大阪ミナミにある串かつの名店で修業した本場の味を【福岡で堪能!】
「串かつ」は、今や全国展開するチェーン店があるほどポピュラーな料理ですが、筆者が初めて大坂のミナミで串かつを食べたのは20年以上前。場所は通天閣前の「新世界」という一角で、昭和の匂いが残るかなりのディープゾーンに恐る恐る足を踏み入れた記憶があります。当時「2度漬け禁止」の串かつといえば、大阪の下町を代表するローカルフードでした。そんな往年の串かつを福岡で食べることができるのが、渡辺通の「串かつ 千寿」です。
店主の榊直樹さんは久留米の出身で、高校卒業後、調理師養成機関として名高い辻調理師学校に入学。専攻はなんと西洋料理のフランス料理コースだったといいます。そんなフレンチシェフを夢見る青年が生活費を稼ぐために入学してすぐにアルバイトで入ったのが、新世界にある串かつの名店「八重勝」でした。「卒業間際に『一般的な初任給の2倍出すから残ってくれないか』と誘われたんです」。それから串かつ一筋、「八重勝」で8年働いた後福岡に戻り、2011年に「千寿」を開業して現在に至っています。
自慢の串かつは1本140円からで、大阪時代に修業した定番のほか、地元の食材を使ったオリジナルも含めて常時50種類ほど。牛・豚・鶏・季節の野菜をはじめ、バームクーヘンにアイスクリームを添えたデザート串まで豊富なバリエーションを誇っています。初めての人は「おまかせ串かつコース」(5本1250円〜)から頼むのがオススメです。
同じ揚げ物でも、天ぷらやトンカツなどはゴマや菜種などの植物油かラード(豚脂)を使うのが一般的ですが、大阪風の串かつはおよそ200℃まで熱したヘット(牛脂)で一気に揚げるのが最大のポイント。短時間でカラッと揚がり、目の細かい特注のパン粉を使うことで油ぎれがよく、サクッとした口当たりが身上です。
今回は榊さんからおすすめの食材を聞きながら、単品で注文しました。1皿目は、左から椎茸、串かつ(牛肉)、とりかつ南蛮。舌を火傷しそうなほど揚げたてのアツアツを頰ばり、冷たいビールで流し込めば......これ、これ! これぞ、かつて新世界で食べた味そのままです。
2皿目はタコ焼き風に揚げたタコ、ビッグサイズのエビ、アボカドの炙りチーズ。それぞれ食感も味付けも異なり、ビールをお伴に何本でも食べられそうです。
特製のソースは、修業先の「八重勝」と同じものを大阪から取り寄せてブレンドしているそうです。以前は大きな器に入れて「2度漬け禁止」ルールで提供していましたが、コロナ禍以降は一人ずつ小皿にソースを注いで食べるスタイルに変更。昭和の庶民的な風情がなくなりましたが、これも時代の流れですね。
串かつ以外のサイドメニューも充実しています。特に牛スジを味噌で煮込んだ大阪名物の「どて焼き」(550円)と、カラリと揚げた「手羽先」(1本220円※注文は2本から)は必食。どちらも日本酒や焼酎によく合い、さらに盃が進んで仕方ありません。
場所は城南線を薬院駅近くの三角市場から少し入ったところで、客席はカウンターのほか店の奥にテーブル席が2卓あり、お一人さまからグループまで対応可能。ぜひとも。大阪ミナミ仕込みの本場の味を楽しんでみてください。
串かつ 千寿(せんす)
福岡市中央区渡辺通2-9-11ONOHARAビル1F
092-711-1194