豪華文士たちがおくる、なにげに文士劇2024旗揚げ公演『放課後』 新ビジュアル、撮影レポートなどが公開
2024年11月16日(土)大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される、なにげに文士劇 2024 旗揚げ公演『放課後』の新ビジュアル、撮影レポート、配役が公開された。
文士劇とは、130年以上の歴史を持つ、専門俳優以外の文人、劇評家、画家などによって演じられる芝居で、大阪では実に66年ぶりの公演。(参考:『昭和大阪の文士劇「風流座」第一回公演』)今回上演するのは、東野圭吾のデビュー作『放課後』。1985年に出版され、第31回江戸川乱歩賞を受賞した青春推理を初めて舞台化する。
脚本・演出を務めるのは、京都を拠点に活動しているTHE ROB CARLTONの主宰の村角太洋。出演は黒川博行、朝井まかて、東山彰良、澤田瞳子、一穂ミチ、上田秀人、門井慶喜、木下昌輝、黒川雅子、小林龍之、蟬谷めぐ実、髙樹のぶ子、玉岡かおる、百々典孝、湊かなえ、矢野隆。筆一本で世にはばかる文士(作家)とその仲間が集結した。
豪華文士たちがおくる一日きりの貴重な舞台を見逃さないでいこう。また、本公演のクラウドファンディングがスタートしている。返礼品は作家たち自身でアイデアを出し合い、「あなたのお名前を小説の登場人物に採用」や「全出演者の直筆サイン入り台本」など、文士劇ならではのコースを用意している。
新ビジュアル撮影レポート
■コンセプトは“文士たちの放課後”。学生服や体操服に身を包み賑やかにポーズ
6月末に大阪市内の某スタジオにて、なにげに文士劇2024 旗揚げ公演『放課後』のビジュアル撮影が行われた。朝から控室には、用意されたセーラー服や詰襟の学生服を着用したキャストたちが続々と集まり、お互いを見合って「かわいいね!」「格好いい!」と大いに盛り上がる。普段は静かに机に向かっている文士たちが、この舞台を楽しもうと、やる気に満ち溢れているのが伝わってくる。
広いスタジオに入ると、本公演の実行委員である朝井まかてによる手描きイラストが。
出演メンバー16人の撮影時の立ち位置を描いたラフで、この日に向けて念入りに準備を進めてきたのがうかがえる。当日はまだ配役が発表されておらず、個々のビジュアルはあくまで“学生全般”をイメージしたもの。三つ編み姿の湊かなえ、ツインテールの朝井、リーゼントスタイルで不良少年風の東山彰良などそれぞれ個性的で、世代のハードルも軽々と超える不思議な魅力を放っていた。
4列に並んだキャストたちを、高い脚立の上からカメラマンが狙い、撮影がスタート。「校庭で撮っているイメージですので!」という声に、見上げる体勢の16人は「はーい!」と元気よくこたえる。撮影コンセプトは“文士たちの放課後”。課外活動を楽しむような明るさが、手を上げたポーズや笑顔から放たれる。「もう少し胸をはってみましょうか」などのリクエストにも即座に対応し、指で「LOVE」と描くなど、シャッターが切られるたび少しずつ動きを変える積極的なメンバー。「素晴らしい!」とカメラマンの熱い声が飛ぶ。
続いて体操服のシャツに着替えてのカットへ。この衣装の胸元には、「なにげに文士劇」をイメージしたオリジナルアイコンが施されており、メンバーの一体感をより感じる。三角座りをした前列の女性たち、後列で腕を組んだり拳を挙げたりする男性たち、みな自然な表情でそこに存在し、「卒業アルバムみたいですね」というカメラマンの言葉に説得力がある。終始ノリよく、声を掛け合いながら撮影を楽しむメンバー。最後は演出の村角太洋も加わり、活き活きとしたショットが完成すると、キャスト・スタッフ一同から拍手が沸き起こる。
