特別展「江戸☆大奥」』が東京国立博物館にて開催!女性たちの栄枯盛衰の向こうに、もうひとつの江戸が見えてくる。
かつての江戸城に存在した将軍の後宮、大奥。 その絢爛豪華な世界の様子は、娯楽小説や芝居、さらにテレビドラマなどでさまざまに描かれてきました。
しかし実情は必ずしもよく知られていないもの…。
そこで大奥の歴史や文化を、遺された資料やゆかりの品を通して明らかにする『特別展「江戸☆大奥」』が、2025年7月19日より東京国立博物館 平成館にて開催されます。
『特別展「江戸☆大奥」』の主な見どころと出展作品(一部)
本展の4つの章に沿って見どころや作品をご紹介します。
【第1章:あこがれの大奥】〜『千代田の大奥』40場面を全期間中展示!
江戸時代以降、庶民にとって大奥はあこがれでありながら、立ち入ることの許されない江戸城の奥深くに隠された世界でした。
まず第1章「あこがれの大奥」では、ドラマなどで知られる長い御鈴廊下のセット、十一代将軍徳川家斉時代の大奥をモデルにしたとされる『偐紫田舎源氏』、『千代田の大奥』といった錦絵などを通して、江戸時代から現代にいたるまで、庶民がイメージした大奥を紹介します。
江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した絵師・楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)は、大奥の様子を懐古的に描いて人気を博しました。
そして『千代田の大奥』には、大奥の女性たちの生活や行事を、実に40場面もの豪華な錦絵で表わしています。
本展では『千代田の大奥』40場面を全期間中展示。(会期中、展示替えがあります。東京国立博物館所蔵作品と文化学園服飾博物館所蔵作品を期間中、合わせて展示します。)中でも西の丸の吹上御庭(ふきあげおにわ)や五十三間馬場にて、賑やかに花見を催す様子を描いた「千代田大奥 御花見」は必見と言えるでしょう。
【第2章:大奥の誕生と構造】〜大奥の誕生とその知られざる構造とは?
大奥がどのように生まれ、どのように建てられていたのか?
その謎を明らかにするのが、第2章「大奥の誕生と構造」です。
御台所や側室、また仕える女中たちの序列が整えられたのは、三代将軍家光の時代です。家光の乳母である春日局(斎藤福)は、家光が将軍に就任すると、将軍付きの局として大奥で権力を得ます。
そして徳川家直系の子孫に将軍家を継がせるために、御台所や多くの側室を迎え入れ、大奥の礎を築きました。
二代将軍秀忠の娘である千姫は、豊臣秀頼や桑名藩の本多忠刻に嫁ぎましたが、嫡男や夫に先立たれてしまいます。
しかしその後、江戸城に戻り、家光の三男綱重を養子にして、徳川将軍家直系の存続を守りました。
また江戸城の本丸は、表、中奥、大奥に分かれていて、御台所や側室、女中の中でも最高の地位にある御年寄(老女)をはじめとする女中たちは大奥で生活していました。
「江戸城本丸大奥総地図」とは、天保15年(1844)の火災に より再建された江戸城本丸大奥を俯 瞰して描いたもの。御殿や長局などが色分けされ、間取りも詳細に書き込まれています。こうした遺された文書や絵図からは、幕末における大奥の構造を知ることができます。
埼玉・錫杖寺(川口市)蔵の「女乗物」とは、十三代将軍家定や十四代将軍家茂の将軍付き御年寄、瀧山が使用していたものです。本章では政治的にも影響力をもっていた女中たちの生涯を、ゆかりの品や日記などを通して紹介します。
【第3章:ゆかりの品は語る】〜瑞春院にゆかりの「刺繡掛袱紗」全31枚を公開!
