相棒は人力車「良さや魅力感じて」 伊賀・岩野さん
地元のため
「地元創生のために」と熱い思いを語る、三重県伊賀市畑村の会社員、岩野和麿さん(27)の力強い〝相棒〟が人力車だ。観光客だけでなく、地元の人を乗せて引く姿は人気を集めている。
皇学館大(伊勢市)2年の時、伊勢志摩の魅力を伝えようと、SNSを利用した学生向けのバスツアーなどを企画したのを機に、地域創生活動への思いに目覚めたという。
「他に地域の魅力を伝える何か」を考えていた時、人力車を引いて日本一周している人の動画をインターネットで見つけ、「ピンと来た」。その人に連絡を取り、伊勢市在住だという「弟子」を紹介してもらい、約半年間修業した。
伊勢で活動しながらも、「地元・伊賀の活性化」が心の中にあり、「伊賀忍力車」と名付けた人力車で、地元でも活動を始めた。さまざまな人から祭りやイベントに招いてもらい、就職後も休日は人力車を引いている。
岩野さんが引くのは、人力車が誕生した明治のころを再現した、今は貴重な正統派の2人乗り用。「普段当たり前になっている地元の景色も、違った目線で見ることで、改めて良さや魅力を感じてほしい」と話し、「お客さんは背中を見ながら話をするので、コミュニケーションツールとしては最高で、ガイドの究極体」と岩野さん。
「いつもの景色も思い出に」
乗客の方を向き、梶棒を上げる気遣いを大切にしており、今までに2千人ほど乗せたという。いつもは伊賀市の中心市街地の観光スポットなどを走っているが、5年ほど前、母と妹を乗せて自宅近くの田んぼのあぜ道を一周したことは忘れられない思い出だ。
感謝の気持ちを込めて引いた体験は感動で胸がいっぱいになり、「母が座る後ろを振り向けなかった」。母も「息子の背中越しに見えたいつもの景色や風の感じは感極まるものがあり、今も昨日のことのようによく覚えている」と振り返る。
4月に開かれた大山田こども園(同市平田)のイベントでも園児たちを乗せたところ、大喜びしてくれたそう。地域創生に取り組む会社を2年前に立ち上げた岩野さんは「人力車だけでなく、魅力ある地元になるべく、自分にできることをやっていきたい」と話した。