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五輪メダリスト寺川綾さんに聞くコンディショニングの重要性。年齢とともに意識も変わり、身につけた疲労回復法とは?<第1回>

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五輪メダリスト寺川綾さんに聞くコンディショニングの重要性。年齢とともに意識も変わり、身につけた疲労回復法とは?<第1回>

この夏、大きな盛り上がりを見せたパリオリンピック・パラリンピック。過酷なトレーニングや五輪出場までの道のりなど、トップアスリートに注目が集まるなか、元競泳選手で五輪メダリストの寺川綾さんにインタビュー。1回目の今回は、日本競泳界を牽引した寺川さんの現役生活の様子について伺いました。想像を超えるハードな練習の日々と、たまった疲労の取り方、コンディショニングの整え方などについてお話しいただきました。

疲れているのに眠れないほどのハードな練習

—-2013年、28歳で競技生活から引退した元競泳選手の寺川綾さん。トップスイマーとして長く活躍された寺川さんは、どのような選手生活を送ってきたのでしょうか。

「ハードにトレーニングをする時期は、体は疲れ切っているのに眠れない、ということもありました。2時間しか眠れずに朝練を迎えるなんてこともあって、午後の練習までに睡眠時間を補うこともしていましたが、頭が冴えるとかメンタル的なことというより、もう全疲労、体じゅうがものすごく疲れた状態でした。練習後にお風呂に入っても腕が上がらず、髪が洗えないんです。ベッドに入っても、だれかに乗られているかと思うくらい体が重い。私の場合、消化も悪くなっていきます。

競泳は9月くらいにシーズンが終わり、春までに練習を積んで貯金をしていく時期。毎年年末年始は、生きた心地がしないような気持ちで過ごしていました。そんなにハードだったのに、いまでも入浴中に湯船にもぐりたくなることがあるんですよ。音が遮断される、あの水中の時間が好きだったんだな、と改めて気づかされました」

—-トップアスリートとして活躍を続ける裏には、そのような壮絶な日々があったのですね。競泳選手は泳ぐこと以外のトレーニングには、どのように取り組むのですか?

「陸上ではウエートトレーニングもします。つけた筋肉を水中で使える仕様に変えていく作業をするので、水泳選手の筋肉はやわらかいのが特徴です。トレーニングの内容は、専門種目の距離によって違いますね。たとえば、長距離の選手は、筋肉をつけすぎてしまうと長く泳げなくなってしまうことがあります。

でも、トレーニングで筋肉をつけてから、泳ぎの成果が出るまでにすごく時間がかかるんですね。これをやると泳ぎがよくなるというものはなくて、模索しながらの現役生活でした。経験も必要で、私の場合は現役生活の晩年にトレーニングと成果が合致していったという感じです。泳ぎと陸のトレーニングのコーチ同士が話し合ってくれて、うまく連携できていたからだと思います」

睡眠の質を高めるため、眠るまでのコンディショニングを大事に

—-年齢を重ねるにつれて、体づくりの方法や意識に変化はありましたか?

「高校生のときに初めて日本代表に選ばれ、競技からの引退は28歳でしたが、その期間でだいぶ変わりましたね。競技をする環境やサポート体制も変わっていきましたが、年齢を重ねると気をつけないといけない部分も変わるので、自分自身の意識も変化していきました。

大学生から社会人になりたてのころまではリカバリーが早かったんですが、20代後半に差し掛かってくると、それまでと同じことをしているのに疲れがなかなか取れなくて。自分で意識して変えていかないといけないなと思ったんです。

いちばん大事だと感じていたのは睡眠の質です。現役時代は練習がハードすぎて、ある程度の睡眠時間を確保しつつ、睡眠の質を高めるというのはすごく難しいんですが、眠れない状態にまでならないような練習量の調整や、マッサージのルーティンなど、眠るまでのコンディショニングを大事にしていました。

ただ、現役時代は年齢のことは考えないようにしていましたね。ヨーイドンで飛び込んだら10代も20代もいっしょ。年齢は考慮してもらえません。だから、自分で年齢への意識を取り除いていました」

広い世界でアスリートのみなさんから新たな刺激をもらう日々

—-具体的にはどのようなことに取り組まれていましたか?

「交代浴を取り入れていて、結構助けられましたね。炭酸泉とプールに交互に入って、血液の循環をよくするんです。練習が終わってから、プールをリカバリー用の水風呂として使っていました。練習で追い込んだあとの疲れの抜き方も、うまくいったのは現役の最後のほうです。大会に向けてうまくコンディションを整えられると、疲労も取れ、睡眠の質も高まっていきます。なんでも度がすぎるとだめということですね。これくらいがベストだなというのを、つかんで現役を終えられました」

—-引退後、今はスポーツキャスターとしても競技や選手の取り組みなどに触れると思いますが、どんなことを感じますか?

「私は水泳の世界で育ててもらいましたが、かなり狭い世界にいたということもあって、引退していざ外の世界に出たとき、いろいろなことが新鮮でした。今さまざまな競技のアスリートに話を聞く機会がありますが、同じアスリートでも、意識や考え方、生活のリズムがまったく違うので、おもしろいですね。日々アスリートのみなさんから、新たな刺激をもらっています」

次回はそんな寺川さんの引退後の食生活について、うかがっていきますので、お楽しみに。

寺川綾

1984年生まれ。競泳選手としてオリンピックに2度出場し、2012年ロンドンオリンピックでは100m背泳ぎと、4×100mメドレーリレーで銅メダルを獲得。競技生活からの引退後は、報道番組でスポーツキャスターとして活躍するほか、ミズノスイムチームコーチとして競泳の指導、普及にも取り組む。50mと100mの背泳ぎ日本記録保持者。

撮影/布川航太 取材・文/馬渕綾子

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