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大津の保護司殺害事件 「衝撃だが制度は必要」 保護司会の菱沼会長語る

タウンニュース

「更生保護活動は必要」と語る菱沼正文さん

滋賀県大津市で5月、保護司の男性(60)が殺害され、この男性が更生支援していた保護観察中の男(35)が殺人容疑で逮捕された。犯罪などで刑事処分を受けた人の更生を支えるボランティアである全国の保護司に衝撃を与えたこの事件を受け、保護司歴32年で川崎市保護司会協議会会長の菱沼正文さん(74)に、思いを聞いた。

「保護司制度の根幹を揺るがす衝撃的な事件。大変ショックを受けている」。事件に対する感想を尋ねると、菱沼さんは厳しい表情で語った。

被害者は自宅で殺害された状態で見つかり、死亡推定日の夜には容疑者の男が被害者宅で面接する予定だったとされる。菱沼さんは「容疑者は面接日に凶器を持参していたと報道されている。あってはならない事件。保護司の成り手不足に拍車がかかってしまう」。

現在、全国で約4万7千人、川崎市内では約300人の保護司が活動する。多くが対象者との面接を保護司の自宅で行っており、菱沼さんもその一人だ。対象者の出身地などゆかりある地域の保護司が担当するため、面会目的を周囲に知られないための配慮という。しかし昨今はマンション居住者も多く、更生支援の拠点として公的施設などに設けられる「更生保護サポートセンター」を使うケースもある。

自身にも学びが

保護司の任務は大枠で「保護観察」と「環境調整」がある。保護観察は、刑務所から仮釈放された人や保護観察付き執行猶予判決を受けた人の社会復帰を、協力雇用主や社会福祉協議会やハローワーク、更生保護施設などと連携しながら支援する。そして環境調整では、対象者が刑務所や少年院にいる間に面談や手紙を通じて更生の意欲と今後の意向を聞き出し、保護司が可能な限り調整を進める制度。菱沼さんは「環境調整」の段階から5年近く一人の支援にかかわったケースもあり、「無事に社会復帰を果たしてくれると、本当にうれしい」と話す。

菱沼さんが毎月の面談の際に心がけていることは、「優しく笑顔で迎えること」と語る。「例え時間に遅れても、慣れない仕事や生活で疲れているだろうし、『よく来てくれました』という気持ちで迎える。事件のことには触れず、仕事のことや交友関係などを報告してもらう」。残念ながら対象者が再犯に及んだケースもあったが、多くは保護期間を終え、社会に戻ったという。

今回の事件の衝撃はあれど、菱沼さんは「地域で更生を支援するうえで、保護司制度は絶対に欠かせない」と断言し、こう語る。「支援を通じて私自身も貴重な体験を重ね、多くのことを学んできた。志ある多くの方に、更生保護の活動について知ってほしい」

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