【睡眠専門医がお答えします! 睡眠時間、起床時間、睡眠薬...改めて知っておきたい「眠りの悩みQ&A」
大人世代の多くの人が抱えているのが、睡眠のお悩み。たとえば睡眠時間の考え方や睡眠薬との付き合いかたなど、基本的な知識がわかっていないことも。今回は睡眠専門医の渥美正彦(あつみ・まさひこ)先生にお話をうかがい、睡眠にまつわる疑問にお答えいただきました。
睡眠時間、起床時間、睡眠薬...「眠りの悩み」にお答えします
Q.何時に起きるのがよいですか?
→熟睡できていれば、短めでも問題ありません。
国際的な基準では、成人に推奨される睡眠時間は7〜9時間。ですが、短時間でも心身とも健康なら、無理して長時間寝る必要はありません。昼間の眠気に困っている場合は、8〜9時間を目標に睡眠時間の確保を。ただし、65歳以上で「8時間以上布団に留まる」生活を続けると、活動量が落ちて健康リスクが高まるという報告も。
Q.結局、睡眠は何時間がよいのか分かりません。
→決めすぎず、何時「までに」と考えましょう。
「何時」と一概には言えませんが、不眠の人はある程度一定化したほうが良いです。起床が困難な人は、状況が許すなら「8時から10時までに」というように幅を持たせてもOK。「何時に」と決めると、その時間を過ぎると起きるのをあきらめ、なりゆき任せになることが多いからです。起床後は、窓を開けて太陽の光を浴びましょう。体内時計がリセットされ、日々の快眠へとつながります。
Q.早起きはしなくてはダメですか?
→生活に支障がなければ無理しなくてOKです。
「朝活」が人気ですが、夜型の人にとって早起きは苦痛になることも。生活リズムや心身の健康に心配がなければ「変えなくていい」が基本です。ただし、遅寝遅起きだと光を浴びるタイミングも遅れ、午前2時、3時まで眠くならないという悪循環を招くことも。「朝は遅くとも〇時までに一度起きて光を浴びる」という意識が大切です。
Q.睡眠不足が続くと、体にどんな影響が出ますか?
→脳の機能や血管に影響を及ぼす他、免疫力も低下します。
国際的に短時間睡眠とされる6時間以下の睡眠を続けた場合、脳の機能や認知機能の低下を招くことが分かっています。さらに、免疫力の低下の他、血管に炎症が起きて動脈硬化や心筋梗塞の発症リスクが高まることも。また、食欲を高めるホルモンが過剰に分泌され、食欲を抑えるホルモンの分泌が抑制されるため、肥満の原因にも。
Q.睡眠の記録は取ったほうがいいですか?
→睡眠の変化や良い状態も分かり、おすすめです。
不眠の人の多くは、自分が眠れたか否かを「記憶」に頼って評価します。記憶に頼ると、実は眠れていても不眠の印象ばかり思い浮かぶもの。ノートなどに起床時間や運動したかなどを記録すると、どう過ごしたときによく眠れたか、逆に眠れなかったか日々の傾向が分かり、具体的な対策につなげやすくなります。ただし、数字などに目が行きすぎると不眠が悪化することもあるので、気楽に行って。
Q.睡眠薬に頼ってもいいですか?
→よいですが、根本的な解決法ではありません。
睡眠薬は頭痛のときの鎮痛剤のようなもので、不眠そのものを治すわけではありません。ただ、種類を知っておくと役立つことも。現在、処方薬は17種あり、その8割が私たちを眠らせる「睡眠脳」を強化するタイプ。効果が見られず薬を変えても、同じタイプでは意味がない場合もあります。自己診断で服薬をやめない、眠れるようになったら薬を減らせないか医師に相談することも大切です。
Q.医療機関に行くときの目安は?
→3週間以上、苦痛を感じたら相談を。
入眠に1時間以上かかる、または夜中に何度も起きて困る状態が3週間以上続いたら受診を検討しましょう。不眠が原因で日中の生活(仕事・家事・運転など)に支障があるときは、週数に関係なくすぐ受診を。睡眠時無呼吸症候群など別の病気が潜んでいる場合もあります。「日本睡眠学会」のホームページに指導医などの一覧があるので、参考に。
構成・取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/来迎純子
※この記事は紙&WEBマガジン『毎日が発見』2025年10月号に掲載の情報です。