あなたは大丈夫?「デジタル終活」。誰にでも訪れる“その時”に備えてやっておくべき事とは!?
すぐ必要になるものがデジタル遺品の中に…
生活に関する情報提供や調査研究を行っている国民生活センターは、亡くなった後に遺族の負担にならないような「デジタル終活」の必要性を呼びかけています。今回は「デジタル終活」や「デジタル遺品」について、日本デジタル終活協会の伊勢田篤史さんにSBSアナウンサー新城健太が聞きました。
新城:デジタル終活という言葉に馴染みがない方もいらっしゃると思います。どのようなものか教えていただけますか?
伊勢田:デジタル終活とは、生前に自分のデジタル遺品を整理しておくことを指します。具体的に、デジタル遺品とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されているデータやインターネットサービスのアカウント情報等を指します。たとえば、スマホで撮影した写真、SNSアカウント、サブスクリプションサービスの契約情報(アカウント)などが該当します。
新城:なるほど。アカウント情報やパスワードは本人しか知らないことが多いから、遺族が困るというわけですね。
パスワードは身近な人に共有を
新城:これまでどのような相談がありましたか?
伊勢田:デジタル遺品に関するトラブルとして多いのは、スマートフォンが開けないケースです。ちなみに、新城さんはスマホにログインパスワードを設定していますか?
新城:はい、しています。
伊勢田:そのパスワードはご家族などと共有されていますか?
新城:してないですね。自分しか知らないです。
伊勢田:そういった方は非常に多いと思いますが、万が一のことがあった場合、残されたご家族はスマホのログインパスワードが分からないのでスマホを開けなくなります。その結果、スマホの中の写真や連絡先にアクセスできず、困ってしまうケースが多いんじゃないかと思います。
早速困るのが葬儀の準備
新城:開けられないと具体的には、どういう困ったことが起きてくるんでしょうか?
伊勢田:いろいろありますが、まずは葬儀です。葬儀では、大抵、遺影を飾ると思います。しかし、今は、紙焼した(プリントアウトした)写真が手元にないことが多いです。
スマホ内のデータにアクセスできなければ故人の良い写真が取り出せず、最悪の場合は運転免許証の写真を遺影として使わざるを得なくなる恐れがあります。女性は結構嫌がるようですが(笑)。
新城:免許証の写真…それは、どの世代の方でもちょっとイヤですね(笑)。
伊勢田:また、亡くなった方の友人や知人への連絡が問題となります。一昔前は家庭に手書きの電話帳がありましたが、今では、スマホ内の電話帳(連絡先)で連絡先を管理されている方がほとんどかと思います。スマホが開けなければ、故人にとって大切な人に連絡を取ることができず、葬儀に参列していただけないこともあります。
サブスクはトラブルになりやすい?
新城:特にトラブルになりやすいデジタル遺品というのはありますか?
伊勢田:サブスクリプション(定額課金)のサービスですね。スマホにアクセスできないと、亡くなった方がどんなサービスを契約していたか把握することが難しくなります。
新城:亡くなったことによる解約手続きは第3者ができるものですか?
伊勢田:そうですね。遺族がする形になるかと思います。本人確認という意味でIDやパスワードが分からないと手続きが進まないケースもあります。さらに最近では、スマホに送信されるワンタイムパスワードが必要になることもあります。そのため、スマホの通信契約を解約するのは、デジタル遺品の整理が終わった後にするのが良いでしょう。
新城:では、こういったトラブルを避けるために、事前に何をしておくべきでしょうか?
伊勢田:やはり、最も大切なのは「ログインパスワードの共有」です。これができていればスマホ内のデータ等にアクセスでき、デジタル遺品に関する問題の多くを解決することが可能となります。
若い世代にも必要なデジタル整理。便利なサービスも
新城:確かにそれが一番シンプルな解決策ですね。高齢者だけでなく、万が一に備えて若い世代も家族で共有することが大切ですか?
伊勢田:そうですね。デジタル終活のポイントは「突然死」への備えです。誰にでも予期せぬ事故や病気で明日亡くなる可能性はゼロではありません。その時に備えて今からしっかりと対策をしてもらえたらと思います。
新城:デジタル終活に役立つサービスやツールはありますか?
伊勢田:「デジタルキーパー」というサービスがあります。このサービスでは、毎週月曜日に「お元気ですかメール」が送信されます。
このメールを開封して『元気です』ボタンをクリックしない場合、火曜日から木曜日まで1日3回リマインドメールが送られ、金曜日の朝7時に最終確認メールが送られます。それでも反応がない場合、金曜日の正午に、事前に指定したメールアドレスへ設定しておいた情報が自動的に送信される仕組みです。
また、アナログな手法ですが、ログインパスワードを名刺サイズの紙に書いておき、財布や通帳に入れたり、冷蔵庫の扉に貼ったりして、万が一の時に家族に伝える仕組みを持っておくとよいと思います。
新城:とても参考になりました。伊勢田さん、ありがとうございました。
※2024年12月2日にSBSラジオ「IPPO」で放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……伊勢田篤史さん
日本デジタル終活協会代表理事、弁護士。