【都道府県版ジェンダーギャップ指数】静岡県の指数は経済分野で42位、行政分野で38位。この数字をどう見る?改善への道は?
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年3月13日放送)
(山田)今日は「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」についてです。
(山本)ジェンダーギャップというカタカナですが、新聞には日本語に直訳して「男女格差」と書いたりします。
実はいろんなところでジェンダーギャップ、つまり男女格差があるのですが、どんなところで具体的にどれぐらいの格差があるのかというのを、数値に置き換えることによって分かりやすくしようという試みが、この指数の公表です。
2022年に始まり、まだ4回目ですが、研究者などでつくる「地域からジェンダー平等研究会」という組織が、全国的な調査をして指数を公表しています。
(山田)なるほど。
(山本)毎年、3月8日の国際女性デーに合わせて発表しています。
調査を都道府県ごとに、またジャンルも分けてやっています。政治、行政、教育、経済の4分野に分けて、各都道府県の指数は何かということを示すものです。
指数が1だと「男女が平等な状態である」ということを示すのですが、それを計算したところ静岡県の場合は政治は0.206。行政は0.271、教育は0.582、経済は0.416ということで、整数の1には程遠い数なんですね。
この数値を1に近い順に並べて都道府県で順位別に見たときに、静岡県は政治は17位、行政は38位、教育は37位、経済は42位ということでした。特に経済は、47都道府県中42位という結果が出ています。
この結果は、他県と比べてどうかというよりは、去年と比べて、どれぐらい上がったか下がったかを見るべきではありますが、全国的に見ても、ちょっと静岡県は男女平等とは程遠い状態です。
(山田)そうですね。
県内は女性議員が少なく、「政治」は低迷
(山田)業界別に見てみると政治は当然、政治家さんの数だったりとか…?
(山本)そうです。既にオープンになってるデータっていうのはたくさんありますが、男女格差の観点から総合的にまとめて公表しているのは、この調査ぐらいしかないです。
例えば政治の場合は、「衆参両院の選挙区選出議員の男女比」など6指標を見ます。
(山田)なるほど。
(山本)静岡県の場合は衆議院が8選挙区、参議院は議席が四つありますが、それらのうち女性の議員は2人しかいないです。もっと女性の比率が高く、そのほかの「県議会の男女比」などの指標を合わせてみると指数が静岡県を上回る地域があるということですね。
都道府県議会の男女比というのは、静岡県議会の男女比がどうなっているかということですね。各市や町に議会がある中で、静岡県の場合、2町が男性のみの議会です。
そういったことを計算した上で導き出すと、「政治」の数字が0.206ということなんですね。
「経済」は昨年に続き、低順位
(山本)経済については、前年の2024年版でも同じ42位でした。それほど数値が改善していないといえます。
(山田)経済は女性経営者の数とかっていうことですか。
(山本)そうです。女性経営者だけではなく、指標は「就業率の男女差」、つまり例えば18歳から65歳になるまでの人口の中でどれぐらいの人が実際に就職しているか、男女の差を見るんですね。「フルタイムの仕事に従事する割合の男女差」という指標を見ると、静岡県は男性はフルタイムの割合が高いのに、女性は低い状態です。
(山田)そうなってるんだ。
(山本)フルタイムで働く女性が少ない中、全国的で比較的平均賃金が高い静岡県は、男性の正社員の方は賃金が高いけれどもフルタイムでない非正規労働の女性の場合は低いということで、格差が他の県に比べて大きくなってしまう現象もあり、数字上こういう形で出てきてしまうということです。
(山田)当然、「1」が一番いいってのはわかるんですよ、ジェンダーギャップがない方がいいのは。直していく努力が必要だとは思いますが、なかなか難しい部分もあるんじゃないですか?