この賑やかなビジュアル撮影を通し、文士たちの団結力も高まったようで、一日限りのスペシャルな文士劇への期待がさらに膨らんだ。
撮影/500G 山田徳春
脚本・演出、出演者コメント(抜粋)
■脚本・演出 村角太洋
東野圭吾さんの原作は、読み込めば読み込むほど発見があり、これを文章のスペシャリストである皆さんと、一本のお芝居にするのはとてもプレッシャーがあります。でも、普段私がやっているコメディと同じで、色々なところに伏線がはられ、最後のどんでん返しに向けて物語が集約されていくところが似ていると実感。東野さんは「どうぞ自由に」と言ってくださっているのですが、やはり強固なミステリーの面白さはしっかりと出したいです。そのうえで作家の方々がお芝居をする文士劇の面白さ、楽しさも出していけたら。キャスティングは皆さんの声質や佇まいから直感で決めました。普段、登場人物の心情を文章で表され、感情面を熟慮されている皆さんが、お芝居でどのような表現をされるのか。それこそが文士劇の面白さでしょう。僕は舞台上では誠実さが大切だと思っているのですが、皆さんのこの舞台に誠実に向き合う熱量がすごい。そこをお客様にうまく伝えられるように演出していきたいです。また、十何年芝居をしてきた僕としては、皆さんが本番を迎え、「演劇って楽しいじゃないか!」と思っていただけたら嬉しいですし、お客様は不思議な入り口に立つ気分だと思うのですが、同じく演劇の楽しさを感じていただきたいです。
■黒川博行
作家は基本的に孤独やから、みんなでワイワイ言いながらこの文士劇を創っていくのは楽しいです。ただ実行委員長をしてみて、舞台は実現するまでのプロセスが大変なのだとよく分かりました。周りのプロのスタッフにはとても助けてもらっています。最初は盛岡文士劇のように時代劇をしようという話もあったのですが、衣装や小道具など費用がかさむので、それなら学園ものでいこう! となり、ふと浮かんだのが東野圭吾くんの『放課後』。彼に相談すると「どんなふうに変えてくれてもいいですよ」と承諾してくれて、有難かったです。僕は日本推理作家協会の文士劇に出たことがあり、教師の頃は文化祭でシェイクスピア劇も経験。お芝居の楽しさを少しは知っているつもりですが、やはり素人ですから一生懸命自分の役をまっとうするだけです。できれば早く殺される役にしてほしい(笑)。基本的に文士劇はユーモアがあり、作家たちが真面目に演技しているのが面白いのでしょう。健康第一に本番を迎えたいですね。
■朝井まかて
数年前、先輩作家の葉室麟さんのお墓参りで澤田瞳子さんと九州へ行き、高樹のぶ子さん、東山彰良さんも合流した食事の席で、ふと「文士劇やりたいね」「やろう!」となり、黒川博行さんに委員長をお引き受けいただきました。そして、周りに声をかけたら、あっという間に16人集まりました。私は頭だけでなく全身を使って小説を書いている自覚があり、例えば暑いシーンは実際に暑く感じるなど、実感があって言葉になり、演出、装置などすべて一人でやっているわけです。それがこんなにチームワークが大事なことに踏み出し、普段使わない筋肉を使っているのですが楽しいです。高校時代は演劇部で、今も文楽や歌舞伎を観るのが好きですが、実行委員をするなかで文芸界との常識の違いに驚くことも多々。ミステリーを文士劇として見せるのは難しいかもしれませんが、脚本・演出の村角さんが原作の魅力を損なわず、お芝居でしかできないことを考えてくださっているので楽しみです。
■湊かなえ
