戦国ファン以外にも知ってほしい!岐阜県の新名所「古戦場記念館」がスゴ過ぎた 青春18きっぷでも気軽に立ち寄れる世界三大古戦場「関ケ原」の魅力【コラム】
徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍が戦った、天下分け目の戦いといえば?
答えはもちろん「関ケ原の戦い」。東軍・井伊直政の抜け駆けにより幕を開けた戦いは、西軍・小早川秀秋の裏切りによりわずか数時間で決着がつき、家康率いる東軍が勝利を収めます。天下人となった家康は後に江戸幕府を開き、ここに天下泰平の世が始まるのです。
歴史の教科書にも大々的に載っているため、誰しも名前を聞いたことはあるでしょう。しかしながらその舞台である「関ケ原」がどこにあるのか、行ったことはあるか、となると話は別。日本の真ん中あたり、と見当はついても、たとえば岐阜・愛知・三重・滋賀の四択問題にするとなかなか答えられません。
正解は――
決戦の地は現在、岐阜県不破郡関ケ原町として、古戦場の歴史を現代に伝えます。
西側は滋賀県の米原市と接しており、東海道新幹線の線路も町内を通りますが、鉄道駅は在来線(JR東海道線)の「関ヶ原駅」が設置されるのみ。人口は6000人ほどで、2024(令和6)年8月時点の岐阜県の人口が191万人ですから、県内で比較しても小さな町と言って差し支えないでしょう。
しかしながら関ケ原はワーテルロー・ゲティスバーグと並ぶ「世界三大古戦場」であり、歴史的価値の高さは言わずもがな。
関ケ原の戦いのシーズンになると、「大関ケ原祭」と銘打つイベントが開催され、2024年は9月7日(土)から10月20日(日)まで戦国ファンが楽しめる企画を展開します。なかでも10月19日(土)・20日(日)は2008年から続く戦国イベント「関ケ原合戦祭り2024」が開催され、全国から戦国ファンが集います。
◆大関ケ原祭2024
https://daisekigaharasai.pref.gifu.lg.jp/
このほかにも、関ケ原は東西文化の境界線に位置しており、エスカレーターの乗り方(左優先?右優先?)、焼いた餅の食べ方(海苔を巻いたいそべ餅か?砂糖醤油?)などが変わってくるなど、実は珍しい特徴を有している町なのです。
2020年に記念館が開業
そんな関ケ原に2020年に開業した新名所がこちら、「岐阜関ケ原古戦場記念館」。
館長は大河ドラマ「どうする家康」でも時代考証を担当された小和田哲男 静岡大学名誉教授。館内では古文書や武具などの歴史的資料の展示を行うだけでなく、ビジュアルで楽しむ「シアター」や現在の関ケ原を一望できる「展望室」などを備えており、関ケ原の戦いに多面的に触れられる学びの場として今まさに注目を集めています。
今回はこの古戦場記念館を訪問しました。JR関ヶ原駅からは徒歩約10分と近く、鉄道旅の途中で気軽に訪れられるのもいいところですが、一番の魅力は館内に用意された多種多様なコンテンツでした。
◆岐阜関ケ原古戦場記念館
https://sekigahara.pref.gifu.lg.jp/
合戦を俯瞰・ダイナミックな映像美を楽しむコンテンツ
「記念館というからには、武具や古文書の展示がメインだろう」
そんな思い込みは館内に一歩足を踏み入れた瞬間にひっくり返ります。確かに2階の展示室などは歴史的資料の展示が中心ですが、新しい記念館だけあってビジュアル的に面白い・目を引くコンテンツも用意されており、
「戦国武将の名前なんて織田信長・豊臣秀吉・徳川家康しか知りませんなぁ」
という方も思わず夢中になる施設になっていたのです。
実際に現地を訪れてみて驚いたのが、1階の「グラウンド・ビジョン」と「シアター」。
グラウンド・ビジョンは床面がスクリーンになっており、戦国ファンなら皆さんご存知「兵棋」(部隊を表す「凸」型の駒)を用いて、「関ケ原の戦い」の様子を映像で表現します。
時系列に合わせて駒を動かしながら、人気講談師の名調子で戦場の動きを解説。小早川秀秋の裏切りや島津の退き口など、今も伝わる各武将の動向を俯瞰することで、戦いの「流れ」がするすると頭に入ります。
そうして戦いの「流れ」を理解すると、お次は「シアター」へ。同館で一番人気を誇るこの施設は映画館のようなつくりになっており、関ケ原の戦いを兵棋ではなくリアルな映像で再現します。
武将たちはもちろん実写ではなくデジタル映像なのですが、風や振動、光や音の演出もあり、臨場感は抜群。あたかも合戦当日の関ケ原に迷い込んだかのような印象を受けました。
