【高知家の後継者募集】毎夜にぎわう地域唯一の人気居酒屋を引き継ぐ 高知県東洋町の旬鮮魚菜「ふくちゃん」
高知県の東端に位置する東洋町は、「土佐の東の玄関口」と言われる。
室戸阿南海岸国定公園の真中に位置し、白砂青松の美しい白浜海岸や全国屈指のサーフポイントとして賑わう生見海岸を有する風光明媚な地域だ。
この地域に、地元の人々や観光客らで毎夜賑わっている居酒屋がある。
旬鮮魚菜「ふくちゃん」は、地元で建設業などを営む山下龍造さん(50)、美紀さん(51)夫妻が10年前に開いた店だ。
「もともとこの辺りは、みんなで集まれる居酒屋がなかったんですよ。それなら自分たちで創っちゃえ、という事で、始めたんです」
気さくな笑顔の龍造さんが振り返る。
店名の「ふくちゃん」はその頃家族に仲間入りした雌のプードルの名前。
「旬鮮魚菜」は美紀さんが熟考して付けた。旬で新鮮な魚介類や野菜を心を込めて提供しようという経営方針を込めたものだ。
メニューを見れば、「旬鮮魚菜」ということが一目で分かる。
刺身の盛り合わせは、その日入荷したばかりの新鮮な魚。カツオのたたきはもちろん、グレやブリ、イカなどが日替わりで登場する。
ウツボの塩焼きやチャンバラ貝など、他ではお目にかかれないメニューに出会えることも。
たたきには特製のタレ、添えるニンニクも自家菜園で栽培するこだわりようだ。
店を切り回すのは美紀さん。
昼間は建設業などの事務仕事を行い、夜は居酒屋の女将に早変わり。
仕込みは料理長らが行ってくれるが、夕方からは店に入り、目の回るような多忙な日々を送っている。
龍造さんも毎日顔を出しているが、「店のお酒を自分で減らすために通っているだけです」。
美味しい酒の肴が人気を呼び、お店には大勢の客が詰めかける。
地元の常連が足繁く通ってくるが、飛び込みの観光客も数多い。
外国人の旅行客も訪れるそうで、英語のメニューも常備している。
繁忙期には予約をしないと入れない場合もあるそうだ。
こうして地域になくてはならない夜の憩いの場所として定着している「ふくちゃん」だが、美紀さんがパンクしそうになってきた。
山下さん夫妻は、居酒屋のほかに本業の建設業はもちろん、ポンカン栽培・加工品販売の「フクチャンFARM」を経営している。
また、最近は移住のお試し住宅「Yadorigi」も始めるなど、たくさんの事業を手掛けている。
その全てに美紀さんは関わっており、「とても居酒屋の女将に専念できない状態になってしまった」そう。
このため、今秋を目途に店を閉めることを決断したのだという。
「だけど、店がなくなると地元の人も困るだろうし、観光客の夜の楽しみもなくなる。それが心苦しくて…」として、全国の方々に向けて継業を呼び掛けている訳だ。
元々焼肉店だった店舗を全面改装、まだ10年しか経っていないため、厨房設備なども含めて店内はとてもきれいな状態。
店舗面積は約75㎡で土地は約160㎡。土地建物の一括売却を考えている。
継業後の店のスタイルにはこだわりはなく、「自由な発想で変えてもらって、地域を盛り上げて欲しい」そう。
ただ、希望があれば、魚などの仕入先の紹介するという。
店舗からほど近い海辺には、遠浅で人気のある「白浜海水浴場」があり、シーズンには大勢の行楽客が訪れる。
現オーナーは行っていないが、昼のランチメニューを始めれば、さらなる売り上げ増も期待できそう。
自然豊かな海辺の街で、地元住民や観光客に人気の店を継業する。これは一つの飲食店の引継ぎではなく、地元の憩いの場の灯を絶やさない取り組みでもある。起業精神あふれる意欲的な方の応募を地域全体が心待ちにしている。
店舗情報
旬鮮魚菜 ふくちゃん
高知県安芸郡東洋町河内1117-13
経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。
高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。
「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。
高知県事業承継・引継ぎ支援センター
電話:088-802-6002
メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp
担当:横山、野本