猫の生存に関わる4つの大切な『栄養素』それぞれの働きや上手な摂取方法も
1.たんぱく質
たんぱく質は、20種類のアミノ酸の構成によってできています。このアミノ酸のうち、猫が体内で合成できるのは半分ほど。残りのアミノ酸は「必須アミノ酸」と呼ばれ、食べる物からバランスよく摂取しなければなりません。
完全な肉食動物である猫にとって、肉や魚のたんぱく質はエネルギー源となる重要な栄養素です。
たんぱく質は、組織の成長や修復を助け、代謝や免疫に関わるなど、実に様々な働きをしています。不足すると、病気にかかりやすくなったり、ケガが治りにくい他、成長不良や貧血、皮膚や被毛のトラブルなどが起こりやすくなるのです。
たんぱく質の必要量は、年齢や猫種によっても異なりますが、犬よりも多く必要とされています。
猫の総合栄養食は、栄養バランスを考えて作られていますが、安価なキャットフードの中にはたんぱく質が十分でないものも。それは、原材料に穀物の割合が高いものが多いからです。
健康な成猫であれば、キャットフードに占めるたんぱく質の割合は30~40%ほどが良いとされています。
しかしだからといって、たんぱく質を過剰に摂取すると、腎臓に負担をかけてしまう恐れもあります。たんぱく質の量と質に配慮することが大切です。
また、適切なたんぱく質の摂取量は猫によって個体差もあるため、愛猫の全身状態を健康診断などで把握したうえで、かかりつけの先生と相談しながら、その年齢や状態に応じてフードの質を変えると良いでしょう。
2.脂質
摂り過ぎると肥満をもたらしてしまうため敬遠されがちな脂質ですが、優れたエネルギー源でもあり、大切な栄養素のひとつです。少量でも効率よくエネルギーを摂取することができるので、成長期や妊娠・授乳期の猫には特に必要な栄養素といわれています。
脂質は、免疫機能を調節したり、皮膚や被毛の健康を保ったりする働きの他、脂溶性ビタミンの吸収を助けたり、必須脂肪酸の供給をしたり、という重要な働きを担っています。
必須脂肪酸は、体内で合成できないため、食事で補わなければなりません。健康な成猫なら、脂質はキャットフードの10~30%程度が良いとされています。
ただし、消化器の状態によっては適切とされる量でも脂質の摂取量によって負担をかけてしまう場合もあります。
愛猫の適切な量はどの程度なのか、場合によっては低脂質のフードを与える必要があります。
3.ビタミン
猫の健康を維持するためにビタミンは欠かせません。猫が食べる物から摂取する必要があるビタミンにはビタミンA・ビタミンB群・ビタミンD・ビタミンEなどがあります。
ビタミンAは、視力や皮膚・被毛の健康を保つために必要不可欠。ビタミンB群やビタミンD・Eもそれぞれ神経系の健康維持、骨や歯を育てる、細胞の老化を防ぐなどの役割を担っている重要なものです。ビタミンが不足すると、欠乏症を引き起こしてしまう恐れがあります。
総合栄養食のキャットフードには、ビタミン類もバランスよく含まれていますが、偏食があったり小食な猫には猫用のサプリメントで補うということも可能です。
4.ミネラル
ミネラルは、骨や歯の構成成分であり、筋肉や神経の機能の調整、体温や血圧の調節、神経伝達などの重要な役割を担う重要な栄養素です。
キャットフードの多くにはミネラルが添加されていますが、安価なものの中には吸収率の悪いミネラルが使用されている可能性もあるため、知らず知らずのうちにミネラル不足になっているかもしれません。
質の良いキャットフードを選ぶと同時に、不足する場合はミネラルもサプリメントで補うことができます。
ただし、サプリメントの過剰摂取は、体調不良の原因にもなります。特に、カルシウムやマグネシウムの摂り過ぎやバランスの偏りは、腎臓病や泌尿器系の疾患のリスクを高めてしまうため、注意が必要です。
まとめ
猫には肉食動物ならではの、必要な栄養素があります。室内で飼われている猫にとって、食事は飼い主さんが与えてくれるものがすべてです。
猫の健康を守り、元気で長生きしてもらうためにも、その猫に合ったフードを選び、適切な量を与えましょう。
また、療法食となるキャットフードは治療の一環として与えるべきものです。
自己判断ではなく、かかりつけの先生の処方、または全身状態を把握した上での相談の元、与える検討をしていただくことをおすすめします。
キャットフードのパッケージには、栄養素の含有量が記載されています。それを参考に、愛猫に合ったフードを選んでみて下さいね。
(獣医師監修:葛野莉奈)