「分からないときは手を抜け」の本当の意味は? 上達への近道! イラストでよく分かる囲碁格言【囲碁講座】
「兄弟げんかは身の破滅」「分からないときは手を抜け」
囲碁にはこのような格言が数多くあります。先人の知恵が詰まった格言は、次の一手に迷ったときの心強い味方になってくれるもの。
NHKテキスト『囲碁講座』の2025年4月号からの別冊付録「上達への近道! イラストでよく分かる囲碁格言」では、そんな囲碁の格言をイラストと練習問題で分かりやすく解説しています。
今回は、その中から2つの格言についての解説を抜粋してご紹介します。
イラスト/宇城はやひろ(うしろ・はやひろ)
神奈川県出身。棋力はアマ五段。囲碁や麻雀の漫画や挿絵を中心に活動中。代表作「みことの一手!」「ゆるみちゃん」「切れぬ牌などあんまりない!」
取ろう取ろうは取られのもと
餌をまいて獲物を待ち構える。これはわなの王道ですが、囲碁でもわなのような場面はよく出現します。対局中に多少無理をしてでも石を取りにいきたくなってしまうのは、本能のようなものかもしれません。でも目の前のおいしそうな餌に釣られてむやみに追いかけると、手痛い逆襲を食らってしまいがち。この格言はそれを戒めています。
参考図をご覧ください。右上のように白を包囲している黒に弱点がない場合は、次に黒aと打てば白をしとめることができそうです。
でも左上のような状態で黒が白を取りにいくとどうなるか……。それが左下(左上と同じ形)です。黒1と白の眼を奪うと、白2から反撃されて外側の黒のどれかが取られてしまうでしょう。黒1は無理手だったのです。
分からないときは手を抜け
「手を抜く」と聞くと、手抜き工事のようないいかげんな扱いをイメージする方が多いかもしれません。しかし囲碁では「相手の着手に応じず、別の場所へ打つこと」を指します。学校の試験で難しい問題が出てきたとき、後回しにして簡単な問題から先に解くほうが効率がよいですよね。それと同じように、囲碁で応手が分からない局面に出くわしたら、ひとまず放置して別の場所へ向かうのが有力です。
例えば参考図、白1のワリ打ちに対して黒がaとbのどちらから迫ればよいのか迷って分からなくなったら、思い切って手を抜きましょう。黒2、あるいはcやdなど、ひとまず他の大場へ向かうのです。
局面が進んでaとbの価値に差がついてから改めて右辺に目を向ければ、着手を決めやすくなるはずです。
NHK『囲碁講座』テキスト4月号の別冊付録「上達への近道!イラストでよく分かる囲碁格言」では「兄弟げんかは身の破滅」といった格言を、つづく5月号の付録では、「厚みに近寄るな」「敵の急所は我が急所」などの気になる格言を解説。練習問題も掲載しています。
囲碁の格言は、語呂がよくて楽しいものが多くあります。気楽に覚えて対局に役立ててみましょう。
◆『囲碁講座』4月号別冊付録「上達への近道! イラストでよく分かる囲碁格言1」より
◆構成・執筆 保田大地 /デザイン knoma