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療育って何をするの?「発達障害」へ抱いていた印象が変わった療育施設との出合い

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療育って何をするの?「発達障害」へ抱いていた印象が変わった療育施設との出合い

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

療育ってどんなことをするの?ドキドキしながら見学へ

ASD(自閉スペクトラム症)の長男あー、3歳の夏。当時はまだ診断前ではありましたが、療育に通うことにしました。地元で有名な児童精神科には予約を入れたものの、診察まで半年待ち。そこにお世話になる予定ではあるけれど、はよ療育は受けたいよ!てなわけで、近所の小児科で意見書を書いてもらい、通所受給者証を申請し、お目当ての療育施設へ見学に行きました。

療育というもの自体に無知で、若干緊張している母子を職員さんは温かく迎えてくれました。そして療育施設に一歩踏み入れて驚いたのが、その表示の多さです。文字が読めない小さな子どもでも分かりやすいように、一つひとつ丁寧に表示があるんですよね。

例えば玄関一つとっても、ここで挨拶できるようにという足マーク。靴箱には一人ひとりの顔写真。荷物を入れるロッカーにはお手本の写真が掲示してあって、それに沿って片づけることができるようになっている……など。

あとで先生にお話を聞くと、あーのように発達に特性がある場合、耳から得られる情報よりも目から得られる情報のほうが入りやすい、「視覚優位」であることも多いそうで……!!そーなの!?

あとは、パーテーションで区切られた個室とオープンスペースがあるのも印象的でした。余計な情報を遮断したほうがやるべきことに集中できるから……という理由でつくられた個室と、小集団で行う療育用のオープンスペース。そうかー、何かするとき絵本やテレビやおもちゃがあったら気が散るよね……!と言う根源的な気づき。たしかに大人だってそうだよね……と終始驚きの連続の療育見学。

見学した一部の場所だけでも、至るところに発達に特性がある子の育児ヒントが散りばめられてる……!実際に療育へ通うことになった後も、こんなふうに初めて知ることや気づきを得ることがたくさんありました。

無意識のうちに抱いていた「発達障害」へのネガティブなイメージを変えた、療育の先生の言葉

療育に通い始める前に、療育の先生に聞かれたことがあります。「ご両親は発達障害についてどうお考えですか?」と。 私たちは答えられませんでした。そんなこと聞かれても、どう考えてるんだろう……どうとも考えていないような気がしました。しいて言えば、目の前にある取り払いたい、それが無理なら飛び越えたい大きな壁。強敵。ラスボス。そんな、よくないイメージ……。

先生は言いました。「僕は、発達障害はその人の個性と捉えています。みんなと同じじゃなくていい、合わせなくていい。その子の良いところをもっと伸ばして、苦手なことのお手伝いをしていけたらなあと思っているんです」

ハッ……と、目が覚めた思いでした。その当時の私にとって発達障害は「悪」で、取り除きたい何かでしかありませんでした。あーとコミュニケーションが取れないことに歯痒さを感じ、あーが友達の輪に入れずみんなと仲良く遊べないことに悲しみを抱き、アニメのあるセリフを延々と繰り返す様に苛立っていた私。個性……。そうか、そんな捉え方が……?

思えば療育施設との出合いが、私の発達障害育児人生の扉が開いた瞬間だったように思います。

執筆/よいこ

(監修:室伏先生より)
よいこさん、療育見学でのご感想や、療育での工夫の様子、発達障害へのイメージの変化の契機などについて共有してくださり、ありがとうございました。効果的な視覚情報の示し方、今すべきことに対して不要な情報のシャットアウトなどは、知識として知っているとご自宅での生活にも活かせる部分がありそうですね。療育施設への通所は、その施設での療育ももちろん重要ですが、その施設での工夫、スタッフの方々のお子さんへの関わり方とその時のお子さんの反応などから、親御さんに学んでいただくこともとても重要なことの一つと考えています。

療育を受けたいけれど、通所受給者証の発行には医療機関での診断書や意見書が必要で(医療機関での発行が必要かどうかは地域によります)、でも専門の医療機関の受診はあと1年先で……なんて途方にくれていらっしゃる親御さんもいらっしゃることと思います。あーくんの場合は、小児科の先生が意見書を書いてくださったのですね。小児科のクリニックの先生で書いてくださる先生は多くはないかもしれないですが、かかりつけの先生に聞いてみていただくこともよいかもしれませんね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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