保護されたビーバーは「野生に返すべき」「今は危険」 意見対立もその運命が決まる(米)
米マサチューセッツ州の「ニューハウス野生動物救助センター(Newhouse Wildlife Rescue)」で育てられている2歳のビーバー“ニビ(Nibi)”の運命がついに決まった。人慣れしたニビを野生に戻すよう命じられ、その生存が危ぶまれていたが、州知事の介入により、救助センターに留まることが許可された。英ニュースメディア『BBC』などが報じた。
【動画】野生動物救助センターで過ごすビーバーの様子。「センターに留まらせるべき」との署名運動には2万9000人以上が参加した
“ニビ(Nibi)”と名付けられたメスのビーバーは、2022年に米マサチューセッツ州にあるスターブリッジという町の道路脇で発見された。その時、わずか生後1週間で体重は450グラムほどしかなく、周囲に親の姿も見当たらなかった。
発見した通行人がニューハウス野生動物救助センターに運び込むと、専門家たちが手厚いケアを施し、その結果、ニビは元気を取り戻した。そして、センターのスタッフは野生に戻す訓練の一環として、他のビーバーに慣れさせようと試みたものの、ニビはそれを受け入れようとしなかった。「ニビがあまりにも人に慣れているため、今年4月にセンターは、野生に返すことは不可能だと決定した。
センターの設立者ジェーン・ニューハウスさん(Jane Newhouse)は、「6年間で、健康であるにもかかわらず野生に返せないと感じたのは、私にとってニビが初めてです」と語った。
しかし、9月に入ると「マサチューセッツ州漁業野生生物局(MassWildlife)」から「健康ならばニビを野生に返すべきだ」と連絡があった。センターは「野生に放つのは危険だ」反論した。その後、同局からニビを強制的に連れていくことを示唆する手紙が届いたため、センターは緊急差し止め命令を要請した。その結果、法廷審理が設定された。
この騒動はネット上で話題となり、「ニビをセンターに留まらせるべきだ」とのオンライン署名運動には2万9千人以上が参加した。さらに多くのメディアで報道されると、今月3日、マサチューセッツ州のマウラ・ヒーリー知事(Maura Healey)が介入し、ビーバーについて一般の人々に啓蒙活動を続けるための“教育用ビーバー”として、ニビがセンターに留まれるよう正式な許可証を発行した。
センターでは今後、ニビを教育用ビーバーとして学校など公共施設に連れて行くことを考えているそうで、ジェーンさんは次のように明かした。
「ビーバーの問題を抱えている町にニビを連れて行きたいと思います。ビーバーの安楽死を検討している町もあるのです。」
「ニビはみんながビーバーを好きになる手助けができます。すでに多くの人々の心をつかんでいるのですから。」
現在、センターではニビと人間との接触を減らすよう努めており、将来的には野生に戻される可能性もあるとされている。ビーバーは通常、2歳から3歳で親から離れるため、今後1年間でニビがひとり立ちすることが期待されている。「ニビのホルモンバランスが変化すれば、野生に戻りたがるようになるかもしれません。その時が来ることを私たちは願っています」とスタッフは話している。
画像は『Newhouse Wildlife Rescue Facebook「MassWildlife has officially denied Nibi as an educational beaver.」』『Governor Maura Healey Facebook「Nibi has captured the hearts of people in Massachusetts and around the country」』より
(TechinsightJapan編集部 SAKU)