思いました。声優さんのお芝居についてはいかがでしたか?

足立:そうですね。安済知佳さんは、千束を理解してくれているので。だから自由にやってもらいました。シナリオはあくまで素材で、安済さんがやったら千束、という段階にまで来ている気がするので、「それはちょっと違うんで」と言うこともないですよ。

──エンディングが流れたあとのやり取りは、アドリブだったのでしょうか?

足立:あのあたりは画がないので、自由にやってもらうことが多かった気がします。だいたいこんな内容なので、時間いっぱい使って、適当にやってみてくださいというのが、多かった気がします。

いみぎむる:僕は、ネーム脚本という形でしたけど、脚本は初めて書いたので、アドリブの指示とかは、あまり出さなかったんです。「ここアドリブで」って指示をしていいのかな?と思ったりもしたので、ある程度決まったセリフを提出していたと思います。なので他の話数を見て、アドリブをもっと入れておいても良かったのかな?と思ったりはしました。

足立:でも、アドリブと書くのは、基本的にはよくないことで、役者に考えてもらうところをたくさん作ってはいけないんですけどね(笑)。だからアイデアがあったらやってみてくださいとか、あくまで、あってもなくても問題がない、どちらでもいい場所でアドリブを入れてもらうほうが、役者さんにとっても負担が少なく、気が楽にできるのかなって思います。

いみぎむる:そうですね。現場で、本にはない、いいものを出してくれたりするので、負担なくやっていただきたいですね。

足立:ミカ役のさかき孝輔さんとか、良いものくれるんですよ(笑)。

いみぎ:第4話とか、バキバキにやっていましたからね(笑)。

──では最後に、ショートムービー「 リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

足立:一応言っておきますが、そんなに期待しないでください(笑)。今回は本当におまけみたいなもので、新作アニメーションとは別物なので、リコリコの続きが見られる!という感じになると、がっかりされるのではないかと、ちょっと心配しています。だから、気軽に観ていただきたいですし、それが面白ければいいなぁという気持ちです。

いみぎむる:1本が短いので、何回も観てほしいですし、良かったら、良かったよという言葉を、足立監督まで届けてください(笑)。

足立:おかわりが欲しければ、言ってくださればとは思っています。

いみぎむる:僕はすでにおかわりを観たいです!

 
[文・塚越淳一]

 

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