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かつて存在した水族館の名前を冠した、まちのちいさな音楽堂「箱崎水族館喫茶室」【福岡市東区】

フクリパ

かつて存在した水族館の名前を冠した、まちのちいさな音楽堂「箱崎水族館喫茶室」【福岡市東区】

いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」や「ネオ喫茶」と呼ばれるお店。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。この記事では福岡にあるそんな「昭和レトロを感じられる喫茶店」や「ネオ喫茶」をご紹介していきたいと思います。

通り沿いに立つレトロな看板と、楽器が組み込まれたドアが目印

 

今回ご紹介する「箱崎水族館喫茶室」の場所は福岡市東区箱崎。

前回ご紹介した「喫茶バンビーノ」から北へ130mほど離れた並びにあります。

公共交通機関でのアクセスなら、福岡市地下鉄「箱崎宮前駅」からは徒歩6分ほど、「JR箱崎駅」からは徒歩8分ほど。

キーコーヒーのレトロなデザインの電飾看板を目指して行きましょう。

 

 

こちらがお店の全景。

大きなグリーンの看板にはしっかり「箱崎水族館喫茶室」の文字が。

 

 

近づいてみると、入り口のドアにはなんと弦楽器の「チェロ」が組み込まれています!

さらにオープンの表札の一部にも弦楽器で使う弓が使用されています。

 

 

ドアを開けるともう一つのドアが出現。

こちらのドアにもチェロの表板が貼られ、ドアノブはチェロのネックになっています。

これは「音楽と気軽に親しんで欲しい」という店主の気持ちを表しているんだそうです。

 

大量の蔵書とステージを併設した奥行きのある店内空間

 

外観から想像するよりも奥行きのある店内。

右手と左奥にテーブル席があり、さらにその奥にはグランドピアノが鎮座しています。

 

 

店内の椅子やテーブルの中には廃業した喫茶店から譲り受けたものもあり、どれもかなり年季が入っています。

中でもこちらの大理石が埋め込まれたテーブルはとても珍しいものらしく、来店したイギリス人のお客さんから「イギリスに持ち帰りたいのでぜひ売って欲しい」とお願いされたこともあるんだとか。

 

 

壁一面に並ぶたくさんの本は、全て店主さんの私物。

文庫本から歴史的な書籍まで、その数なんと6,000冊とのこと!来店した際にはぜひ読書も楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

トイレのドアにはひときわ大きな楽器が組み込まれています。

これは弦楽器の中で一番大きなコントラバスという種類なんだそうです。

 

 

最奥がステージエリアになっており、ライブや講演会はこの一角で行われます。

鎮座しているグランドピアノは、音質や演奏性を追求したヤマハのC5L。豊かな低音から高音までの響きが特徴の名器です。

 

 

店内にはアンティークなアイテムも散見されます。こちらは年代物のタイプライター。

 

 

また、入り口側はフライヤースペースになっており、コンサートやライブなどのフライヤーがたくさん並んでいました。

 

「箱崎水族館喫茶室」の歴史

店主の花田宏毅さん・典子さんご夫妻。ちなみに典子さんは福岡市中央区にある福岡県立美術館内の喫茶店「県立美術館喫茶室」の運営も担当しておられます。

 

箱崎水族館喫茶室を営むのは、花田宏毅さん・典子さんご夫妻。

夫の宏毅さんは、サラリーマンとして働く傍ら、音楽活動も行っていました。

50歳のタイミングで勤務先を退職され、箱崎で実母が経営する喫茶店「カフェ・ド・ナガシマ」を手伝っていた奥様の典子さんと二人で喫茶店を開業することを決意。

 

そのコンセプトにしたのが「まちのちいさな音楽堂」。

元々音楽活動を行っていた宏毅さんは、かねてよりライブハウスやコンサートホールの使用料の高さを痛感しており、ミュージシャンが気軽に利用でき、お客さんも気軽に演奏を聞ける場を作りたかったんだそう。

 

さらに、九州大学が福岡市西区に移転し、寂しくなった箱崎の街をアートの街にしたいという思いも重なり、「コンサートもできる喫茶店」という店舗形態で、2009年3月、地元の箱崎に「箱崎水族館喫茶室」をオープンされました。

 

開業当初よりジャズ・クラシックから弾き語りに至るまで様々なジャンルのライブが行われており、その数はなんと年間200回。

オープンから現在までで合計2,500回も開催してきました。

 

箱崎水族館について

「箱崎水族館喫茶室」という店名が気になる方もいるかもしれませんが、はるか昔、箱崎には水族館があり、典子さんの曾祖父が館長を務めていました。

 

1935年に箱崎水族館は閉館したのですが、それから時は流れ、誰もがその水族館の存在すら覚えていませんでした。

 

典子さんがご自身のルーツを辿って行く中、その事実を知り、かつての華やかだった箱崎を少しでも知ってもらいたいという思いから、当時の箱崎のシンボルであった水族館の名前を店名に冠しました。

店内にはありし日の箱崎水族館の写真や資料が多数展示されています。

 

 

こちらは当時の水族館内部の写真。窓ガラス越しに泳ぐ魚が眺められたようです。

 

 

箱崎水族館開業当時と思われる一枚。万国旗がはためいている様子が伺えます。

 

 

箱崎水族館は九州初の水族館として1910年(明治43年)に開館しました。

場所は筥崎宮からほど近く、当時は埋め立て前だった博多湾に面していたそうです。

水族館だけでなく動物園も併設されており、多数の鳥獣が飼育されていました。

その後、箱崎水族館は国道の開通に伴い、1935年(昭和10年)に惜しまれつつも閉館。

わずか25年間の営業でしたが、多くの人で賑わい、福岡の人々から愛される存在だったそうです。

 

 

そのほかにも、貝島慶太郎氏の著書「思ひ出」に掲載された子供時代の夏休みを過ごした箱崎水族館での記憶や、館長を務めた久保田知俊氏の記録なども掲示されていますので、来店された際にはご覧になってみてくださいね。

 

サイフォン抽出のコーヒーを愉しむひととき

 

それではメニューをチェックしましょう。

以前はフードメニューも提供されていたそうですが、コロナ禍以降はドリンクメニューのみになっています。

単一農園の豆を使用したシングルオリジンコーヒーや、ケニア産の茶葉を使用した紅茶、有機栽培大豆の豆乳を使ったアイスカフェオレ、ビールやハイボールなどがあり、価格は全品600円均一となっています。

 

 

コーヒーは昔ながらのサイフォン方式にて抽出。今回は目の前で抽出していただきました。

サイフォン式は抽出しているシーンを眺めているだけでも楽しくなりますね。

 

 

こちらがサイフォン抽出のコーヒー(600円)。

まろやかな口当たりとすっきりした味わいを、心地よい音楽とともに味わってみてはいかがでしょうか。

 

 

箱崎の地に「まちのちいさな音楽堂」として誕生してから16年。今では店名に冠した「箱崎水族館」のように、たくさんの人々に愛される存在になりました。

これからも箱崎を、音楽やアートの街として盛り上げていただきたいですね。

 

 

箱崎水族館喫茶室

■住所:福岡市東区箱崎1-37-21

■TEL:092-986-4134

■営業時間:9:00~22:00

■定休日:火曜および不定休(公式サイトにてご確認ください)

■喫煙:NG

■公式サイト:https://www.hakosui.net/

■Instagram:@hakosui

 

 

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