伊勢丹のイタリア展でこの2つは絶対に買った方がいい / 理解不能な領域に至った宝石みたいなフルーツと、コロネの戦闘形態みたいな「アラゴスタ」
老舗百貨店が開催する、どこかの国や地域をテーマにしたフェアというのは、いつだって未知の美味いものにあふれている。
その土地に行かなくても腕のいいバイヤーが選んできた良いものを食えるんだからな。時間と金的にも高コスパと言えよう。今回は2024年9月19日から9月24日まで新宿伊勢丹で開催中のイタリア展だ!
本記事で紹介するのは2つのブースの商品。どちらも初めて食べるもので、片方はコロネっぽいがウマさがダンチで、もう片方はもはや理解不能な領域に至っている。
・イタリア展
というわけで、こちらがイタリア展の会場。様々なイタリア系フードが盛りだくさん。予算の都合で手を出せなかったが、ワイン売り場の充実度はすさまじいものだった。
イートインコーナーも用意されており、エリア内で買ったものをそこで食べることも可能! 多くの方が、ウマそうなワインとつまみを楽しむなどしていた。
場内では本当に文字通り巨大なパネトーネや、ワインに合いそうなソーセージなど色々売られており、好奇心的にも味覚的にもだいぶ楽しめる。
Coda di Aragosta
今回私が特にお勧めするのは2つ。まずはこちらの、パンというか、パイというか、そういう菓子だ。
Coda di aragostaというらしい。Codaは音楽のコーダと同じだろう。尾とか終わりの意味だ。そしてAragostaはロブスター。つまりロブスターの尾の意味だと思われる。価格は1本701円で、ピスタチオとカスタードの2種類ある。
買って来たのがこちら。この通り、外骨格じみたビジュアル。
質感や動きも外骨格っぽく、この鱗のようになっているヒダはバリバリに硬い。しかしその内部は柔らかく、くねくねと曲がる。子供に渡したら速攻で遊び始めそう。
日本で言うと、似た形状のものにパンのコロネがあると思う。三角錐の形状で、中にチョコとかが入っているアレだ。アラゴスタ(便宜上そう呼ぶ)もおおむね三角錐で、中にクリームが入っているので、それなりに近しいものとみなせなくもない。
しかし、食べると似ている所は何一つない。アラゴスタは、今までこのようなものを日本では食べたことが無く、近似するものがマジで思いつかない。
このバリバリの外骨格みたいなヒダの部分はや内部の柔らかい生地はどちらも一切甘くなく、そこも好ましい。
カスタードとピスタチオのどちらも美味かったが、どちらかと言われたらピスタチオをお勧めしたい。パイともパンとも言えぬ、全く新しい食べ物だった。美味いし面白かった。新体験。
・理解不能
続いては、値段的にはだいぶ高額な部類なのだが、しかし生きている間に1度は食っておくべきであろうというような、そういうものだ。
会場にて、ナイスな笑顔で実演販売をしていたこちら。
何やら小さく丸いものを、何度も煮えた飴のような液体にくぐらせている。
そして出来上がるのがこちら。なんか凄い……けど、なんだこれは?
こちら、ジェノバの1780年創業の老舗砂糖菓子屋ピエトロ・ロマネンゴのフルッタ・カンディータだ。Frutta candita。直訳すれば果物の砂糖漬けとなる。ノンナアンドシディのブースで実演販売している。
許可を得て撮影した。全部で7種類のフルーツから好きなものを選べる。ラインアップはマンダリンオレンジ、洋ナシ、琵琶、桃、プルーン、イチジク、アンズだ。値段は100gで1944円の量り売り……!
は? 砂糖漬けフルーツでそんなにするのか? そう思うかもしれないが、これはただの砂糖漬けではない。
フルーツに穴をあけ、1週間の間、6時間おきに濃度を変えて砂糖水に漬け続けるという、恐ろしく手間がかかった砂糖漬けなのだ。
果物の果汁はそのままに、外部から砂糖水に浸透され、最終的にはこのように半透明の小さいカタマリになる。それを砂糖水でグラッセして完成だ。
今回は最後のグラッセする工程がブースで行われるので、出来立てを買うことができる。
私が買って来たのはマンダリンオレンジ、洋ナシ、琵琶の3種を1つずつ。そしてピエトロ・ロマネンゴ定番のマロングラッセ(346円/100g)だ。
これだけで合計3559円するので、皆さんも値段の面では相応の覚悟をした方が良い。体積は小さいがそれなりに重く、100gなど一瞬で到達する。
そんなにいくつも買えるものではないと思うので、1つだけ選ぶなら、ぶっちぎりでマンダリンオレンジだ! 皮ごとまるっと漬けられている。
不思議な弾力のある硬さ。これは切ると凄い。見よこの、キラキラな感じを!! もはや宝石化していると言っても過言ではない。
ところで、1週間の漬ける工程で加熱されることは無く、ただ砂糖水が浸透していくのみ。つまりこのキラキラした半透明な内部から、浸透したトロットロなオレンジ味のシロップがあふれ出てくるのだ……!
もうわけがわからん。理解不能な領域に至った食べられる宝石だ。錬金術とはこういうものを指すのかもしれない。
洋ナシはこちら。丸ごとがこのサイズ。これは食べると溶ける。特濃洋ナシフレーバーのスライムになって溶けていく。
そしてこちらが琵琶。これが最も元のフルーツらしさを残しているかもしれない。私がブルジョアだったら、1週間毎日1種類ずつ7種をローテで寝る前に食べる人生を送るだろう。
マロングラッセはお手頃価格なので、こちらもお勧めだ。このマロングラッセを食べてしまったら、今までに食べた全てのマロングラッセを疑問視してしまうことだろう。それくらいクオリティが違うマロングラッセだった。
いずれも、ワインやウィスキーなどのつまみとして食べたり、細かく刻んで何かと合わせるなどしてもいいらしい。
とても味が濃く、それぞれのフルーツの濃厚な味と共に何とも言えない独特の風味がある。1つの人生経験として、この世にはこのようなものがあるのだと体験しておくべきだと思う。
参考リンク:伊勢丹
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.