<磯採集のルール・マナー・&安全対策>徹底解説 手軽に海の生き物を採集するなら「磯」へ行こう!
手軽に海の生き物を採集するなら「磯」に行きましょう。
しかし、磯採集はほかのマリンスポーツと同様に危険を伴う趣味です。下手をしたら波にさらわれるなどして取り返しのつかない事態が発生するおそれもあります。
また、近年では愛好家と近隣住民、あるいは漁業従事者との軋轢が発生することも少なくなりません。楽しい磯採集にして、楽しい思い出をつくるためには覚えておいてほしいことがあるのです。
磯採集におけるルールとマナー
磯採集においても、ほかの趣味同様に守らなければいけないルールやマナーがあります。
漁業権に触れる生物を採集しない
磯に行くと大体、漁業権に触れる生物の採集を禁止する旨が書かれた看板がかかっています。海の生物のうち、いくつかの生物に漁業権が制定されており、遊漁(磯採集や釣り)などでは採捕してはいけない決まりになっているのです。
主にサザエ、アワビ、トコブシ、ナマコ類、イセエビなどは多くの都道府県で対象になっています。また、タコの仲間やウニの仲間、サザエ、アワビなどをのぞく巻貝の一部の種も地域によっては対象になるため、注意が必要です。
乱獲しないよう注意する
海にはたくさんの魚が泳いでいて、魚を見れば獲りたくなってしまいたくなりますが、そうはうまくいきません。ですが、やり方によってはたくさんの魚を一網打尽にすることができてしまいます。
筆者は干潮のサンゴ礁において、大きな潮だまりに魚が取り残されているのを見て、ひとつの網に魚を追い込み、一度で10匹近くの魚を採集したこともありました。
しかし、それをすべて持ち帰るわけにはいきません。
水族館ならともかく、私たちの家庭の水槽では、どうしてもひとつの水槽につき、飼育できる数というのは限度があります。その限度を超えてしまうと水質が悪化し、魚同士でぶつかり合い、弱って死んでしまいます。そうなると魚がかわいそうなので、原則として飼育できる数だけお持ち帰りしましょう。
また、「次の人のために魚を残しておく」というのは、重要なマナーといえます。ですから、乱獲については自粛しなければなりません。
個体数を大きく減少させるような採集をしない
最近は奄美大島や徳之島において、2025年6月に「島の生物持ち出しを自粛してほしい」と表明する事態がありました。その表明を出した理由としては、同年にオカヤドカリを乱獲し大量に持ち出しするという事案が確認されたことが引き金になっているといえそうです。
なお、オカヤドカリの仲間は国の天然記念物に指定されており、捕獲などは原則禁止されています。許可を得た業者により採集されたものが観賞魚店などにならんでいます。
一方、天然記念物ではない、あるいは「種の保存法」で指定されている種でなくても、アマミシリケンイモリであったり、クワガタの類であったりなどで常軌を逸したような数が持ち出されるケースがあったことが、この「お気持ち表明」につながったといえます。
こうした表明をせざるを得ない自治体等を増やさないためにも、個体数が大きく減少するような極端な数の採集は慎みたいものです。実際に淡水魚ではこの問題が顕著ですが、海水魚でもクマノミの仲間のように特定の環境にのみ生息するような魚では、そのような問題がおこる可能性があります。
ゴミを捨てない
これはもう漁業権云々だとか乱獲云々の問題の前に「人間としてどうなのか」という問題です。
ゴミを捨てないのはもちろんのことですが、他人が出したゴミも持ち帰るようなゆとりがほしいものです。
岩を起こしたら元通りにする
潮だまりにある大きな岩は魚の隠れ家になり、ヒトが振る網に追われた魚はその下や隙間に隠れています。その岩の下に隠れた魚を網に追い込むのに岩を起こすこともありますが、その際には必ず岩は元通りにしておくのがマナーです。
岩の下には小さな固着性・付着性の生き物がいることがあります。それらの生物は強い光に弱いものも多く、弱ってしまうことがあるのです。
また、岩をひっくりかえしたらその面が海面から露出するような場所であると、岩の下についていた生物が水から露出し干上がって死んでしまうおそれもあります。そのため、岩を起こしたらかならず元通りにしましょう。
サンゴを傷つけない
近年では地球温暖化や黒潮の当たり方の違いからか、琉球列島だけでなく九州以北の、おもに太平洋岸の海でもミドリイシなどの造礁サンゴを目につく機会が増えてきました。その中には魚が隠れていることもよくあります。
しかし、サンゴを傷つけてまで採集をするのはやめましょう。サンゴ礁は魚の隠れ家となり、共生している褐虫藻による光合成により二酸化炭素を吸収する役目もあります。
