三浦市三崎に伝わる小正月の伝統行事「チャッキラコ」が1月15日に開催。綾竹や扇を手に少女たちが華やかに踊る
ユネスコ無形文化遺産「風流舞」に登録、国の重要無形民俗文化財に指定されている「チャッキラコ」が1月15日(水)に神奈川県三浦市の海南神社ほかで開催。女性だけで行われるのが特徴で、約20人の少女たちが唄に合わせて踊りを披露する。新春にふさわしい華やかな行事を見に、三浦半島へ出かけよう。
女性が主役の三崎の伝統行事
名前からはなかなか想像がつかない「チャッキラコ」。毎年1月15日の小正月に神奈川県三浦市三崎の仲崎・花暮地区や海南神社で行われる民俗芸能だ。小正月は別名「女正月」という通り、旧年の12月からお正月にかけて働き続けた女性を労い、一日楽しく過ごす日ということからこの祭りは女性だけで行われる。大人の女性8人ほどが唄い、5歳ぐらい~12歳までの少女約20人が五穀豊穣や大漁祈願、海上安全などを祈願する踊りを披露する。
宝暦6年(1756)年刊行の『三崎志』に「初瀬踊りを1月15日に女児集まり踊る」というような記録が残っていることから、少なくとも約270年前から初瀬踊りと称して行われていたと考えられる。「『初瀬』=『初稲』の転化と考えられていて、当初から五穀豊穣を祈る踊りであったのではといわれています。最初に踊る『ハツイセ』にいくつかのおめでたい曲が加わって現在は6曲から構成されています」と教えてくれたのは三浦市文化スポーツ課の飯島さん。
その6曲とは、「ハツイセ」、「チャッキラコ」、「二本踊り」、「よささ節」、「鎌倉節」、「お伊勢参り」のこと。「『チャッキラコ』という言葉が出てくるのは明治時代に入ってから。6曲の中にあった『チャッキラコ』から総称してこの行事のことをそう呼ぶようになったのです」(飯島さん)。「チャッキラコ」を踊るときに持つ綾竹のことをコキリコとも呼び、チャッキラコはコキリコから転化したと考えられている。
音頭取りと踊り手の掛け合いに注目!
6曲にはそれぞれ特徴がある。例えば、扇を持って踊る「ハツイセ」では扇をすぼめて上から下に動かす仕草があり、田植えの様子を再現している。また、6曲の中で一番人気があったといわれる「チャッキラコ」は両端に小さな鈴と五色の紙テープを付けた綾竹を両手に持って打ち鳴らしながらテンポよく踊る。「よささ節」は踊り子のかけ言葉と口三味線の囃しから始まる。ラストの「お伊勢参り」は、他の踊りがその場で踊るのに対して、輪を作ってぐるぐると回る。その名の通りお伊勢参りの様子を表現していて、行きは東海道、帰りは船で三崎に戻る情景が唄われる。
「楽器類は一切使わずに、唄と囃し言葉だけの素朴な唄と踊りが特徴です。音頭取りが唄い、踊り手が合いの手を入れるなどして調子をとる。そんな掛け合いに注目してください。また歌詞には正月らしいおめでたい内容が出てくるので、よく聴いていただけたら」と飯島さん。
チャッキラコの一行は10時から花暮地区の本宮神社を皮切りに、海南神社やチャッキラコ三崎昭和館で踊る。午後は仲崎龍神社、花暮龍宮社、うらりへ。その後は2班に分かれて呼ばれた家で踊りを披露し、町のあちこちで華やかなチャッキラコが行われる。晴れ着姿のかわいらしい少女たちが一生懸命願いを込めて踊る姿をぜひ見学しよう。
開催概要
「チャッキラコ」
開催日:2025年1月15日(水)
開催時間:10:00~17:00頃
会場:海南神社ほか(神奈川県三浦市三崎)
アクセス:京急電鉄久里浜線三崎口駅からバス「三崎港」下車3分
【問い合わせ先】
三浦市市民部文化スポーツ課☎046ー882ー1111
公式HP:https://www.city.miura.kanagawa.jp/soshiki/bunkasportska/bunkasportska_bunka/shiteibunkazai_soshiki/682.html
取材・文=香取麻衣子 ※画像は三浦市提供
香取麻衣子
ライター
1980年生まれ。『散歩の達人』編集部でのアルバイト経験を経て、2010年からライターとしての活動を開始。あだ名はかとりーぬ。『散歩の達人』では祭り&イベントのページを長らく担当。青春18きっぷ旅や山歩きなどのんびりと気ままにお出かけするのが好き。あとビールや美術館めぐりも大好物。