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フレッシュゴッド・アポカリプス無料公演をファントム・エクスカリバーMatsuが振り返る! 2023.10.27@初台DOORS 東京

YOUNG

昨年10月、通算5度目の来日を果たしたイタリアのクラシカルでブルータルなエクストリーム・メタラー:フレッシュゴッド・アポカリプス。ところが、当初は東名阪を廻る予定だったそのジャパン・ツアーは、来日ビザのトラブルにより、名古屋&大阪公演が中止を余儀なくされる。本来なら東京公演も同じく中止となるところ、バンド側のたっての希望により、完全無報酬のフリー・ライヴとして開催された。つまり、ビザの問題から通常の興行としては行なえないが、ボランティア公演という形であれば可能だったということ。10月13日のインドはバンガロール公演を皮切りに、UAEのドバイ、タイのバンコク、中国の北京&上海、そして台湾の台北、香港、韓国のソウル…と約2週間にわたるアジア・ツアーを実施してきた彼等としては、ノー・ギャラでも何でもとにかく日本で最後を締め括りたかったのだろう。

結果、会場の初台DOORSは超満員! 詰め掛けた全員を受け入れることはとても不可能で、入場出来なかった人数もそれなりだったようだ。当然ライヴは大いに白熱し、70分強のフル・ショウの中では日本のファンのためだけのサプライズも飛び出し、オーディエンスの終始熱狂的な反応にバンドも大満足だったに違いない。そんなスシ詰めの会場には、ファントム・エクスカリバーのギタリスト:Matsuの姿も。そこで今回、フレッシュゴッドの大ファンだという彼がライヴ・レポートを買って出てくれた…!!

「重低音が半端なかった!!」

Matsu(Pic: Litchi)

こんにちは、ファントム・エクスカリバーのMatsuです!

先日、僕は初台DOORSで“フレゴ”ことフレッシュゴッド・アポカリプスのライヴを観てきました!

ファンを自称する僕ですが、実はちゃんと聴き込むようになったのはここ数年といったところ…。それ以前から知ってはいて少し聴いてもいたのですが、あまり深くはなかったんです。

のめり込んだキッカケは、近しい知人がずっと大ファンで、改めてオススメしてもらったことでした。そこで、2016年リリースの『KING』をじっくり聴き込んでみることに。ジャケットが印象的なアルバムで、リリース当時周りでも話題になっていたという印象があります。

改めての印象は──とにかくカオティック、そしてメロディアス、あとあのスピード…! 実際、こんなの弾けるのか…と(笑)。そこからハマって、他のアルバムも一気にさらいましたね!!

実を言うと、元々あの手のエクストリーム系はそんなに得意じゃなかったんです。カオティックで、現実離れしたフレーズとかが苦手で…(苦笑)。でもフレゴの場合はクラシカルなエッセンスを盛り込みつつもキャッチーさもあって、そこが非常に心地好く、一気に引き込まれました。ストレスが溜まった時に聴くと“解放”されるんですよね!!

それで今回、来日発表からすぐにチケットを確保しました! 彼等のライヴを観るのは初めてです。これまでに何度も来日していたことも知っていましたが、まさかもう5回目だったとは! 

来日前には、過去のライヴ動画なんかもチェックしました。すると、ドイツの“Wacken Open Air”に出ていたことがあって──何と、2014年に“Headbangers”ステージに出ていた…と!! そう、ファントム・エクスカリバーも昨年(2023年)、同じステージで演奏したんですよ! 僕等の時はオープン・エアーで、フレゴが出た時はテント内だったという違いはあるものの、まさか同じステージだったとは…と、いっそう感慨深くなりましたね!!(笑)

しかし今回、ビザの問題が発生したとかで、これは結構ガチで残念でした。ずっと楽しみにしていたのでどうなることか…とプロモーターからの発表を待っていたら、東京公演のみ無料ライヴとして行なわれることに! ちょっと複雑な思いもあったけど──コロナ明けの外タレ来日ラッシュの中、チケットを買って楽しみにしていたファンの気持ちを考えると、フレゴの“漢”気に感謝です!! その思いが身に沁みましたね! そして、勉強にもなりました!!

当日の会場では、フロアの真ん中より少し前の上手側に陣取りました。場内は正にスシ詰めの超満員でしたが、なかなか良い位置でしたね!

ところが、いざライヴが始まると「何か足りなくね?」と。そう、ベーシストがいなかったんです。聞いてないよ〜!(苦笑) MCなどでは触れてませんでしたが、どうやらパオロ・ロッシはちょっと前から家族との時間を優先して、ツアーには参加していなかったようですね(※その後、今年2月に脱退)。 そこで、フロントマンでヴォーカルとギターを務めるフランチェスコ・パオリが、代わりにベースを弾きながら歌っていました。まさか、ベース/ヴォーカルをやるとは思わなかったっす! 元々ドラマーだったりして、彼が超マルチ・プレイヤーなのは知ってましたが。

ただ、観ていて全く違和感なかったです。それどころか圧倒されました。彼等にとっても、言わば“フォーメーションB”みたいな感じなのでしょう(笑)。僕もそこは深く考えず、ひたすらあの凄まじい音数を浴びてましたね! ギター1本でも音源を完全再現していて、その上で熱いライヴ感もあって「こんなアーティストは初めて!」という感じでした!!