また、サンゴは小魚や甲殻類の隠れ家になるなど、生存の基盤をも作っているため、傷つけたり折ったりもしないように気を付けましょう。なお、造礁サンゴ類の採取は原則禁止とされます。
駐車場の確保とマナー 深夜・早朝は気をつけよう
磯採集は通常車を使って移動するというケースが多く、駐車場所をキープすることは重要ですが、とくに夜に出て早朝に現場に到着する、なんていう人も多くいます。特に早朝に到着した際には、現地住民の邪魔にならないよう気を配る必要があるでしょう
実際に釣りにおいては、駐車のマナーが悪く釣り禁止になってしまったポイントもあるようです。
安全対策をしっかりする
磯採集はウィンドサーフィンや海水浴など、ほかのマリンレジャーと同様に海というフィールドで行うため、安全対策もしっかりしなければなりません。
危険生物に注意
磯には魚やそのほかの海の生き物がたくさんいますが、その中には鰭などに毒があったり、ヒトを咬んで怪我をさせるような危険な生物も多数知られています。
しかしどんな生物が危険かはなかなかわかりにくいこともありますので、あらかじめ書籍などで勉強しておきましょう。
天候の変化に注意
磯採集は外で行うため天候にも注意が必要です。もし、台風が近づいているようであれば、採集は絶対にやめましょう。
そもそも海への道が通行止めになっていたり、倒木などで寸断されていることもあり、海へたどりつけなかったり、帰れなくなることもあります。
また、採集しているうちに天候が急変したり、あるいは雨が降っていなくても遠くで雷がなっている、なんていうこともあります。そのようなときは一刻も早く水辺から離れ安全なところへ避難しなければなりません。
そして、近年頻発する災害といえば「地震」と「津波」があります。最近では2025年7月末にロシア・カムチャツカ沖で大きな地震が発生し、それによる津波が発生。日本においても養殖いかだが流されるなどの被害が発生しています。
当然ながら津波が来た際には一刻も早く高台に避難しなければなりません。
熱中症にも注意
磯採集の季節は「夏」というイメージが強く、実際に夏の終わりから秋の暑い季節のほうが海が賑やかです。
特ににカラフルな「死滅回遊魚」が沢山見られるため、この時期は磯採集のベストシーズンといえます。
一方、そのような時期は熱中症にも注意が必要です。こまめな休憩、水分・塩分を十分に補給するなど、熱中症対策を十分に行いましょう。
潮の満ちひきをイメージする
海での採集は、潮の満ち引きの時間にも注意が必要です。河川での採集では河川の増水に注意が必要であるのと同じように、海においては、潮の満ちひきについて注意しておかなければいけません。
とくに大潮の日は磯遊びにはうってつけで、潮がひくと沖のほうまで歩いていくことができます。
しかし、行きはひょいひょいと、沖のほうまで歩いて到達できたとしても、採集に夢中になりすぎて、潮が満ちてくる時間になってしまい帰ることができなくなった、ということもありえますので、十分注意しましょう。
海藻の上に乗らない
春の磯は海藻が多く茂る季節です。
海藻が繁茂していると、岩の形がわかりにくくなることもります。そのため、不用意に海藻の上にに乗ってしまうと、その下にくぼみがあった場合にけがをする恐れがあるのです。
また、干潮時であっても、アオサなどの海藻が生えている場所はすべりやすく、転倒してけがをするおそれがありますので、歩く場合はそのような場所はできるだけ避けたほうがよいでしょう。ガケのようになっている場所であればなおさらです。
足場に注意
「ガケ」といえば、筆者も2016年に怪我をした経験があります。5月の連休に、鹿児島県喜界島の磯で釣りをしていたら、突然足元が崩れてしまい、ガケから滑落してしまったのでした。
その結果、筆者は足を縫う羽目になってしまい、海に入る採集ができなくなってしまいました。若干、崩れかけているところを歩いたらこのようなことになってしまったようです。
いずれにせよ磯採集の際には、特に足元には注意をはらうべきでしょう。
楽しい採集にしよう
今回は、磯採集におけるルールやマナーについてご紹介しました。
口酸っぱく言っているような気もしますが、今回のことを理解しておかないと、警察などに検挙されてしまったり、怪我をしたりするおそれがあり、そうなると楽しい採集にはならないことがあります。
上記のことに気を付けて楽しい採集になるようにしましょう。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
下瀬 環.2021. 沖縄さかな図鑑.沖縄タイムス社,那覇.