<遺産放棄する?しない?>突然届いた母の訃報……差出人「遺産放棄して」⇒失礼すぎる!【まんが】
私(カズエ)は49歳。ある日、知らない名前の差出人から一通の手紙が届きました。手紙には、私の母が亡くなったこと、そして遺産を放棄してほしいと書かれていました。差出人はどうやら私の異父きょうだいのようです。私が7歳のときに家を出ていった母が新たな家庭を築いていたことに、正直ショックを受けました。ただそれ以外に、衝撃的な事実がもうひとつあったのです……。
幼いながら両親の仲があまりよくないことは感じていました。ただ、華やかでキレイな母は私の自慢で、誰よりも大好きな存在であり、当然母もそうだと思っていました。しかし、ある日学校から帰ってきたときに目にしたのは、家から出ていく母の姿。その母が、私を置いて出ていったあとに再婚し、新たな家庭を築いていたことにもショックを受けました。
いきなり遺産の放棄の話をするなんて、なんて失礼な人だろうと感じました。とはいえ、先方も遺産の手続きのなかでいきなり私の存在が現れて、戸惑っているのでしょう。手紙の目的を誤魔化してもしょうがないのかもしれません。
母について詳細を聞くため、後日、手紙の差出人であるナオフミさんと会うことにしました。当日、約束の場所に行ってみると、ナオフミさんの弟のタカフミさんも一緒のようです。
あいさつもそこそこに、本題に入ります。ふたりは母のこれまでについて話し始めました。
ナオフミさんとタカフミさんから、母のことを詳しく聞くことができました。……話を聞く限り、母は幸せな人生を送ったようです。複雑な気分でした。父や私が傷つき、必死に母のことを思い出さないようにしていたとき、母は笑顔で暮らしていたのかもしれません。
「……あれ?」とふと気になりました。ナオフミさんの年齢を聞いたところ、41歳だと言うのですが……どう考えてもおかしいのです。
私の頭のなかがフル回転し始めます。年齢差はおよそ7歳強……。母は出ていったあと、すぐにナオフミさんを妊娠したことになります。しかも、先ほど恋愛期間は3年と言っていました。母は不倫をしていたのです! その事実に気がついたとき、自分のなかで怒りが膨れ上がってくるのを感じました。大好きだった母の姿は崩れ去り、目の前には不倫の果てに生まれた弟たちがいます。しかも幸せに暮らしたうえに、遺産を放棄しろだなんて! 母もその家族も、私に対してあまりにも身勝手で失礼すぎると感じました。
計算が合わない!母の不倫を知り……決意「遺産いただきます」
ナオフミさんのお父さんの顔を見て驚きました。母が出ていったとき、そばにいた男性の顔だったのです。なぜか忘れられなかったあの男性の顔。さっきまで母が不倫していたことさえ知らなかった私でしたが、子どもながら当時も何かを感じていたのかもしれません。
「遺産放棄はなかったことにしてください」と伝えると、ふたりは顔を見合わせて、困惑した表情になりました。まさか断られるとは思っていなかったのでしょう。でも事実を知ってしまった今、いきなり現れた異父きょうだいに遺産放棄しろと言われて「はい、わかりました」なんて言えるはずがありません。
遺産は、現金はそこまで多くないようですが実家が残っているとのこと。平等に分けてもらうため、実家を整理してもらうよう伝えました。すると……。
「人でなし」。この一言で私の堪忍袋の緒が切れました。母は幼い自分の子どもより、好きな人を選んだのです。そして、幸せな家庭を築いていたなんて、私には到底許せることではありません。激昂したくなる気持ちを抑えつつ、ふたりに事実を伝えようと思います。
この年齢になって、父と母が別れた原因を知ることになるとは思いませんでした。もしかしたら原因はそれだけではないのかもしれませんが、ふたりとも亡くなっている今となっては、真実が何なのか知る術はありません。私のなかにある事実は、母が別の人と家庭を築くために私を置いて出ていったということだけです。弟にあたる人たちには申し訳ありませんが、今回の遺産は、私にそんな仕打ちをした人からの「慰謝料」だと思っています。
父の気持ちを思いナミダ……遺産は母からの「慰謝料」として!
まだ7歳だった私を置いて、父ではない見知らぬ男に寄り添い家を出ていった母の姿。できることなら思い出したくないですが、生涯忘れられない光景なのです。目の前のふたりに罪はないとわかっていながらも、その悲しさ、やるせなさを伝えずにはいられませんでした。
母が亡くなったからといって、私が母にされたことが帳消しになるわけではありません。相続を放棄するのは、今の自分も、子どものころの自分も望んでいないと思ったのです。異父きょうだいたちには「遺産は放棄しません」とあらためて伝えました。
怒り、悲しみ、虚しさ……お店を出たとき、さまざまなマイナスの感情が心のなかで渦巻いていました。怒りの感情のせいか、帰り道では不思議と涙は出てきませんでした。しかし家に着き、父の写真を見た瞬間、急に堰を切ったように涙があふれ出てきたのです。
それからしばらくして、ナオフミさんたちの弁護士から連絡がありました。意外なことに減額などの交渉もなく、法定相続分相当の金額で遺産をもらうこととなりました。両親が不倫の末に結ばれていたことはナオフミさんたちには関係のないことなので、正直災難だったかもしれません。しかし、彼らの両親は違います。父と私を深く傷つけておきながら、のうのうと幸せに暮らしていたのです。これは遺産ではなく、父と私の人生に対する母たちからの「慰謝料」だと思って受け取ることにしました。私が母を許すことはないでしょう。それよりも、寂しい思いをさせないよう、愛情をたっぷり注いでくれた父との思い出の日々を大切にしていきたいと思います。