世継ぎを生み、育て上げる使命を与えられていた将軍の妻妾たち。
世継ぎの生母と正室との対立、利害の異なる女中たちとの間での抗争など、大奥での生活は常にプレッシャーとの戦いでした。
瑞春院(お伝の方)は、五代将軍綱吉の実子を生み育てた唯一の側室です。
綱吉は瑞春院のために当時の刺繡技術の粋を凝らした掛袱紗(かけふくさ)をあつらえ、折々の行事に贈りました。本章では元禄期における最高の刺繡技術を用いて制作され、瑞春院にゆかりの「刺繡掛袱紗」全31枚を公開します。
※会期中、展示替えがあります。
十三代将軍家定の正室、天璋院(篤姫)と、十四代将軍家茂の正室、静寛院宮(和宮)との間には確執があったとされています。
そしてそれぞれの遺品を比較すると、武家と公家という文化や生活の違いが浮き彫りになります。
「掻取萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様」とは、雀好きだった篤姫の衣装です。竹林に雀が飛び交うさまを腰下に刺繡していて、降り積もる雪に耐え、常緑を保った凛々しい竹の意匠を見ることができます。
「掻取 白綸子地桜牡丹藤源氏車模様」とは、皇女和宮の品と伝わる武家風の掻取(かいどり)です。
大奥では白綸子地に刺繡を全面に施した搔取が、最高級の上着として尊ばれていました。
本章では閉ざされた生活の中でも、気丈に生きたとされる、歴代大奥のヒロインたちを遺品を通して紹介します。
【第4章:大奥のくらし】〜婚礼から四季の装い、さらに歌舞伎の衣装まで
大奥に生まれた将軍の息女や、大奥に迎え入れられた御台所たちは、大奥の中にてどのような日々を過ごしていたのでしょうか。
大奥での婚礼や四季の装い、またあそびや大奥でも魅惑的な娯楽の一つであった歌舞伎などを紹介するのが、第4章「大奥のくらし」です。
将軍の息女や正室たちは、贅を尽くした婚礼調度とともに輿入れしました。
それを物語るのが紀州徳川家十代藩主、徳川治宝の娘、鶴樹院(豊姫)の婚礼調度である「竹菱葵紋散蒔絵婚礼調度」です。同じ模様の蒔絵を重厚に施し、大変に豪勢な一具として仕上げられています。
十一代将軍家斉の時代に活躍した女性の歌舞伎役者、坂東三津江が大奥で演じた際に用いた衣装の数々は、 大奥における豪華絢爛な舞台の様相を伝えるもの。本展ではこうした大奥で演じられた歌舞伎衣装を、初めて一度にまとめて公開します。
この他では天璋院(篤姫)所用で大奥の雛祭りを涼やかに飾ったガラス工芸、「薩摩切子雛道具」も見逃せない作品と言えるでしょう。
ドラマなどでおなじみの「御鈴廊下」のセットを再現!
この『特別展「江戸☆大奥」』をより深く、親しみを持って楽しめる情報をご紹介しましょう。
まず音声ガイドナビゲーターには、ドラマ10「大奥」(NHK)で徳川吉宗役を務め、大河ドラマ 「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)に大奥 総取締 高岳役で出演中の冨永愛さんに決定。本展のみどころや、大奥の真実を語る作品の魅力を案内します。
江戸の大奥を舞台に、猫と人間の静かでユーモラスな日々を描く漫画『猫奥』(講談社)と、 特別展「江戸☆大奥」のコラボレーションが実現しました。
本展のために書き下ろされたオリジナル漫画が、週刊 「モーニング」、講談社のマンガ WEB「コミック DAYS」に登場します。
さらに本展では、NHK ドラマ10「大奥」で用いられた衣装を展示し、ドラマなどでおなじみの「御鈴廊下」のセットを再現。
江戸時代における大奥の見取り図を表わした絵図や、実際に江戸時代の武家女性が用いた衣装などを展示することで、ドラマや映画の世界と実際の大奥との違いを見比べることもできます。
大奥で演じられた歌舞伎の衣装や繊細な刺繍の施された武家の着物、また大奥のヒロインたちをゆかりの品とともに紹介する本展。
さらに楊洲周延が大奥の女性たちの生活を描いた『千代田の大奥』40場面をはじめ、重要文化財で奈良・興福院の刺繡掛袱紗全31枚の公開など見逃せない展示も少なくありません。
代々の御台所や女中たちが生き、徳川幕府を支えた、もう一つの中枢とも言える大奥の本当の姿を、『特別展「江戸☆大奥」』にてひも解いてください。
展覧会情報
『特別展「江戸☆大奥」』 東京国立博物館 平成館
開催期間:2025年7月19日(土) ~ 2025年9月21日(日)
所在地 :東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR上野駅公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分。
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、
東京メトロ千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分。
開館時間:9:30~17:00
※毎週金・土曜日
※7月20日(日)、8月10日(日)、9月14日(日)は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日 :月曜日、7月22日(火)。
ただし、7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、9月15日(月・祝)は開館。
観覧料 :一般2,100(1,900)円、大学生1,300(1,100)円、高校生900(700)円
中学生以下無料。
※( )内は前売券。
展覧会HP:https://ooku2025.jp/