江古田の『喫茶タイムマシン』でレトロ&ポップな80年代へタイムトリップ!
喫茶天国の江古田に2024年4月、新たな喫茶店が開店した。その名も『喫茶タイムマシン』。 足を踏み入れた途端、そこは1980年代。一大ブームを巻き起こしたコンピュータゲームが遊び放題で、アイドルたちの伸びやかな歌声が響き渡る。さあ、昭和のあの頃へ、ひととき旅立とうじゃないか。
「いつか地元に喫茶店を」。夫婦揃って早期退職し開店!
聖子ちゃんやトシちゃんのLP盤ジャケットや、アイドル映画のパンフレットを飾りつけ、アディダスのビンテージウインドブレーカーも並ぶ。
落ち着いた内装ながら、ポップカルチャーが浮き立って目に飛び込んでくるレトロフューチャーな趣に、心躍らずにいられない。
この稀有(けう)な世界観を作ったのは、畑義光さんと理江さん夫妻だ。「かつて江古田は喫茶店密集率日本一だったんですよ」と話す義光さんは江古田育ち。いつか地元で喫茶店を、という思いから夫妻揃って早期退職し、市場通りで開業した。
店内に満載のグッズは義光さんが「40年かけて集めたコレクションです」と胸を張る品ばかり。その傍らで、「行き場があってよかった〜」と、理江さんが笑みを浮かべながら胸を撫で下ろす。
いい大人たちも、ひととき少年少女に戻って夢中に遊ぶ
窓際には、1台のゲーム台が置かれている。実はこれ、特注でリメイクしたもので、畑さん夫妻の自宅のリビングに長らく鎮座していたというもの。
1ゲーム100円で遊べて、インベーダーゲームやパックマンなど、ゲームの種類も2000種という贅沢さだ。
遊ぶのは手慣れた手つきの中年たちのみならず。ゲーム機未体験の若者がカチャカチャレバーを操作して遊んだり、親に禁止されて遊べなかったとこぼすご婦人が夢を叶えたり。
カウンター席にもカセット式ファミコンが置かれ、50種ものソフトをラインアップ。その中から3種を選んで1時間500円で遊べるとあって、「先日は50代のおじさん2人組が対戦しに訪れましたよ」。
時を忘れて夢中に遊べる、ここは貴重な大人の秘密基地なのだ。
空間だけじゃない。家庭科教師だった理江さんが手作りするのは「あの頃の喫茶店にあった味」だ。
レトログラスに盛り付けたプリンアラモード700円やレモンスカッシュ350円に、懐かしいネクター350円、ミロ450円、加えて軽食も充実。昭和世代は問答無用にときめいてしまう。
人好きな夫妻の橋渡しもまた絶妙で、見知らぬ者同士なのに歌謡曲やアニメ、ゲームの話で盛り上がることもしばしば。
わずか8席ゆえに「僕はもう堪能しましたから、どうぞ」と席を譲りあう情景も日常的だ。
また、壁一面を彩るドット絵にも注目したい。こちらはなんと、義光さんの作。「趣味」と義光さんは笑い飛ばすが、理江さん曰く「7年前から1日1作品、寝る間を惜しんで描いてます」。
大好きな志村けんをはじめ、熱を持って声援を送った力士や野球の名選手、文化・芸能人など、特徴を捉えた作品は2000点余り。とても壁に飾りきれない。
最近ではお祝いごとの際などに「描いてほしい」と、注文も増えているというからすごい。
2階は魅惑の秘密基地。予約してでも堪能すべし!
しかし、この店は1階だけではないのだ。2階に上がれば、“友達んちの部屋”に上がり込んだ気分。
改造押し入れには、ウルトラマンのフィギュアや、「全巻揃えるのに15年かかりました」という江戸川乱歩の少年探偵シリーズ全46巻も揃う。探偵・明智小五郎と小林少年の推理、怪人二十面相との攻防戦に再びドキドキのめりこみそうだ。
和室にある文机にも小ネタが満載だ。アイドル雑誌あり、ブロマイドあり。「引き出しにもいろいろ入れているので、どんどん見つけて遊んでほしいです」と、理江さん。
試しに開けてみると、スーパーカーマジック定規やヨーヨーなどが出てくる、出てくる。
「小さなテーマパークにしたいんです。『としまえん』もなくなってしまいましたし」と夫妻が口を揃えるとおり、かつてみやげの大定番だった観光地ペナントがいい味をだし、スタジャンやスポーツバッグなど、当時流行ったカルチャーが凝縮。アイドルのみならず、プロレスのポスターも垂涎ものだ。
1971年生まれの義光さんが憧れて再現した男子部屋はファンが多く、利用は1時間の交替制。
ちゃぶ台脇に寝そべって、ブラウン管のテレビでゲームしたり、マンガを読み耽ったり。あの頃憧れた夢の空間を存分に満喫するなら、90分貸切予約(2〜6名で利用可。1人500円※飲食代別)をするといい。
「男の子ばっかりズルいですよね。いつか女の子部屋も作りたいって思ってるんです」と、理江さん。
はい。心よりお待ちしております!
喫茶タイムマシン
住所:東京都練馬区栄町34-5/営業時間:10:00~19:00/定休日:月・火(祝は翌水)/アクセス:西武鉄道池袋線江古田駅から徒歩2分
取材・文=林さゆり 撮影=鈴木奈保子