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大宰府と都を結ぶ幹線道路 古代山陽道の1300年前の様子や出来事に想いをはせてみよう【東広島史】

東広島デジタル

古代山陽道経路 概要

 東広島にまつわる歴史を探り、現代へとつなぎたい。郷土史のスペシャリストがみなさんを、歴史の1ページへ案内いたします。
執筆:國松宏史

太宰府と都を結ぶ最重要路 官道 古代山陽道

主要幹線道路 五畿七道

 平安時代の律令「延喜式(えんぎしき)」(※927年、律令の施行細則)に駅路ごとに各馬屋(駅)が記載されており、当時の官道・駅路を大まかに推定できる。
 畿内(現在の奈良、京都、大阪、兵庫の一部)を起点に、東西南北方向に整備した幹線道路を官道と言う。
 それぞれの官道は、地方の国府を順々に駅伝制で結び、軍事的な緊急・重大な情報伝達、物流の往来、国司・外国使節の移動のため、最短距離で到達できるよう、両側に側溝を備えた道幅10~12㍍(後に9~6㍍)で直線的に設定された。

重要度に応じて大路、中路、小路

 七道は重要度に応じて「大路」「中路」「小路」に区分され、駅路には、30里(当時の1里=550㍍・約16㌔㍍)ごとに駅家(うまや)が設置された。

◆大路=山陽道
 大陸との対外的な窓口・防衛任務を兼ねた太宰府と都を結ぶ最重要路で、唯一の大路である。駅家ごとに馬20匹が常備された。

◆中路=東海道・東山道
 駅家毎に馬10匹が常備された。

◆小路=北陸道・山陰道
 南海道・西海道
 駅家毎に馬5匹が常備された。

古代山陽道

 古代山陽道は、奈良の平城宮~太宰府を結ぶ官道(九州に入ると西海道)で幅員12㍍の直線路で整備され、早馬、外国使節の送迎、有事の大軍移動のために最も重要度の高い道として位置付けられた。
 駅家は、豪勢な瓦ぶき、粉壁白壁の造りで、事務所や宿泊・休息施設、調理室、給湯室、厩舎(きゅうしゃ)、水飲み場、馬具、倉庫などが調えられ、外国使節・駅吏(公用の使者)・旅人に朝廷の力を誇示する施設だった。駅家には乗り継ぎの馬が常時20匹用意された。 
 延喜式には、播磨国から長門国の駅路に51カ所の駅家が記されている。
※「延喜式」は1100年前の記録で、具体的な設置場所や建物・道路の遺構はほとんど見つかっていない。

広島県内の駅家・駅路

 備後国(3カ所)、安芸国(13カ所)を通った駅路に、16の駅家名が記されている。
 ①備後国=安那(やすな・神辺町)~品治(ほむち・駅家町 ※近くに備後国府)~ 看度(かみど・御調町 ※福山市周辺は備後国に属していた)
 ②安芸国=真良(しんら・三原市高坂町)~梨葉(なしは・本郷町)~都宇(つう・河内町入野)~鹿附(かむつき・高屋町高屋東)~木綿(ゆう・西条町寺家)~大山(おおやま・八本松町)~荒山(あらやま・中野東)~安芸(あき・府中町城ケ丘 ※近くに備後国府)~大町(おおまち・安佐南区大町)~伴部(ともべ・安佐南区沼田町伴)~種篦(へら・佐伯区三宅)~濃唹(のお・大野町)~遠管(とおづつ・大竹市小方)

東広島市内の駅家・駅路

古代山陽道経路 概要

 東広島市を通った駅路は、河内町入野~高屋東~高屋堀~中島~大畠~檜山~吉行(国分寺前)~四日市塔の岡(西条駅北口)~寺家青谷~上寺家(この辺りに木綿駅家)~米満~飯田~宗吉~大山峠の郡境に向かったと推定される。

西条近辺に残る痕跡

1.壬生忠見(みぶのただみ)歌碑

 高屋町杵原を通る農免道路脇(近畿大学裏方)に「壬生忠見歌碑」の石碑が建つ。石碑の説明文には、「この歌碑は、平成25年8月に梅谷秀夫氏が発起人となって建立したものである。芸藩通志が、賀茂郡の古蹟名勝の筆頭にあげている 『安志乃山』を、平安時代の代表的な歌人壬生忠見が詠んだということを後世に伝えるためである。『あめのあし』は、雨音と足山を懸けていて 『指南』 は 『しるべ』と読む」
 この歌は、壬生忠見が河内町入野方面から木綿駅に至る途中に詠んだ歌で、当時の駅路を知る一端と見ることができる。

※壬生忠見
 生没年不詳。平安時代前期の歌人で三十六歌仙の1人に数えられる。小倉百人一首の41番歌を飾る。

2.ゆうりんさん

木綿神社

 JR寺家駅北口、線路脇道路西方100㍍斜面上に、小さな「木綿(ゆう)神社」の祠(ほこら)が建つ。紹介文には次のような文言が記されている。

【由緒】
 木綿神社の祠は〝ゆうりんさん〟の名で親しまれています。古代(1300年前頃)の賀茂郡には志芳(しわ)郷、造果郷、高屋郷、木綿郷など9郷がありました。寺家には夕作の地名があったので木綿郷の一部と考えられています。この祠は木綿郷の時代から続いているものと考えられています。

【夕作の石柱】

石柱 下部に“夕作”

 この石柱は、元は大池の東端にありました。石柱には「平岩」「瀬戸」などの地名とともに「夕作」がみえます。

【木綿駅】
 木綿駅には古代山陽道(道幅10㍍)が通っており、その道が寺家上道で駅馬(はゆま)(早馬)が疾走していたと考えられています。また、替馬を用意し、宿泊する木綿駅が、この付近にあったという説もあります。以上が、木綿神社の紹介文である。
 現在〝木綿〟に関係する地名は残っていない。しかし、江戸時代に郡八幡宮(こおりはちまんぐう)(近くの山中にあった神社)に木綿を奉納していた〝ゆうつくり屋〟があり、同じ発音の〝夕作(ゆうつくり)〟が石柱に刻まれて〝木綿郷〟の根拠を示しているのではないか。

【安芸木綿】
 安芸木綿(あきゆう)は、古代の神事には木綿が欠かせなかった。その木綿の最高品質を誇り、安芸木綿と命名され珍重されたのが、木綿郷の木綿だった。

3.寺家の上道

 寺家青谷に当たる県営諏訪住宅裏を通る、通称「寺家の上道」である。直線的で道幅12㍍の規格に合致する道路である。

おわりに

古代山陽道跡(青谷)

 9世紀頃から朝廷の力が弱体化し、徐々に地方領主の力が強くなっていく。それに伴い、駅路の維持・管理が困難になり、駅家や駅馬が一部縮小され10世紀頃まで機能していたと思われる。
 古代山陽道は、現在の山陽自動車道沿いと思われ、山麓や山間部を通る場所が多い。駅路は山に戻り、山麓は宅地化が進み建物や道路の遺構はほとんど見つかっていない。
 1300年前の様子や出来事に想いをはせ、いろいろな想像を巡らせるのが歴史ロマンである。

プレスネット編集部

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