エススリーギャラリートウキョウがオープン、こけら落としは写真家・増田伸也の新作展を開催
単なる視覚的な体験を超え、アーティストの思想や作品に込めた概念を深く探求できる場所を提供する「エススリーギャラリートウキョウ(S3 Gallery Tokyo)」が、2025年1月10日、雑司が谷にオープン。写真作品を中心に、国内外のアーティストが多様な作品を発表する場が新たに誕生した。
名前の「S3」には、太陽(Sun)を意味する「S」と、ギャラリー、作家、来場者の三者が太陽のように輝き、互いを照らし合う関係を築きたいという思いを込めているという。
雑司が谷のある豊島区は1930年代、若い芸術家向けにアトリエ付きの賃貸住宅が多数存在したことからパリのモンパルナスに倣い、「池袋モンパルナス」とも呼称されるようになった。同ギャラリーはアートの歴史を紡いできた、この豊島区の伝統を受け継ぐとともに、新たな文化の発信地としての機能を担う。
作品を通して日本と世界をつなぎ、アートを通じて訪れる人々に多様な視点を提供するとともに、アーティストや来場者が互いに交流し、学び合う場としてのイベントやワークショップも開催する予定だ。
実に7年ぶりに増田伸也の個展が日本で開催
こけら落としとなる同ギャラリー初の展示では、増田伸也の新作展「方丈三昧 HOJO ZANMAI」を2月10日(月)まで開催している。増田はフランス料理のシェフから写真家に転身した異色の経歴の持ち主。アメリカやヨーロッパのほかにマレーシアでも個展を開催し、国際的な評価を得てきた。同展は7年ぶりの日本での展示であり、増田の新作を鑑賞できる貴重な機会となる。
前作の「花札装束 HANAFUDA SHOUZOKU」では、「形あるものはいつかなくなる(all things must pass.)」という、幼い頃に増田が祖母から聞いた言葉が出発点。腐った食べ物や有機物をモチーフとして、目に見える物質世界と目に見えない精神世界をつなぐ作品を生み出した。 同展では、このスタイルにさらに拍車がかかっている。2020年から2021年にかけて発出された幾度の緊急事態宣言を経て、さまざまな思いを巡らせた結果だという。
増田は「生と死」「豊かさと貧困」「愛」「神と仏」「宇宙の始まり」など、目には見えない何ものかを、鴨長明を筆頭とする先人たちの言葉(暗号、コード)をヒントとして謎解きをし、理解し、視覚化することをもくろむ。増田が目指す新たな表現の第一歩を目の前に、見えないものを読み解く、深いアート体験をぜひ味わってほしい。
なお、1月18日(土)16時〜17時30分に無料のトークイベントが開催される。先着順で予約が必要だ。