身近な品々に宿る美から仏教美学に迫る特別展「仏教美学 柳宗悦が見届けたもの」が、3月20日まで駒場東大前『日本民藝館』で開催中
柳宗悦(やなぎむねよし)が提唱し続けてきた仏教美学に関わる原稿や書籍などの資料展示とともに、柳の音源を基に制作した映像も初上映する「仏教美学 柳宗悦が見届けたもの」が、2025年3月20日(木・祝)まで、東京都目黒区の『日本民藝館』で開催されている。
仏教美学を表す多彩な作物から“美”を見出す
1949年には主著作『美の法門』を上梓し、仏教美学の基礎を標した『日本民藝館』創設者の柳宗悦(1889-1961)。
柳は、浄土門の諸宗が根本経典とした『大無量寿経』の中にある第四願に着目し、その願文から、人間が生み出す造形が本来「美醜なき美」の性を約束されていることに気付く。そこから無銘の作り手がなぜ美しいものを生み出せるのか、という問いの答えを導きだす。そして自身がそれまで『日本民藝館』に集めた所蔵品を証しとし、その気付きを広く説いていった。
「人は恐らく、在銘の作を作る時より、無銘の作を作る時の方が心が自由であろう」と考えた柳は、美醜の彼岸における「自在の美」「他力の美」を、具体的な「物」に即して多様に語ってきた。本展では仏教美学に関わる原稿や書籍などの資料展示とともに、柳が 1955年10月18日におこなった「東洋思想講座 第五回」(於・『日本民藝館』)の音源を基に制作した映像も初上映。柳が直観で見届けた「美醜なき美」の具体的な作物を提示し、「仏教美学」を顕彰する。
「身辺の品々が宿している美を契機としても、浄土相を確認し得る」とする柳の言葉とともに、彼の目を通して仏教美学のなんたるかに触れられる。
開催概要
「仏教美学 柳宗悦が見届けたもの」
開催期間:2025年1月12日(日)~3月20日(木・祝)
開催時間:10:00~17:00(西館〈旧柳宗悦邸〉公開日および会期中の第2水・土・第3水・土は~16:30。入館は閉館30分前)
休館日:月(祝の場合は翌)
会場:日本民藝館(東京都目黒区駒場4-3-33)
アクセス:京王電鉄井の頭線駒場東大前駅から徒歩7分
入場料:一般1200円、大学・高校生700円、中・小学生200円
【問い合わせ先】
日本民藝館☏ 03-3467-4527
公式HP https://mingeikan.or.jp/exhibition/special/?lang=ja
取材・文=前田真紀 画像提供=日本民藝館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。