福岡を旅する小説4選!物語で感じる街の魅力
福岡といえば、美味しい食文化や活気あふれる都市風景、歴史ある寺社など、多彩な魅力が詰まった街。そんな福岡の魅力がギュッと詰まった小説を読めば、もっともっと福岡のことが好きになるはず。今回は、これまでに紹介した作品を振り返りつつ、新たに福岡市やその近郊が舞台の小説をご紹介します。物語を通じて、福岡の街を巡る気分を一緒に味わってみませんか?
フクリパでこれまでに紹介した福岡の物語
小説やマンガ編(過去記事より)
『スラムダンク』、『NARUTO』、『サザエさん』
スラムダンクやNARUTOも福岡ネタ!?~実は福岡と縁のある国民的マンガ3選~
https://fukuoka-leapup.jp/entertainment/202010.133
福岡と縁のある国民的マンガ。
まずはみんな大好き『スラムダンク』。舞台は神奈川県だし、福岡に接点なんてあったかいな?と思う方も多いかもしれませんが、ポイントは登場人物の名前です。「安西先生、バスケがしたいです」の名言でおなじみの天才シューター・三井寿(みついひさし)の名前の由来となったのが、何と福岡県大刀洗町の株式会社みいの寿が手掛ける日本酒「三井の寿(みいのことぶき)」です。他にも、主人公・桜木花道の友人グループには、「高宮」「野間」「大楠」というキャラクターが登場しますが、いずれも福岡市南区にある地名から取られていると言われています。九州出身の井上雄彦先生ならではのエピソードという感じで、さらに親近感が湧きませんか?
そして主人公のナルトがことあるごとに訪れる憩いの場「一楽ラーメン」のモデルが福岡市東区に存在することでも有名な『NARUTO』。スタッフさんによると、連載が終了した今でも「NARUTO」ファンの人が全国各地や海外からも訪れるそうで、“聖地巡礼”的な隠れスポットとして秘かな人気が続いているようです。アニメで博多弁が飛び出すシーンも、福岡愛をくすぐりますよね。
最後に、国民的アニメ『サザエさん』が福岡は百道浜で生まれたことは、もはや福岡民には常識です。原作者である長谷川町子さんは、幼少期や戦中戦後を福岡で過ごします。昭和21年、福岡の地方新聞「夕刊フクニチ」にて「サザエさん」の連載をスタート。サザエ、カツオ、ワカメなどの海にちなんだ登場人物が出てくるアイデアは、百道浜を歩きながら思いついたことが原作の中で描かれています。
『君の膵臓をたべたい』、『悪人』、『完全黙秘』
福岡を舞台にした小説グルメ!『君の膵臓をたべたい』『悪人』『完全黙秘』にこっそり潜む、リアルグルメ探訪記。
https://fukuoka-leapup.jp/entertainment/202101.188
住野よるさんのデビュー作『君の膵臓をたべたい』では、福岡のグルメや街並みが登場。目的地に着いた桜良が、新幹線を降りて開口一番に語ったのが「うわぁ! ラーメンの匂いがする!」というセリフ。小説の中に具体的な店名の記載はないものの、「お店の外壁には有名なグルメ漫画でこのお店が取り上げられたらしきページのコピーが貼られていた」とあることからも「名代ラーメン亭」ではないかと言われています。
『悪人』は、中洲、天神、東公園、久留米、三瀬峠など、実在の土地を描写しながら舞台は進行します。逃避行の場面や、三瀬峠の不穏な描写などは、やはり馴染みのある福岡の人ならよりリアルに実感できるはず。単なるサスペンスではなく、人間の内面を深くえぐるドラマ性のある小説です。
福岡出身、元警察官という肩書を持つ濱嘉之さんによる『警視庁公安部・青山望 完全黙秘』。累計で100万部を超す人気シリーズとなった本作には、主人公・青山の行きつけの店として「中洲の人形小路の奥にある、『味噌汁屋』」が登場します。この店のモデルとなっているのが、中洲で40年近い歴史を持つ味噌汁専門店「味噌汁 田(でん)」です。
