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花の発生を説明する「ABCモデル」とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】

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花の発生を説明する「ABCモデル」とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】

Q 花はどうやって発生するの?

A ABCモデルによって説明できる

ゲーテが解き明かした葉と花の関係は、200年後の1991年、モデル植物(動物でいうマウスのような実験用植物)のシロイヌナズナやキンギョソウのくわしい遺伝子解析から正しいことが確認されました。そして花の発生を説明する「ABCモデル」が提唱されました。

ABCのそれぞれは、Aはガクを発生させる遺伝子の集まり、BはAとともに働くと花弁を発生させ、Cとともに働くとおしべを発生させる遺伝子の集まり、Cはめしべを発生させる遺伝子の集まりです。このモデルで多くの植物の花の発生を説明できるとされています。

ゲーテの研究は、趣味や遊びではなく、真剣に生涯続けた研究でした。1790年に著された『植物変態論』で、ゲーテは、花の各器官は、葉がメタモルフォーゼを繰り返すことで発生すると述べています。ただし、花が発生するためには、茎や葉がしっかり成長している必要があります。さらにジベレリンという植物ホルモンの働きも必要とされています。

ABCモデルは本当に正しいのでしょうか。そのためには、花の突然変異体において、A、B、Cのそれぞれが働いたり、働かなかったりしたときにどうなるかを検証し、それがABCモデルで説明できることを示さなければなりません。

たとえば、Aの遺伝子に変異があると、CはAに機能を抑えられることなく強く働いて、めしべのみとなります。Bに変異があると、AとCの遺伝子だけ働くので、ガクとめしべだけができます。Cに変異があると、AとBだけが正常ですから、ガクと花弁だけができます。これら変異体のすべては、ABCモデルで説明できますから、花の発生を説明するABCモデルは、ほぼ正しいとされました。

1 ABCモデルによる花の発生のしかた

左から、Aが単独で働く場合、AとBが働く場合、BとCが働く場合、Cが単独で働く場合を表す

Aが作用 ガク
AとBが作用 花弁
BとCが作用 おしべ
Cが作用 めしべ

2 ABCモデルのきっかけとなったシロイヌナズナ

シロイヌナズナは、北アフリカ原産のアブラナ科の植物。帰化植物として、日本でも生育している。シロイヌナズナは、世代交代が早く、室内で簡単に栽培できるなど、植物学の研究材料として都合のいい性質を多くもっているので、植物生理学や遺伝子解析などでよく使われる。こういう科学研究の現場で使われる生物を「モデル生物」といい、シロイヌナズナは植物学の「モデル植物」だ。ABC モデルの発見は、シロイヌナズナの研究がきっかけとなった。ちなみにゲーテの説(85ページ参照)は、シロイヌナズナの遺伝子解析から正しいと確認された。

シロイヌナズナは、高さ 20~30cmほど。直径2~3mmという小さな白い花を咲かせる

この見た目がすごい

花は、A、B、C 3つの遺伝子の集まりが正しく働くことによって、正常に咲く。どれかひとつが機能しないと、変異が起きる。ABCが3つとも機能しないと、花全体は葉に先祖返りしてしまう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋

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