開発好明の都内初となる大規模個展が東京都現代美術館で開催
清澄白河の「東京都現代美術館」では、「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」とともに、現代アーティスト・開発好明(かいはつ・よしあき)の個展「開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ」が2024年11月10日(日)まで開催されている。コミュニケーションを誘発するようなプロジェクト型の作品が多く、美術館での展示が難しい開発の、都内初となる大規模個展だ。
作家の性質上、どうしても作品単体を見せるというよりは、プロジェクトを紹介する展示が多い本展だが、『都会生活者のオアシス』と名付けられた作品でくつろぐことができるので、疲れても心配はいらない。フェイクファーでできた円形の広場のような同作は、ふかふかの感触がとても心地よい。同じ展示室では、数多くの学校で展開しているワークショップ型の作品『ドラゴンチェアー』や、その場で書いた手紙が実際に1年後に届く『未来郵便局』などを紹介している。
さらに、2011年以降の開発の活動を特徴付けるチャリティー展覧会「デイリリーアートサーカス」の活動についても取り上げられている。阪神・淡路大震災で被災した西日本から、東日本大震災と福島第一原発事故の被災地まで、義援金を集め、移動するという展覧会だ。被災地に政治家を招待する『政治家の家』や、失われゆく地域言葉を収集する『ことば図書館』など、被災地での活動から生まれた作品も、本展では紹介されている。
活動初期の資料として非常に興味深いのが、「ドクメンタ9」でのゲリラパフォーマンスの模様を伝える展示だ。ベルギーにあるゲント現代美術館の創設者、ヤン・フート(Jan Hoet)がチーフキュレーターを務め、アジア圏やアフリカ圏の作家を多く取り上げたことでも今なお語られるドクメンタ9だが、開発は参加作家でもないのに勝手に会場でパフォーマンスを行ったという。会場から排除されるだろうという本人の思惑とは異なり、最終的にはフート自身までが観に来たというから傑作である。
そのほかの展示作品としては、有名アーティストをパロディックに扱った作品群が楽しい。「R.MuTTuri」と署名されたレディメイド風の作品や、ダニエル・ビュラン(Daniel Buren)を意識したであろうストライプ柄の巨大パンツや、モンドリアンカラーの巨大ソックス――といった具合である。ルーチョ・フォンタナ(Lucio Fontana)の「切り裂き痕」を思わせる筆致と色面で「月」の字を描いた作品もある。
会期中、開発は展示会場に極力滞在し、展示会場に日々変化をもたらすという。100人のユニークな講師陣による授業を会期中100回行う「100人先生 in MOT」をはじめ、トークイベントやライブパフォーマンス、ワークショップなど、さまざまなイベントも開催されるので、それらを楽しみに訪れてみては。