ドラマ編(過去記事より)
『山田全自動の福岡暮らし』
フクリパでも連載中の山田全自動さんがドラマ化!浮世絵の”あるあるネタ”で大人気の「山田全自動の福岡暮らし」
https://fukuoka-leapup.jp/gourmet/202502.48370
ウェブ漫画原作のドラマ(2025年3月20日放送予定)。山田全自動さんが、屋台やラーメン店など地元の「あるある」をユーモラスに描きます。
このドラマは福岡ゆかりの人々が大集合して作られています。主演は福岡市出身の中村蒼さん、相方の店員役には中間市出身の大野いとさん。脚本はお笑いコンビ・ブルーリバーの川原豪介さん(筑紫野市出身)、主題歌は北九州市出身のシンガーソングライター・ニイナさんの「あかり」、監督はTVQ九州放送の太田裕一さんが務めます。チーフプロデューサーの高木正さん、プロデューサーの徳田正諭さん(ともにテレQ)、本田克哉さん(VSQ)のもと、制作プロダクションVSQとテレQがタッグを組んで、福岡愛たっぷりの作品を全国に届けます。原作者・山田全自動さんの視点と、福岡にゆかりあるスタッフの地元愛が詰まったドラマは、まさに福岡の魅力を再発見できる一作ですよ。
これらの作品で、福岡のユーモアやグルメ、日常の温かさに触れてきましたよね。過去記事で詳しく紹介していますが、ここでは簡単に振り返りました。では、ここからは新たにピックアップした、福岡の魅力が詰まった小説をご紹介します!
新たに紹介する小説編
『真夜中の子供』/辻仁成(河出書房、2021年)
あらすじ
日本屈指の歓楽街・博多中洲。その街で真夜中を生きる無戸籍の少年がいた――凶行の夜を越え、彼が掴みとった自らの居場所とは? 家族の繋がりを超えた人間の強さと温かさを描く感動作。(河出書房新社オフィシャルサイトより)
福岡との関わり
物語の舞台は博多・中洲。ネオンが輝く西日本最大の歓楽街で、真夜中に徘徊する少年・蓮司が見つめる風景には、福岡の夜の顔がリアルに映し出されています。特に博多祇園山笠の熱気ある描写は、福岡の伝統が息づく瞬間を切り取っていて、地元民なら「これぞ福岡!」と胸が熱くなるはず。
無戸籍児童の問題をも扱った社会派小説でありながら、中洲中央通りにある小さな交番など、具体的な場所も登場し、福岡の裏表を知る物語が心に響きます。
福岡愛ポイント
中洲の人々が蓮司を可愛がる人情味や、山笠の生き生きとしたシーンは、福岡ならではの宝です。無戸籍という社会問題を抱えながらもたくましく成長する蓮司の姿に、福岡の夜の温かさと強さが重なって、読んでいると「人間っていいな」と、愛おしさが溢れます。
『真夜中の子供』/辻仁成(河出書房、2021年)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309418001/
作品詳細はこちら(Amazon)
『逃亡くそたわけ』/絲山秋子(講談社文庫、2007年)
あらすじ
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。(講談社文庫より)
福岡との関わり
物語は福岡・百道の精神病院から始まり、そこから九州縦断の旅がスタートします。勝気な博多女の「私」が繰り出す福岡の街並みや、博多っ子らしい気性の荒々しさとユーモアが、旅の第一歩に色濃く刻まれています。百道の静かな住宅街から飛び出して南へ向かう道すがら、福岡の日常と非日常が交錯する瞬間がたまらなく魅力的に描かれています。
福岡愛ポイント
博多女の勝気な性格や、福岡の風景が旅の始まりにピリッとスパイスを効かせてくれます。精神にトラブルを抱えた二人がおんぼろ車で飛び出す姿に、福岡らしい自由奔放さとたくましさが感じられて、読んでいてワクワクします。福岡から始まる冒険の期待値の高さ、最高! となります。