この文士劇に声をかけていただいたのは、それまで当たり前にできていたことが、コロナウイルスでできなくなっていた頃。その閉塞感を突き破り、今までを取り戻すのではなく、もっと楽しいことをするんだ!と思って、お誘いいただきとても嬉しかったです。私は執筆中には頭の中に物語の映像があるのですが、恐らくほかの作家の方も台詞を声に出す出さないは別にして、一人芝居をしているようなもので、物語を監督のように俯瞰していると思います。そんな皆さんが役や物語をどう解釈し、どんな表現をするのか楽しみです。『放課後』は初めて読んだ東野さんの作品。ちょうどテレビドラマ版が放映されていて、その緻密なトリックをきちんと確認したくて読みました。舞台ではあのトリックをどう見せるのでしょうか!? 私は(撮影時の)三つ編みが似合う役なのかまだ分からないのですが(笑)、どの役になっても作品を読み込み、キャラクターの役割を感じてもらえるように頑張りたいです。
■東山彰良
ずいぶん前から、東京ではなく地方から何か発信できないかと、作家の皆さんは思っていたと思います。この文士劇の企画が持ち上がると、黒川さんや朝井さんを筆頭に本気で動き出してくださって。もう後に引けないですから、僕は大阪に長期滞在する覚悟で誠心誠意、全身全霊でやりますよ。実は以前、岩手に根ざしている盛岡文士劇を観に行ったことがあり、触発されたところはあります。僕らは芝居については素人なので、脚本の面白いところも真剣なところも変な色気は出さず、脚本通りにやるしかない。きっとどれだけ自分を捨てられるかでしょうね。僕は全部捨てるつもりです! 東野さんの作品は謎が二転三転し、ひとつのトリックだけを切り札とせず、早い段階で違う札も出してきて、ずっと読者を惹きつけるところが魅力。「初めまして」のメンバーも多いなか、これからの稽古で新しい発見をし、みんなでぶつかり合いながら高みを目指していけたら最高でしょうね。
■澤田瞳子
私は大学生のとき、日本推理作家協会さんがなさった文士劇『ぼくらの愛した二十面相』をテレビ放送で観て、すごく楽しそうだなと思っていたので、この企画が持ち上がったときはすぐお話に乗りました。今回参加してくださった方は気持ちの優しい方ばかりで、実行委員もしている私としては、皆さんが楽しそうにしているのを、はたから見られてとても嬉しいです。セーラー服や学ランを着ての撮影では、みんな高校生のノリでしたね。人間は服装や格好で属性が決まるんだなと思いましたし、同じ高校時代を過ごしたように心がひとつになって驚きました。私は大学生のとき能楽部でお能をやっていて、「それなら今回大丈夫だね」と朝井まかてさんに言われるのですが、演劇自体は初心者ですし、それとこれとは違うぞ、と思っています(笑)。西日本での文士劇は珍しいですが、観客の皆さんと距離があるからこそ、作家にこんな展開があることを知っていただければと思います。
【配役】
東山彰良…… 数学教諭・アーチェリー部顧問の前島
湊かなえ……(生徒)校内屈指の問題児・高原陽子
矢野隆……(生徒)アーチェリー部主将・杉田ケイ
高樹のぶ子……(生徒)アーチェリー部副将・朝倉加奈子
蝉谷めぐ実……(生徒)アーチェリー部期待の一年生・宮坂恵美
上田秀人……(生徒)学校一の秀才・北条雅
黒川博行…… 生徒指導部長の村橋
百々典孝…… 体育教諭の竹井
木下昌輝…… 理事長・校長の栗原
小林龍之…… 教頭の松崎
澤田瞳子…… 国語教諭・バレーボール部顧問の堀
黒川雅子…… 養護教諭の志賀
玉岡かおる…… 英語教諭・英会話クラブ顧問の麻生恭子
朝井まかて…… 校務員のバンさん
門井慶喜…… 刑事の大谷
一穂ミチ…… 前島の妻・裕美子
村角ダイチ…… 【友情出演】PTA役員・スーパーの店長・etc.
村角太洋…… 【友情出演】etc.