「月刊総務オンライン」2年分の記事から総務のトレンドを追跡! 急上昇・急下降ワードランキング
「月刊総務オンライン」編集部では、2023年と2024年に掲載された約1800の記事から単語を抽出。本稿では、各年のデータを比較し割り出した、「急上昇ワードトップ10」と「急下降ワードワースト10」から総務のトレンドを探ってみたい。
1年で使用頻度が大きく増えたワードは?
まずは2023年と比較し、2024年に使用回数が大幅に増加したワード(関連ワードを含む)から見ていく。
図表1:急上昇ワードトップ10(かっこ内は関連ワード)
1位カスタマーハラスメント(カスハラ・ハラスメント・クレーム)2位ChatGPT(プロンプト・AI)3位災害(気象・地震)4位ダイバーシティ5位副業6位フリーランス7位BCP8位商標9位リスク10位不妊
この4月より東京都をはじめとする一部自治体では防止条例が施行された「カスタマーハラスメント」が1位となった。対策の義務化の方針で国会の審議も進んでおり、対策を公にする企業も増えてきている。今後も引き続き取り上げる機会は多くなるだろう。
法改正関連が並ぶ中、業務効率のためのツールとして企業における活用も広がっている「ChatGPT」など「AI」関連のワードが2位にランクイン。また、8位に「商標」が入ったのは、AIや仮想空間などでの知的財産に関する問題が多く取り上げられた結果だろう。
災害に関するニュースは毎年多いが、2024年は元旦の能登半島地震に始まり、8月には宮崎県で震度6弱など、大きな地震が続いた。これを受け、南海トラフ地震の想定震源域で大規模地震が発生する可能性が高まっているとして気象庁が臨時情報を発出するなど、大きなニュースが重なった。その影響からか、「災害」関連のワードが3位に入った。これに伴い、企業としての対策があらためて見直されたのか、7位に「BCP」、9位に「リスク」がランクインしている。
障害者雇用促進法や育児・介護休業法、高齢者雇用安定法などの改正のニュースが相次いだ影響か「ダイバーシティ」関連が4位に。福利厚生として、不妊治療などの補助を導入する企業も多く、10位に「不妊」が入った。2025年は「ビジネスケアラー」などのワードも増えている印象だ。
働き方の多様化の話題も事欠かず、「副業」が5位にランクイン。また、6位には「フリーランス」が続いた。2024年11月に、フリーランスと発注事業者の間の取引の適正化、フリーランスの就業環境の整備を目的としたフリーランス新法が施行された。自社が取引しているフリーランスの契約内容の見直しや、副業でフリーランスとして活動する従業員の労務管理など、総務は検討や対応に追われた1年だったことがわかる。
1年で使用頻度が大きく減ったワードは?
一方、2023年と比べ、2024年に使用回数が大幅に減ったワード(関連ワード含む)は何だろうか?
図表2:急下降ワードトワースト10(かっこ内は関連ワード)
1位デジタル(DX・デジタル人材)2位物流(トラック・荷主・荷主企業・荷役・運賃)3位コロナ(マスク・新型コロナウイルス ・新型コロナ)4位インボイス制度(インボイス)5位テレワーク(リモートワーク)6位SDGs(ESG)7位個人情報(個人データ)8位コンプライアンス9位リスキリング10位アルコール
最も少なくなったのは「デジタル」関連のワードだった。新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染対策として、半ば強制的にテレワークを導入する企業が増えたこともあり、2020年以降はデジタル化の課題などについて取り上げる機会が多かった。コロナが5類感染症に移行して以降は「コロナ」(3位)関連のニュースを扱う機会が大幅に減少。その結果、「デジタル」(1位)、「テレワーク」(5位)といったワードも大きく数を減らした。オフィス回帰の一方で、テレワークが働き方として定着したともいえる。また、DX推進とともに増えていた「リスキリング」(9位)も減少した。
2位の「物流」、4位の「インボイス」、7位「個人情報」、10位「アルコール」に関してはそれぞれ働き方改革関連法、インボイス制度、マイナ保険証、アルコールチェックの関心度が落ち着いていたことが大きいだろう。とはいえ、いまだその対応に苦慮している声も聞こえてくる。
「SDGs」(6位)関連のニュースも減少した。トランプ大統領が再選したことにより、アメリカが「ESG」投資の対策を大きく変更するとされており、今後日本の対応も変化していく可能性がある。2025年はその動向が注目される。
「コンプライアンス」が8位に入ったが、兵庫県の公益通報の問題やフジテレビの人権・コンプライアンスの問題など大きなニュースが続いており、コンプライアンス対応への関心度も高い。2025年は上昇傾向にあるのではないかと思う。
法改正や世情の影響が強い結果になったが、総務のAIなど新しい技術に対する関心度の高さも感じられる。2025年も引き続き法改正のニュースが多く取り上げられている印象だが、今後新しいワードが出てくるのか、注目していきたい。
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