大分トリニータ シーズン総括 戦い方を徹底できず低迷、降格危機で現実路線へ 【大分県】
今季の結果
リーグ戦 16位 10勝13分15敗 33得点・47失点
カップ戦 1stラウンド 1回戦敗退
天皇杯 ラウンド16敗退
3年ぶりに復帰した片野坂知宏監督は、開幕前に「勝ち点60、総得点60、総失点40」という目標を掲げ今季に臨んだ。そして、攻守に切れ目のない「シームレスなフットボール」を標榜(ひょうぼう)し、縦に速いスタイルを模索した。
だが開幕前から主力選手のけがが相次ぎ、メンバーを固定できないどころか、ベンチ入り18人をそろえるのに四苦八苦する状況が続く。当然、戦術を落とし込むことができず、確固たる戦い方をつかめないまま低空飛行を続けていった。泥沼にハマったのが14節以降。対戦相手によって戦い方を変えざるを得ない状況が続く中でメンバーを入れ替え、システム変更を施すも9試合未勝利。気がつけば残留争いを強いられるまで順位を下げていた。選手から「これでやれば間違いないというものがなかった」と声が出てきたのは、この頃からだ。
勝っていれば「臨機応変に対応できている」と称賛されていただろうが、勝てない試合が続くと対戦相手のスタイルや試合展開に依存する戦い方が増える。そして自らが意図を持ってアクションを起こす攻撃や守備が少ないことに不満が募る。選手は「何が正解か分からない」と戸惑い、プレーに精彩さを欠いた。
「厳しく、難しいシーズンだった」と振り返った片野坂監督
この非常事態にフロントは迅速な対応を見せた。夏場のリーグ中断期間にDF吉田真那斗、MF高橋大悟を期限付き移籍で獲得するなど手を打った。しかし、思うような結果を残せなかった。目標は下方修正され、やがて残留に特化されたことで戦い方の方向性そのものの是非は問われなくなってしまった。「勝ち点を取らなければいけない状況になり、現実路線にシフトした。良いプレーと悪いプレーを明確にし、何を優先するのか細かく提示した」(片野坂監督)。終盤戦で展開されたのは、開幕前に目指したものとは異なり、安全第一の守備的サッカーであった。
苦肉の策であったが、勝ち点を取るための戦い方に徹したことで選手から迷いが消えたのは皮肉である。開幕前の目標を基準とすれば、今季のチームへの評価はどうしても厳しいものにならざるを得ない。成績不振が一因となり、長らく強化のトップに立った西山哲平GMが退任した。クラブは強化の術(すべ)を根本的に変え、来季から新たな体制にとなる。何を継承し、何を刷新するのかをもう一度吟味する必要があるだろう。今季チームが得たはずの教訓と課題は、今後の戦いに必ず生かさなければならない。
思うような結果、内容を出せずにシーズンを終えた
(柚野真也)