設備は最新の映画館なみ、とまでは言いませんが、都内のシネコンで流れてもおかしくないくらいの完成度で、これは絶対に見るべき!とおススメできます。
ただし一点だけ注意したいのが血飛沫などの表現。映像をモノトーン調にすることでかなりマイルドに表現されていますが、それでも合戦の様子をリアルに作り込んでいることに変わりはありません。修学旅行の訪問先に選ばれることも多いため、その際は事前に先生方を招いて確認してもらうのだそうです。
なお、グラウンド・ビジョンとシアターは2024年10月現在、事前予約の方を優先して案内するようになっています。予約は来館希望日の2ヶ月前~前日まで。団体予約は6カ月前から受け付けています。
歴史に触れる展示室や関ケ原を一望できる展望室も面白い
2階は先ほど述べた通り展示室や戦国体験コーナーとなっており、武具や古文書を間近に見学できます。面白いのは「関ヶ原山水図屏風」。神奈川県の映像作家・重田佑介さんが制作されたもので、江戸時代初期に描かれた関ケ原の戦いをピクセルアニメーション(ドット絵)で再構築しています。
遠ざかるとリアルに見えますが、近づくと粗めのドットで水の流れや武士の動きがユーモラスに表現されていることが分かります。
元々は文化庁による文化発信プロジェクト「CULTURE GATE to JAPAN」の企画として制作され、2021年2月から中部国際空港セントレアに設置。SNSでもその素晴らしい動きが投稿されて話題を呼びました。作品は2021年10月に記念館に移設され、常設展示となりました。
記念館の目玉の1つが5階の展望室。最上階から関ケ原古戦場全体が見渡せるようになっており、戦国武将たちが陣取った場所などは足元の地図で確認できます。
当時の地図と現在の風景を照らし合わせながら、
「あそこに徳川家康が陣取ったんだ……」
などと感慨にふけることもできます。家康が最初に陣取ったという「桃配山」は東海道新幹線と東海道線の間にあるからこの辺りの車窓から見えるかも……といった具合に鉄道ファンなら違う楽しみ方もできそうですね。
メニューが面白い「伊吹庵」で一服しよう
最後にご紹介したいのは、古戦場記念館の売店・レストラン。どちらも1階別館にあり、売店では岐阜県産品や戦国グッズが置かれています。
面白いのがレストラン/カフェ「伊吹庵」。メニュー名が「関ケ原合戦定食」「飛騨牛 バトルライス」「小早川の寝返り 裏切りカルボナーラ」など凝っており、だいぶ声に出して注文してみたい感が出ています。言ってみたくないですか?「裏切りカルボナーラ一丁!」とか。
カフェメニューも「徳川家康 たぬき親父パフェ」「石田三成 乱髪パフェ」「島左近 鬼アフォガード」など戦国ネタが揃い、ちゃんと戦国武将の兜をそれらしく再現しているのが特徴。仲の良いお友達同士でわいわい楽しみながらいただきましょう。
関ケ原は「鉄道」で訪れるのに向いている場所
関ケ原は鉄道旅行とも相性が良い観光地です。新幹線で「米原」、あるいは「名古屋」まで行ってしまえばあとは在来線で1本、米原からなら約20分、名古屋からなら約45分。長期休みのシーズンになると「青春18きっぷ」で在来線をずっと乗り継いで訪れる方も多いそう。
徒歩や自転車で古戦場跡を巡りやすいのも関ケ原のいいところ。先に挙げた「桃配山」などの見所が狭い範囲にまとまっているので、自動車を使わずとも簡単に史跡巡りができます。レンタサイクルは記念館でも貸し出しており(半日660円/一日1210円)、少しお高くなりますが電動アシスト付き自転車も用意されています。
とはいえ史跡を見ても何が何やら分からないし……という方にはガイドウォーキングツアーがおススメです。関ケ原町の史跡講座を2年間受講したメンバーで構成される「せきがはら史跡ガイド」と一緒に史跡を巡るツアーは、個人や家族単位なら1000円、団体なら2000円で申込が可能。所要時間はおよそ2時間。詳細や予約方法は「関ケ原観光ガイド」のホームページで案内しています。
◆関ケ原観光ガイド
https://www.sekigahara1600.com/
世界三大古戦場として今なお当時の面影を残す関ケ原。冬は雪でなかなか訪れるのも難しいこともありますが、秋、特に関ケ原合戦の9月・10月は楽しいイベントが目白押しです。「青春18きっぷ」シーズンなら関ヶ原駅でちょっと休憩し、岐阜関ケ原古戦場記念館を訪れるだけでも大きな発見があるでしょう。