<義母「男はダメよ」>ありえない!夫以外に股を……? 義母の主張⇒気持ちワル~ッ【まんが】
これは数年前の話です。私はユイ。地方在住、30代半ばのパート主婦です。夫のナオヒコと義母の3人で暮らしています。ナオヒコとの結婚は義母との同居が条件でした。すでに義父を亡くし、ナオヒコを心から頼りにしている義母からの希望です。かなり戸惑いましたが、私はすでに両親を亡くし、きょうだいもいないため天涯孤独の身。しかも長年両親の介護をしていたため、非正規を転々としていて経済的にも不安定でした。そんな私を包み込むように愛してくれたナオヒコとどうしても結婚したかった私は、覚悟を決めて同居を受け入れることにしたのでした。
ナオヒコ以上に喜んだのは義母です。 喜びというより、もはや興奮状態。寝ても覚めても出産や赤ちゃんの話ばかりといった感じです。そこまで喜んでくれるのは嬉しいのですが、やっかいなことに義母は、妊婦健診や分娩のことについて、あれこれと圧強めに指示しはじめます。
この辺りには分娩できる病院がふたつあります。ひとつは地元に昔からあるA産婦人科医院。比較的大きめの産院で、産婦人科医が数名います。女医が多いとのことです。こちらは車で10分くらい。歩いて行くこともできます。もうひとつはB総合病院の産婦人科。この地域の医療の中心を担う大きめの病院です。こちらは車で20分くらい。十分通える距離です。
私は驚きのあまり、その場に固まってしまいました。たしかにA産婦人科は女医さんが多いですが、男性医師ももちろんいます。もし男性医師にしかみてもらえない場合、どうするつもりなのでしょう。
「女医さんにみてもらいたいというのは一応伝えてみますが、男性医師もいますし、それに病院側の都合もありますし。もしかしたら希望通りにいかないかもしれな……」「男の先生は絶対ダメよ、はしたない!」義母の発想にあぜんとしました。
義母が男性の産婦人科医をそういう目で見ていたとは……正直、気持ち悪いです。 産婦人科医の方々がプロとして日々妊娠や出産に真正面から向き合っているなか、そんな目で見ている人がいたなんて。 陣痛はいつ起こるかわかりませんし、妊娠中だってどんな緊急事態が起こるかわかりません。令和の世になっても、妊娠や出産は命がけなのです。 下手をすれば赤ちゃんの命や健康に関わるというのにこんなことを言ってくるなんて、いったい義母は何を考えているのでしょうか。
クチと下半身はぜんぜん違う!?暴走した発言で先行きが不安!
ナオヒコはというと、義母の言いなりです。彼自身はとてもいい人なのです。優しく穏やかで礼儀正しく、しかも仕事ができて経済力もある。長年続いた両親の介護で経済的にも精神的にも不安定だった私は、ナオヒコと結婚できて人生を救われたところがあります。
それから数日後。そろそろ受診したいと思うものの、義母がどこの産婦人科がいいか吟味するあまり、受診先がまだ決まりません。
そんななか、義母はシニアヨガのサークルへウキウキしながら出かけていきました。
聞けばサークルの受講後、メンバーのマダムたちとのおしゃべりに花が咲いたそう。口が達者な義母は、初参加だというのに会話の中心となり、マシンガンのようにトークを繰り広げていたようです。
義母の話の内容は、ひどいものでした。初対面の人相手にそこまで言ってしまうなんて……。
「口と下半身では話がぜんぜん違うでしょう? それに、お産は女にしかできないのよ? 産めない男に何がわかるっていうのよ」「女医じゃないとダメだなんて、あまりに馬鹿馬鹿しい考えだわ」
こうして義母のおかしな暴走の結果、A産婦人科でお産することができなくなってしまいました。私の中では一番の候補だったのに……もう泣きたいです。 あとはB総合病院ですが、あちらは男性医師が多めなので、義母が決して首を縦に振らないでしょう。 となると、私はいったいどこで産めばいいのでしょうか。 義母は「女医!」とばかり言って、赤ちゃんや母体の安全面についてまったく心配してくれません。健康に産めることが一番だと思うのですが……このお産はいったいどうなってしまうのでしょうか。
産院まで高速で2時間!?絶対ムリッ!「私には味方がいない」