いつも僕は、普通に研究者目線でライヴを観ています。しっかりと聴き耳を立てて、お客さんの反応だったり、あわよくばサウンド・エンジニアを見たりとかも。勿論、拳は上げますけどね!!

Francesco Paoli(vo b)

専任ギターのファビオ・バルトレッティも巧い! 完璧過ぎて「音源かよ!」って感じでした(笑)。ギター1本でも、全く遜色なし。むしろ2本だと「どうなるんだ?」と(笑)。それに加えて、左右に動き回ったり風車ヘドバンしたり…で、本当に凄過ぎますわ。彼が弾いていたRufini Guitarsのモデルもカッコ良過ぎた! イタリアのメーカーらしいけど、初耳です。“FGA CT1”は彼のカスタム・モデルなんですね。なかなか特徴的なフォルムも良き! ベースもそうでしたが、デザインが本当にカッコ良いんですよ。6弦なのも“TRUE”!!

Fabio Bartoletti(g)

ギターの音作りについてもとても気になるところでしたが、CDを完璧に再現するどころではなく音の抜けも抜群でした。バッキングでは重低音を鳴らしつつ、アレだけの音数の中、聴かすところは聴かせて泣くところは泣かせて、完璧なフレージングとそれを支える音──そのすべてが凄かった…としか言いようがない!!

他のメンバーも本当に凄い! ドラムのユージン・リャブチェンコなんて、もはや“人格を持ってしまったドラム・ロボ”みたいな感じで最強だったし、鍵盤奏者のフランチェスコ・フェリーニは、埋もれがちなピアノの音も前面に出ててこれまた凄かった! スキンヘッドということもありキャラが立ってて、そこも良いですよね!

あと、ソプラノ・シンガーのヴェロニカ・ボルダッチーニもめちゃくちゃ巧かった!! 僕個人的には、原曲の男声ハイ・トーンの方が好きなんですけど…(苦笑)。

Eugene Ryabchenko (dr)

Francesco Ferrini(p)

Veronica Bordacchini(soprano)

セットリストも大満足です! 個人的には「The Fool」(『KING』収録)をやってくれたのがとても嬉しかった!! 2020年のシングル曲「No」は日本初披露で、めっちゃ沸いてましたね! もはや音源よりも、重低音が半端なかったです! 「やっぱライヴだな!」と思いました!!

そして、ヴェロニカさんが歌った「残酷な天使のテーゼ」!! あれには驚きました! お客さんの反応も凄かったし──みんな一緒に歌っていましたね!──日本文化に溶け込もうとするアーティストはリスペクトです!!

大きな、大きな衝撃を受けたライヴでした! 実は、開演前の雰囲気作りからもう凄かった。BGMとしてクラシックの名曲が次々とかかって、あの世界観の出し方はマジで最高です! 会場がイタリアになってましたね!! ああいうクラシック要素があるから、好きになった感もありますね! あれくらいあからさまな方が僕は好きです! しかも、転換中に音も一切出さず! その場の空気がフレゴを待ち侘びるような雰囲気になっていくのを感じ、それで楽しさ倍増でした!!

いざショウが始まると、チームとして動いているからか、音響、照明、舞台…と、そのすべてが最強だったんです!

日本のバンドの多くはそういうところを疎かにしている…といったイメージもあるので、僕達としても見習いたいです。普通に予算の問題もあるでしょうけど…。

演奏面については、もはや感想にすらならない。アレだけのフレーズを正確に弾きながらも、あの激しいステージング! マジで半端なかったです。もう、元が違うのかと…(苦笑)。カオティックなバンドだと再現性に欠けることが多い中、ここまで再現性高く、尚かつライヴの熱さが伝わってきて本当に勉強になりました! 驚いたことだらけですね!!

フレッシュゴッド・アポカリプス──4年振り、5回目の来日。あの衝撃を体感出来たのは、自分にとってかけがえのない経験となりました。バンドにも、プロモーターにも感謝しかないです! 一方で、会場のキャパがもっともっとデカくなったらイイな…とも思いました。フレゴの人気が今後さらに、日本のメタル・リスナー、そしてバンドマンにも、広がっていくと良いのですが…!!

フレッシュゴッド・アポカリプス セットリスト 2023.10.27 @初台DOORS 東京

1. Intro(SE)〜Fury
2. Healing Through War
3. SE〜Sugar
4. Minotaur (The Wrath Of Poseidon)
5. SE〜No
6. The Praying Mantis’ Strategy(SE)
7. Monnalisa
8. The Deceit:Outro(SE)
8. The Violation
9. Prologue(SE)
10. Epilogue
11. 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
12. The Fool
13. The Egoism(SE)
14. The Forsaking
15. Outro:Dies Irae@Verdi(SE)

OPENING ACTS

当日は、シンフォニック/メロディック・ブラックの日本代表としてエセリアル・シン、韓国代表としてDARK MIRROR OV TRAGEDYがオープニング・アクトを務めた。

「純粋に韓国のブラック・メタルをライヴで観るのは初めてだったので新鮮でした。楽曲も長くストーリー性のあるライヴで、観応えありましたね!!」(Matsu)

「エセリアル・シンを観るのは久々で、2014年ぐらい以来だったかな? 以前のメロデス強めからブラック要素が増したかな…という印象で、日本のブラック・メタル魂は流石だと思いました!!」(Matsu)

(レポート●Matsu(PHANTOM EXCALIVER) 撮影&前文●奥村裕司 Yuzi Okumura)

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