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【自閉症娘×運動会】転校・不登校・コロナ…困難を乗り越えたきっかけは「おうち運動会」!?

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【自閉症娘×運動会】転校・不登校・コロナ…困難を乗り越えたきっかけは「おうち運動会」!?

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

初めての運動会は安心スタート

姉子が小学校1年生の時。行き渋りはありましたが、そこまで深刻ではなく、私も特に心配はしていませんでした。低学年の運動会は競技もシンプルで出番も少なく、楽しそうに参加している姿を見て「よかった」と安心したことを覚えています。

しかし2年生で夫の転勤があり、運動会の時期が学校によって違ったため、この年は参加できず。

さらに3年生になった2020年はコロナ禍で運動会自体が中止。母子分離不安もあり、姉子は不登校気味になっていました。この年、転勤・コロナ・不登校と大変なことが重なり、楽天家の私でも正直ちょっと心が折れかけました。

家で作ったもう一つの「運動会」

そんな中で迎えた2021年。世の中はまだコロナ真っ最中で、運動会もまた中止に。姉子の弟にとっては初めての運動会になるはずの年だったので、私は思いつきました。「じゃあ、家で運動会やっちゃおう!」と。

模造紙に「スパ山家大運動会」と書いた横断幕をつくり、100円ショップで飾りつけを揃え、ネットで万国旗まで購入(笑)。こういうのは雰囲気が大事!と思い、お揃いのはちまきもつくって、家族でプログラムを考えました。そして、小学校にお願いして毎年運動会で踊るダンスのDVDとCDを借り、当日は本番さながらにお弁当を準備して、家の中にポップアップテントを張り、家族全員ノリノリで、大いに盛り上がりました。

姉子にとっては「小1以来の運動会」だったこともあり、久しぶりに雰囲気を味わえたのが楽しかったようです。結果的にこの経験が、後の学校での運動会に参加する際、「あ、あのとき家でやったのと似てる!」「このダンス知ってる!」と見通しを持つきっかけにもなりました。

裏方デビュー⁉姉子なりの参加の形

そして姉子は5年生に。ついに学校での運動会が再開されました。ただ姉子はダンス練習も徒競走のタイム計測も参加できず、当日欠席の可能性大。私は「無理はしなくていいかな〜」と思っていましたが、本人に少しだけ参加の気持ちが芽生えたので、担任の先生と姉子と私の3人で一緒に相談。その結果、「BGMをかける」「ゴールテープを持つ」という裏方での参加に決まりました。

当日、姉子は先生のサポートで私から離れ、児童席へ。私も近くで見ていました。そして競技が始まると……もう真剣そのもの。音楽をかけるタイミングを見計らう姿は、もはやDJ。ゴールテープを落とさないよう両手をピンと張る姿は、まるで職人(笑)。その一生懸命さにこちらも胸が熱くなりました。

閉会式後、「運動会、楽しかった」とニコニコ話す姉子を見て、私も先生もウルウル。表舞台じゃなくても「その子なりに行事を楽しむ方法」があると実感しました。

みんなで後押し!運動会本番へ

そして6年生。登校のペースは相変わらずでしたが、なんと運動会ダンスの練習に参加するように!徒競走のタイム計測の日に登校して計測に挑戦し、担任・交流学級の先生・私も「これはひょっとして本番いけるかも?」と驚きと期待でいっぱいに。みんなで姉子の気持ちを後押しするべくサポートしながら運動会を迎えました。

本番当日。姉子は衣装を身につけ、大勢の輪の中で堂々とダンスを踊り切りました。そして迎えた徒競走。スタートの合図とともに、姉子が勢いよく走り出し……なんと、なんと、1位!観客席で「え⁉ほんとに⁉」と叫ぶ私、固まる夫、涙をぬぐう担任の先生。

当の姉子は何が起こったのか分かっていない様子でしたが、閉会式後、やっと姉子のもとへ会いに行けた時に「全部できたよぉ……1位になったよぉ……」と泣きじゃくっていました。私はただ「よかったね、よかったね、頑張ったね」と言ってぎゅっと抱きしめました。あの瞬間、これまでの不安や苦労が一気に報われた気がしました。

頑張りのカタチはいろいろ

裏方として参加できた日も、表舞台で力を発揮できた日も、すべてが姉子の「運動会の歴史」。そしてその一つひとつを支えてくださった先生方や、家族で一緒に乗り越えた時間に、感謝の気持ちでいっぱいです。

執筆/スパ山

(監修:鈴木先生より)
一般的にASD(自閉スペクトラム症)にDCD(発達性協調運動症)が併存しているお子さんは、運動会やその練習が苦手なことは多くあります。過敏さから運動会のマイクや音楽の音が苦手な傾向があり、運動会をきっかけに不登校になるお子さんもみられます。
今回のようにスパ山家で行ったもう一つの運動会は小規模で家族的な雰囲気の中で予習が行われており、自分の役割を達成したことで姉子さんの自信につながったのでしょう。一つひとつの成功体験が実を結んだものと考えられます。運動会以外の行事にも応用が利くものと思われます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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