晴天のへきれきだった愛犬のがんの発覚、再発と転移も経験 獣医師・原修一先生と愛犬メイプルのがん闘病記
がんは人と同じでどの犬もかかりうる病気です。もしかかったときに動揺してしまうのは飼い主として当たり前のこと。でも、大切なのはそのあとどうやって愛犬を支えてあげるかではないでしょうか? 今回は、獣医師の原修一先生が体験した、愛犬のがん闘病記をご紹介します。
原 修一先生
「上野原どうぶつ病院」院長。上の家族写真右から長男の啓介さん、原先生、メイプルちゃん(メス・享年9才/体重28.0㎏/ゴールデン・レトリーバー/天真爛漫)、妻の敦子さん、長女のあゆみさん。闘病の詳細をYouTube「メイプルちゃんねる」で発信している。
青天のへきれきだった悪性度の高いがん
2013年、生後3カ月のときに原先生一家に迎えられたメイプルちゃん。玄関の靴や洗濯かごの靴下をくわえては、「遊んで」と見せに来る、ちょっぴりイタズラで、楽しいことが大好きなコでした。そんなメイプルちゃんの体に異変が見つかったのは2021年、8才のとき。エコー検査で腫瘤が写りました。
「病理検査で、血管肉腫との診断。悪性度が高いがんなので、先は長くないことを意味していました。目の前のメイプルはこんなに元気なのにと、家族全員がショックを受けました」
家族で話し合いをし、長くいっしょにいたいけれども、『メイプルのQOLをいちばんに向き合っていくこと』を方針に。そのためにまず、原先生はできるだけ再発させないための抗がん剤治療をスタートします。治療と並行して、メイプルちゃんにとっての楽しく幸せな時間を増やそうと、お出かけや家族写真撮影など、やりたいと思っていたこともどんどん実行。長男の啓介さんは、病気が発覚してからのメイプルちゃんと家族の様子を動画で記録しはじめました。
再発と転移。決めた方針に立ち返った
しかし恐れていたことは起き、翌年の4月、再発と転移が。
「動揺もしたし、急激に悪くなるのではないかとあせってジタバタもしましたが、家族で決めた方針に皆で立ち返り、進行をゆるやかにすることを目標に、気持ちを切り替えました」
「メイプルの場合、残念ながら現在の獣医療では完治は難しいものでした。でも、〝上手に負ける〞ことを大切に、たとえ病気には勝てなくても、できるだけ苦しまないようにと、家族全員で向き合えたことはよかったと思います」
出典/「いぬのきもち」2024年4月号『愛犬のがんと向き合う』
写真/尾﨑たまき
写真提供/原修一先生
文/川本央子