ナオヒコがなんとかなだめようとしてくれますが、義母の暴走は止まりません。ナオヒコはやがて諦めてしまいました。その間、私は蚊帳の外。会話に入ることすら許されない雰囲気です。
ナオヒコの帰りを待ってから、高速道路で車移動……? そんな悠長なことをしていられるのでしょうか。どんどんお産が進んで、緊急事態になることはないのでしょうか。義母の言っていることはあまりにも現実的でなさすぎます。
私がやんわりと反論すると、どんどん義母の顔が険しくなります。義母は自分の意見以外を許さないタイプ。さらに、嫁という立場の私から意見されることを何よりも嫌います。義母の冷たい一言に、心臓が凍るようでした。
そもそもどうしてこんな扱いを受けているのかといえば、私に頼れる実家もなく、相談できるきょうだいがいないから。ひとりぼっちと知られているからこそ立場が弱いのです。 実親が生きていて、しっかり目を光らせてくれていたなら、「そんなことを言う義母のところで産むのはムリよ、里帰り出産しなさい!」と私を守ってくれていたことでしょう。危険を冒してまで遠方の病院で産ませる、なんて流れには絶対になっていないはずです。天涯孤独の身という立場から、足元を見られてしまっているのです。 誰も私の味方になってくれない……と悲しい気持ちになるのでした。
嫁と医者がよからぬ仲に?「冗談でしょ」救世主、ついに登場!
ハルコさんの病院に行く前に、近くに住む義母の姉フミエおばさんの家に寄っていくことになりました。「あらー、久しぶり! どうしたの急に。上がって上がって!」フミエさんとは日頃はそこまで交流はありませんが、明るくハッキリした人で、私は好感を持っています。
フミエおばさんは、「え? この人、本気で言ってる? 冗談じゃなくて?」という視線を私たちに送ってきます。私とナオヒコは恥ずかしいやら情けないやらで、「ダメなんです……何を言っても聞かなくて」といった表情でうなだれたり、首を振ったり。フミエおばさんは激しく落胆しながらため息をつきます。
「うちの娘だって妊娠前はめちゃくちゃ健康だったわよ! でも何が起こるかわからないのが妊娠出産よ? だから無理にこんな遠いところまで連れてこないで、何かあったときにすぐ見てもらえるようなところで準備を整えるべきなの!」フミエさんの言葉はパンチが効いています。さすがあの義母のお姉さんなだけあるな、と思いました。
あの義母が、完全に黙り込みました。さすが実のお姉さんです。 フミエおばさんも口が達者、しゃべり出すと止まらないところは義母にそっくりです。でもフミエおばさんは、発言内容すべてにしっかりと芯があり、考え方も極めて常識的です。 私やナオヒコが義母に対してずっと言いたかったこと、でも聞く耳をもってもらえなかったことをすべてぶつけてくれました。 あまりの爽快さに、思わず心の中で拍手をしています。きっと夫も同じ気持ちだったに違いありません。
つかの間の平和でも嬉しい!義母の暴走を止めた夫の「ひと言」
「ナオヒコくん。謝る相手は私じゃないでしょ、ユイさんでしょ」フミエおばさんは言ってくれます。
「母親の言いなりになって、こんな遠い病院で出産させようとして……奥さんや子どもに何かあったらどうするつもりなの? 父親になるんだから、母親の顔色ばかりうかがっていないで、もっとしっかりしなさい!」「は、はいっ……!」
こうしてフミエおばさんが暴走する義母を食い止め、「甥の嫁」という遠い立場の私を守ってくれました。ひとりぼっちで誰も味方がいないと思っていた私は、感動のあまり涙が出そうでした。それと同時に私とナオヒコに、「親としてしっかりしよう、お腹の赤ちゃんを守ろう」という気持ちが芽生えはじめます。
こうして一連の騒動は、無事幕を下ろしたのでした。 その後私は、ナオヒコと話し合って決めた病院をやっと受診することができました。自分の納得のいく病院を選べて、ほっとしています。 義母は仏頂面でグチグチいうものの、私たちの決めたことに反対はしません。つかの間の平和といったところでしょうか。今はひとまず落ち着いていますが、いざ子どもが産まれたらまた昔のようにならないとも限りません。そのときは、約束通り別居をするつもりです。