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「特別支援学校一択」年長5月から始めた就学準備。喜び、モヤモヤ、わずかな寂しさも

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「特別支援学校一択」年長5月から始めた就学準備。喜び、モヤモヤ、わずかな寂しさも

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

特別支援学校一択だった わが家の進路選択

発達障害と一口に言っても、子どもによって特性や困りごとはさまざまです。そのため、通常学級・特別支援学級・特別支援学校のどれを選ぶか悩む方も多いでしょう。しかし、わが家の場合は、悩む余地はなく特別支援学校一択でした。

息子は1歳半から療育に通い、知的障害(知的発達症)を伴う典型的なASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。地方の田舎に住んでいることもあり、療育園などもなく、福祉サービスは最低限。専門的な知識を得るのも難しく、育児は手探り状態。

幼少期は本当に大変で、「この子が安心して通える場所はどこか?」と考えたとき、特別支援学校以外の選択肢は思い浮かびませんでした。そのため、周囲が〝ラン活〟を始める頃も、「ランドセルは必要ない」と、特に動くこともなく過ごしていました。

ぼーっとしすぎていた就学準備

年長になった2023年5月。「特別支援学校に入学するにはどうしたらいいんだろう?」と、ふと疑問に思い、児童発達支援の先生に相談しました。

「一度、特別支援学校を見学してみては?」と言われ、すぐに連絡。5月末、息子と二人で特別支援学校を訪れました。就学相談も行ってくれるということで、これまでの生育歴を簡単にまとめたものを用意していきました。

特別支援学校に到着し、玄関に入り、先生の表情を見た瞬間に安心感を覚えました。息子もそれを感じたのか、警戒心が強いはずなのにすんなり校舎へ。私がコーディネーターの先生と話している間も、ほかの先生と落ち着いて過ごせていました。

校内を歩いているときに、走り出した息子が校長室に入ってしまったとき、笑いながら校長先生が、「もう明日からおいで!」と声をかけてくれました。息子のことで毎日のように「すみません、すみません」と頭を下げてばかりだった私にはまるで天国のようで、「ここしかない」と確信しました。

就学相談で感じたモヤモヤ

10月、教育委員会との第1回目の就学相談がありました。「お住まいの学区の小学校は見学しましたか?」と聞かれ、「していません」と答えながら、頭の中では特別支援学校以外の選択肢がないのに、なぜそんな質問を?と疑問に思いました。

どうやら町立小学校と都道府県立特別支援学校で教育委員会が異なるため、慎重に審議する必要があるとのこと。わが子のような重度の場合は、町(園や役所、町の教育委員会の間)で事前に情報共有が行われる仕組みがあると効率的だし、お互いにとって良いのではないか?と少し腑に落ちない気持ちが残りました。

さらに、就学時健診についても尋ねると、「特に配慮はないが、皆受けるので行ってほしい」とのこと。そして迎えた10月中旬の就学時健診当日。息子は案の定、検査など受けられずに逃げ回り、会場内を走り回って、ほかの人の検査を中断させる場面も。謝り続けた私に、係の人が冷たく「あの、別に受けなくても大丈夫なので。気になることがあれば個人で受診してください」と一言。

「あ、……はい、ソウデスネ」と答え、「いっちゃん、ごめんね!最初から来なきゃよかったね!」と息子に声をかけ、周囲がシーンとなるなか、会場を後にしました。毎年、こんなことが全国で行われているとしたら、大問題だと思いました(ちなみに、その後は少しずつ配慮されるようになったそうです)。

入学に向けた準備と、胸に残るわずかな寂しさ

10月末からドライブのコースに特別支援学校を追加しました。「ここに通うんだよー」と息子に伝えながら。

12月、教育委員会との第2回目の就学相談。「前回の相談から2か月ほどですが、やはりまだ癇癪などは大変ですか?」とニコニコしながら聞かれました。たった2か月で何かがいい方向に変わる育児じゃないんですよ……「何日も寝ていない極限の精神状態で、夜中に泣き叫ぶ子どもを叩いてしまうのではないかと不安を感じない…わけないじゃないですか?」私が今ここでそう問い返したら、場が凍りついてしまうだろうな……そんなことを考えながら、形式的な質問に答え、6分で終了。正直、電話でもよかった内容でした。

2024年2月、特別支援学校への入学が正式に決定しました。3月の特別支援学校のガイダンスでは、書類に「保護者の希望」「本人の希望(代弁)」の欄があり、この配慮がほしかったんだ、と感動しました。

そして迎えた4月。入学式。 初めての給食と、学校からの放課後等デイサービス。その帰り道、地域の新一年生たちは給食なしで集団下校。歩道にお母さんたちが出てきて、わが子を待つ光景に、少し胸が苦しくなりました。もし息子に障害がなかったら、あの子たちと一緒に歩いて帰ってきていたかもしれない。「まだこんな悔しい気持ちがあったんだ。私もまだ、受容の途中なんだな」そう思い、涙が止まらなかったのを覚えています。

特別支援学校に入学して1年が経ち、学校や放課後等デイサービスの先生たちのおかげで息子はできることがたくさん増えました。いま家の外の世界で頑張れているのは、児童発達支援の先生たちに支えられ、保育園では本当にたくさんの配慮をしてもらい、愛されて過ごしてこれたからだと思っています。

あっという間の1年生。2年生ではどんな成長を見せてくれるのか、楽しみです。私も、息子とともに成長していきたいと思います。

執筆/かさはらあやこ

(監修:初川先生)
息子くん(いっちゃん)の特別支援学校への就学にまつわるエピソードをありがとうございます。日々の子育てで大変な中、小学校どうするかを検討し、そのために手続きや面談などがあり、お子さんにとって良い環境を検討するためには必要なこととはいえ、ますます保護者の方には負担が増す時期でもあるんだなと改めて感じました。

さて、エピソードの中にもありましたが、特別支援学校は管轄が都道府県であることが多く、小学校(通常学級、通級指導教室/特別支援教室、特別支援学級)の管轄は区市町村です。そのため、多くの自治体では、まずは区市町村の就学相談に問い合わせをしていただき、特別支援学校を希望される旨お伝えいただくとスムーズかもしれません。基本的には、お住まいの学区の小学校にて就学時健診を全員受ける流れを設定されているため、かさはらさんの場合にも就学時健診を受けるように促されたのだろうと思います。就学時健診を受けることが難しいかもしれないことも区市町村の就学相談担当にお伝えいただくとそこも調整可能な場合が多いように感じます。かさはらさんの場合のようにこうした情報がなかなか届きづらいこともあるかもしれません。今後お子さんの就学について、通級指導教室の利用、特別支援学級や特別支援学校在籍を検討されている場合は、「年長の4月から9月ごろまでに」、お住まいの市区町村の就学相談にお問い合わせください。

さて、息子くんは特別支援学校に入学して、放課後等デイサービスも活用しながらめきめきと成長しているとのこと、何よりです。保育園時代や児童発達支援も利用され、未就学時代から息子くんにとって良き環境や良き関わりが提供されるように動かれてきたことも脈々と活きてきているようですね。地域のほかのお子さんを見て心がざわつくときがあったり、時として子育てが苦しくなったりする時もあるかもしれません。ですが、息子くんの着実な成長を見て、そしてそれを共に喜べる先生方や支援者の方とともに、これからも「どんな成長を見せてくれるのか、楽しみ」と明るい展望を持ちながら日々お過ごしされることを、遠くから応援し祈っています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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