地震のとき、助けてくれたのは「車」 防災士が考える、備えておきたいものとポイント
車に助けられた北海道胆振東部地震
2018年9月6日午前3時7分。「北海道胆振東部地震」が発生した時刻です。
明け方という時間帯もあり、多くの人が自宅で被災したのではないでしょうか。
私、HBCウェザーセンターの気象予報士・篠田勇弥も、札幌で経験がないほどの強い揺れを感じましたが、幸いにも家の損傷など大きな被害はありませんでした。
しかし、その後に直面したのが、北海道ほぼ全域のブラックアウト(大規模停電)。
スマートフォンで情報収集しようにも電波は届きにくく、バッテリーが減るばかり。正確な情報を得ることが難しい状況でした。
そんな中、頼りになったのが車です。
そのときは”たまたま”ガソリンが多く残っていたため、車内でスマホを充電し、ラジオで情報を得ることができました。ネットで誤情報も多く出回っていた中、ラジオから流れる落ち着いた声と確かな情報には本当に助けられました。
この停電をきっかけに、車も立派な防災拠点になり得るということを実感しました。
災害時、状況によって車は避難する場所にもなります。
北海道胆振東部地震は明け方に起きましたが、もしこれが出勤途中やお出かけ中に発生していたら…?
地震だけでなく、猛吹雪による立ち往生、最近多く発生している局地的大雨など、自然災害はいつ・どこで起きるかわかりません。
車での外出時に災害に巻き込まれる可能性も十分にあります。
今回は、車に備えておきたい防災用品を、一緒に考えていきましょう。
連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
車に備えておきたい防災用品&ポイント
車内は日差しや外気温の影響を受けやすく、夏は50℃以上、冬には-10℃を下回ることはよくあることです。過酷な環境となる車内では、家で行っている備えとは違う注意点があります。
そこで、防災士でもある筆者の視点から「最低限備えておきたいもの」や「備蓄の際に気を付けること」などをまとめてみました。### 最低限、備えておきたいもの
①シガーソケット用変換アダプター(USB/AC電源)
スマホの充電など、電源確保の安心感は非常に大きいです。
USBを繋げられるアダプターはすでに使っている方も多いのではないでしょうか。
AC電源に変換するインバーターを使えば、電気毛布など電化製品も使えます。
※ただし、出力に限りがあるので電力オーバーに注意!
②サンシェード・目隠し
夏の直射日光対策に必須です。
車中泊や停車時のプライバシー確保にも役に立ちます。
③携帯トイレ、衛生用品
渋滞・立ち往生時にトイレ問題は深刻です。
携帯トイレと一緒に簡易テントやビニール袋もあると安心ですね。
ウェットティッシュ・除菌ジェルなども忘れずに!
④ブランケット、寝袋
夏でも夜は冷えることがあるため、年間を通してあっても◎。
冬はさらに防寒着や使い捨てカイロなど防寒できるものの準備をしておきましょう。
⑤携帯ラジオ、ライト(電池式/手回し)
スマートフォンのアプリのラジオは通信が必要となる場合が多いため、非常時はアナログ機器が有効です。
手元を照らせるライトも、スマートフォンの充電を気にせず使えるのは大きな利点です。
非常食・飲料水について
車は温度変化が激しいため、常温保存ができる非常食でも車中では保管に適さない場合があります。
※「常温」の定義は5〜35℃(JIS規格)
さらに、冬は水が凍ってペットボトルが破損する恐れもあります。
非常食を用意する場合は、ようかんやクラッカーなど水を使わずそのまま食べられるもので、冬の間は飲み物をできるだけ持参するようにするのが安心です。
市販の車載用非常食セットを利用するのもおすすめです!
ガソリンは「半分切ったら満タンに」
北海道胆振東部地震のときも、給油のため、ガソリンスタンドには長蛇の列ができました。
移動や暖房、スマートフォン充電のためにガソリン残量は常に意識しましょう。
特に冬場は立ち往生リスクがあるため注意が必要です。
ポータブル電源は取り扱い注意
静音で排気もなく、エンジンをかけずに電源確保ができます。
スマホの充電だけでなく、電気毛布で暖を取ったり、容量次第で家電を使用できたりと、非常時の強い味方です。
ただし、ポータブル電源は高温や低温に弱く、発火のリスクもあるため、車内放置は推奨されていません。
遠出をするときなどに、荷物と一緒に積み込むのがよいかもしれませんね。
タイヤ交換は点検のチャンス!
防災用品は、用意して満足してしまいがちですが、定期的な交換や見直しが必要となります。
そこで、年に2回、必ず行う「タイヤ交換」を防災用品の点検のタイミングにしてみるのはいかがでしょうか?
「夏タイヤ⇒冬タイヤ」のときには、防寒着や使い捨てカイロなど寒さをしのげるものを追加。
「冬タイヤ⇒夏タイヤ」のときには、熱中症対策で飲料水をストックするなど、季節に合わせた中身の見直しもおすすめです。
ここで紹介した車の防災用品は、「最低限これだけは備えておきたい」ものを載せました。たとえば、川の近くに住んでいるなら浸水対策として、脱出用ハンマーや車用の浸水防止カバーを用意しておくなど、自分の住んでいるところはどんな災害リスクがあるのかを知っておくことが大切です。
この記事が防災について改めて考えるきっかけとなれば幸いです。
連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
文: HBCウェザーセンター 気象予報士 篠田勇弥
札幌生まれ札幌育ちの気象予報士、防災士、熱中症予防指導員。 気温など気象に関する記録を調べるのが得意。 趣味はドライブ。一日で数百キロ運転することもしばしば。
HBCウェザーセンターのインスタグラムでも、予報士のゆる~い日常も見られますよ。
※掲載の情報は記事執筆時(2025年8月)の情報に基づきます