(山本)そうですね。やはり、すぐに改善を図って全体的に「1」に近づくことは、おそらく無理だと思います。何が原因になってるのかを紐解いて、少しずつそこを改善していくっていうことが大事だと思います。
例えば経済の数字を導き出すときに、一つの指標になっているのが総務省にある「共働き家庭の家事・育児などに使用する時間の男女格差」というデータです。「どれぐらい家事・育児に時間を割いているか」と共働き家庭の方に聞いた結果を見ると、男女格差が最も小さい新潟県の場合でも男性が女性の4分の1しか家事や育児に時間を費やしていません。では静岡はどうかというと、5分の1とのことです。週に平均すると、女性は263分を割いていますが、男性はその5分の1以下の50分ほどしか時間を割いていないというのが、データとして表れているんですね。
家庭での努力次第、つまりもっと男性が家事・育児に携わるようになることで、この格差は埋まってくると思います。それが全体の指標にも影響してくるということで、身近なことでこの格差が小さくなる部分もあるんじゃないかなと、私は読みました。
(山田)今日僕らは男性2人で話しているので、もしかしたら意見が偏ってしまうかもしれないんですが。例えば家庭によっては「この数字でいい」っていう方もいるでしょうし、「これを変えてもらいたい」という方もいる。変えたい場合は、例えばこの男性が勤めている会社のシステム自体から変えなくてはいけないというところもあるわけですよね。
(山本)「行政」分野の指標にある「県職員の育休育児休業取得率の男女格差」に良い例がありますが、愛媛県は、男性職員の育休取得を高めようということでちょっと施策を工夫したそうです。これは、育休で休んだ職員の業務を他の方が肩代わりする場合、仕事が増えた方のボーナスを加算するという取り組みです。
(山田)それはいいですね。
(山本)そういうことに施策として取り組み始めたところ、元々15.8%だった男性の職員の育児取得率が44.5%まで上がったそうです。
最近は、民間企業でも育休は希望すれば必ず取らせることを会社もきちんと説明していなければいけないので、私の身近でも育児休業を取る社員が結構います。けれども、意外に進んでないんだなと感じましたね。今年どういう結果になるか分かりませんが、少なくとも昨年の調査ではそういう形だったということです。数値を押し下げる要因になってしまっているところもあると思いますね。
(山田)僕は、それこそ愛媛県でやっている「空気作り」な気がするんだよな。
(山本)実際、同僚に仕事を押し付けるのは嫌だということで、育休を取らないっていう職員の方もいたかもしれないですね。
世界からも後れを取っている日本!
(山田)静岡県は今回低いっていうデータがありましたが、静岡県だけじゃなくて国全体としてもそうですか?
(山本)実は、世界版のジェンダー・ギャップ指数っていうのもあります。
ちょっと日本版と違う項目もありますが、毎年、国際機関が世界で比較して発表しています。昨年の数字では、政治の分野は世界で113位、経済は120位ということで、日本全体としても実は世界から少し遅れをとってるんです。
20年ほど前の2006年には79位だったそうです。実はこれまでの間に、周りがどんどん進んで、追い抜かれているということです。
女性の首相は依然として誕生していないし、内閣の閣僚を見ても女性の閣僚は少ない状態です。
企業で言えば、女性の管理職は世界的に見れば少ないということで、少なくともG7の先進7カ国の中で一番低い数字だということです。こういう数字を突きつけられたら、この国のリーダーらは、これを深刻に考えるべきではないかなと私は思います。
(山田)確かにそうですね。
(山本)当然、能力や、やりたいという女性がいるかどうかという部分も影響してくると思うんですけどね。
政治や議会について言えば、男女で同じように意見が反映されるべきだと思います。そのほかのいろんな会議でも、女性の意見が反映されるのが望ましいです。例えば、市や町の防災会議では、女性の委員がいることによって防災の施策に女性の視点が入り、避難所に女性が必要とする備蓄品の配備が進んだという例があります。
そういったところも具体的に見ていくと、男女平等であるべきじゃないかなと私は思いますが、今はそういう状態ではないということです。市や町で言えばリーダー、企業で言えば企業のトップが「今はジェンダーギャップがある状態なんだ」という視点を持って臨んでいかないと、改善は難しいんじゃないかなと思います。
(山田)未だに、「女性は家庭を守って」みたいな。
(山本)令和7年でも未だにあるんですよ。そういう考え方のもとでのご家庭があっても否定されるものではありませんが、行政は今どうなのかとか、自分の市町の議会を見たときに女性はこんなに少なくて本当にいいのかとか、その辺りのことを考えてウォッチしていくといいんじゃないかなと思いますね。
(山田)今回教えてもらったこのデータと、国際女性デー。データの発表の度に意識すべきですよね。
(山本)そう思います。今まで、性別によって不利益を被ったという場合が、実はわれわれの身近なところにあるんじゃないかなと思います。リーダーやトップに立つ皆さんにはそこを少し工夫してほしいです。
(山田)今は変わっている途上なのかなとは思うんですが、日本あるいは静岡県も、もうちょっと工夫して取り込んだらよいという部分があるということですね。今日の勉強はこれでおしまい!