『逃亡くそたわけ』/絲山秋子(講談社文庫、2007年)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000204520
作品詳細はこちら(Amazon)
『[新装版]嫌われ松子の一生(上)』/山田宗樹(幻冬舎、新装版2023年)
あらすじ
中学校教師だった松子は、ある事件をきっかけに転落の人生を歩み始める。愛を求めてさまよい続けた女の苛烈な半生を、甥・ショウがたどる。波乱万丈の人生が読者の心を揺さぶる。(幻冬舎オフィシャルサイトより)
福岡との関わり
福岡県南部、筑後川に浮かぶ大野島で育った松子が物語の中心。彼女の故郷として描かれる大野島や筑後川の風景は、福岡の自然と人情が静かに息づく場所です。特にラストで故郷の筑後川が再び登場するシーンは、福岡の穏やかな美しさと松子の激しい人生が交錯して、深い余韻を残します。福岡の女性らしい情熱と一途さが、松子の生き様にしっかり投影されています。
福岡愛ポイント
松子の「愛のためならすべてを放り出す」情熱的な生き方は、福岡の女性の強さと優しさを象徴しているみたいで、読んでいてグッときます。大野島や筑後川の風景がラストに重なる瞬間は、福岡への懐かしさと愛が溢れてきて、故郷の温かさを改めて感じさせてくれます。
『[新装版]嫌われ松子の一生(上)』/山田宗樹(幻冬舎、新装版2023年)
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344433076/
作品詳細はこちら(Amazon)
『背く子』/大道珠貴(講談社、2001年)
あらすじ
ろくでなしの両親のもとに育ちながらも、したたかに生き抜く少女・春日。幼い視点から見た大人のずるさや世の理不尽さが、痛々しくも鮮やかに描かれる。(講談社BOOK倶楽部より)
福岡との関わり
福岡近郊の街が舞台で、具体的な地名は明示されませんが、福岡の郊外らしい日常や空気感が春日の視点に溶け込んでいます。ろくでなしの両親のもとで育つ春日が見つめる街並みは、福岡のどこか懐かしい風景と重なり、都会と田舎が混ざり合う地元のリアルな一面が感じられます。
福岡愛ポイント
春日の冷静でたくましい姿に、福岡の郊外で生きる人々の強さが映し出されていて、心打たれます。理不尽な世界を淡々と生き抜く彼女を通じて、福岡の日常に潜む温かさと厳しさが静かに胸に響きます。地元愛がじんわり湧いてくる一冊です。
『背く子』/大道珠貴(講談社、2001年)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203647
作品詳細はこちら(Amazon)
福岡の街と物語が交わる瞬間を楽しもう!
これまで紹介した『スラムダンク』や『NARUTO』、『サザエさん』、『君の膵臓をたべたい』、『悪人』、『完全黙秘』、『山田全自動の福岡暮らし』に加えて、今回新たにピックアップした『真夜中の子供』『逃亡くそたわけ』『嫌われ松子の一生』『背く子』。どの作品にも、福岡の街並みや人情、食文化や伝統が息づいていて、読むたびに福岡愛が溢れてきます。実際に作品を読んで、描かれた場所を訪れてみると、「物語と一緒に福岡を歩いてる!」という感じがしてワクワクします。…そんな、福岡を愛する新たな楽しみ方になれば幸いです。
福岡に縁のある作品、あなたはいくつ知っていましたか?
ぜひお気に入りの一冊を見つけて、福岡への愛をさらに深めてくださいね。物語の世界を旅しながら、私たちの大好きな福岡を一緒に楽しんでいきましょう!
また、「こんな作品もあるよ!」「この小説のこのシーンは間違いなく博多の〇〇やけん!」といったみなさんのご一報もお待ちしております。