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「できる」を信じ合う…ダウン症の女性がファッションショーモデルに 挑戦続け自分の可能性を広げる姿に密着

Sitakke

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「障害があること」を理由に、諦めない。

ファッションを学ぶ学生たちとつくるショーでモデルに挑戦する、あるダウン症の女性に密着しました。

元パリコレモデル・髙木真理子さんによるウォーキングレッスン。

「自分で考えてやるの、人に頼らない、みんな動き違うでしょ」

指導の声が飛びます。

指導を受けるのは、知的障害などがある生徒たちです。

その中の1人、小野寺郁音(あやね)さん、28歳。

郁音さんは生まれてすぐ、ダウン症と診断されました。

この日から5日後に、専門学校生とつくるショーに参加します。

ファッションショーの総合監督で、北海道ファッション専門学校2年生の畠山芽依さん。

「郁音ちゃんに合いそうな黄色とピンクでかわいらしい感じがメイン」と衣装について教えてくれました。

今回のショーは、“環境破壊”や“人権”などがテーマ。

郁音さんたちが歩くパートの衣装は、自然由来の素材にこだわりました。

郁音さんたちの存在は、学生の考え方も変えています。

「その人に合った関わり方やしゃべり方、こうしたらいいっていうのをショーで見つけた」と話す学生や、

「ヒールの使い方やターンとかも見せ方のプロ意識がある人」と郁音さんと関わることで気づいた学生も。

できることが増えていく…両親が見つめた成長

郁音さんは、両親と3人暮らしです。

父の収さん(65)は、郁音さんのこれまでについてこう話します。

「少しずつ周りのお子さんと違いが見えてくる場面では戸惑いは多少あったけど、それより郁音は郁音なりにできることが少しずつ増えていく」

小学校は地元の通常学級に通い、中学は地下鉄通学。

高校は、特別支援学校で寮生活。

挑戦を続け、可能性を広げてきました。

しかし、特別支援学校卒業後は、進路の選択肢が少ないのが現状です。

郁音さんも、卒業後は、生活訓練など「学び」を中心とした自立訓練事業所に3年。

そのあとは、ものづくりや合同作業など仕事のプログラムを経験できる「生活介護事業所」に通っています。

母の訓江さん(63)は「人として人生を楽しむために生きていってほしい」と願い、娘の挑戦の場を広げたいと考えていました。

「できないことが1つでもクリアできて、1つでも自分でできることが増えていったりしてほしい」

そして、5年前にすすめたのがウォーキングのレッスンでした。


「できる」可能性を信じる

郁音さん(28)もこうしたレッスンを通して「仲間とのコミュニケーションがとれるのが楽しい」と話します。

この日は、学校で行われる最後のリハーサル。

少しよろける場面もありましたが、学生たちが手をとってくれて無事に終了。

着替えが終わってからも、学生たちのウォーキングを真剣に見つめます。

学生たちには、衣装の直しなど厳しい指導が入ります。

この翌日。

なかなか歩調が合わない、郁音さん。

元パリコレモデルの髙木真理子先生が腕をとり、指導が入ります。

「ちゃんと前向いてね…にっこり!」

「障害があること」を理由に、諦めたりしないのが、先生のモットー。

「『障害があるからできないでしょ』ってこちら側が思って、教えるってなるとたぶん伝わる。『自分たちが期待されている』って思うと人って頑張る。『誰かのために役に立ちたい』って思うから」

厳しく見えるウォーキングの指導は、「できないことがある」という障害による制限を前提とするのではなく、「目標」に向かい、きっと“できる”ことを前提としてすすめていくから。

実は、障害をもつ生徒の保護者のなかには、「この子は〇〇ができない、〇〇もできない」とできないことを先に説明をすることもあるのだそう。

保護者が子どもを守りすぎて、子どもの「できる」可能性を、狭めてしまっているのではないか…。

先生はそんな風に感じ、手や声をかけすぎてしまう保護者に指摘することもあります。

また、ウォーキングレッスンは、歩くことだけではなく、身だしなみを整えたり挨拶をしっかりしたりすることにもつながります。

レッスンを通して、障害がある人たちが、社会でより活躍できる存在になってほしい、というねらいもあるといいます。

「できない」と思っていることが「できる」ようになる。

そんな姿を見てきた先生は、「1%でもできる可能性があるなら、信じる」。

だから、真剣に郁音さんたちに向き合います。


まっすぐ前を見て…ランウェイへ

ファッションショー当日、会場は満席です。

先生の激励を胸に、郁音さんもいざ、ステージへ。

一歩一歩、落ち着いて堂々としたウォーキング。

しっかりと前を向いて、ステージでスポットライトを浴びます。

郁音さんたちが登場するオープニングパートは、無事に成功。

ショーは大盛況に終わりました。

母・訓江さん(63)は「なんとか練習した成果が出てたと思う」

父・収さん(65)は「落ち着いていてばっちりですね」とうれしそうです。

郁音さん(28)は「練習したポージングが、お客さんに披露できて、とてもよかったなって思っています」と話してくれました。

「できる」可能性を、信じあう。

そんなつながりが、郁音さんのこれからの挑戦を広げていきます。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年2月14日)の情報に基づきます。

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