<小学生がセクハラ!?>まさかウチの子が……大学生に「卑猥な言葉」「性的な質問」【まんが】
最近のお話です。私は会社員のミサト。夫は遠方に単身赴任しているため、なかなか帰ってこられません。そのため普段は小学6年生の息子(ヤマト)と2人暮らしです。息子のヤマトは、いつも元気いっぱいで目立つことをするのが大好きです。ただそれがエスカレートして、ときどきお友だちとトラブルになることもありました。
息子のヤマトはやんちゃなタイプ。授業中にふざけて目立とうとするなど、これまでにも何度か担任の先生から連絡をもらったことがありました。今回はいったい何をしたのだろうと、憂鬱な気持ちで学校へ向かいます。
同級生のケンタくんから意味深な様子で言われ、ますます気持ちが落ち着かなくなる私。指定された校長室前に行くと、すでに息子がいました。下を向いてうなだれているように見えます。おそらくすでに先生から怒られたのでしょう。
物々しい雰囲気にイヤな予感がします。校長先生と向かい合って座ると、思いもよらない話を聞かされました。
「実は、A大学から連絡があったのですが……。ヤマトくんの発言で、ある教育実習生が困惑している様子で……」校長先生はどこか歯切れが悪いです。「どういうことですか?」「教育実習にきたA大学の女子学生に対し、ヤマトくんが問題のある発言をしたんです」「問題とは……どういう発言ですか?」
「性的なことをしつこく聞いていたそうで……。大学からの話では、ヤマトくん自身がどこまで意味を把握しているのかはわからないそうです。どこかで見聞きした言葉を意味も分からず言っているだけかもしれない、と」
「顔を合わせるたびに卑猥な言葉を浴びせてくるし、どんどん過激になっていったと……。少し前に街中で会ったときにも声をかけられたとかで、女子学生がつらくなってしまったようです」
「複数の男子生徒が実習生を囲んで、性的な言葉を浴びせていたのも確認されています。ヤマトくんだけではなく、周りの子たちも同調して笑っていたそうですが……。学生さんは相当ショックを受けていて、実習を中止したいとの申し出もあったようです」
「ちなみに……いまは大学も休んでいるそうです」「す……すみません!」「学校からもヤマトくんには言い聞かせましたが、ご家庭でも指導ください」「はい、本当に申し訳ありません!」ヤマトが引き起こした事態の深刻さに、私はただただ平謝りすることしかできません。
うちのヤマトが何かしでかしたのだろうとは思っていました。でもまさか教育実習生の学生さんがそこまでの被害を受けていたなんて……。小学生男子が成人女性に性的なイヤがらせをするなんて思ってもいない事態に、私は動揺していました。淡々と事情を話してくれる校長先生になんと返事をしたらよいかわからず、私はひたすら頭を下げるだけで精一杯でした。
「盛り上がった」「ノリで」軽い気持ちで女性を傷つけた息子
校長先生からお話を聞いたあと、担任の先生からも今回の事態についての説明がありました。いたたまれない気持ちで、何度も頭を下げて学校を出ました。
息子には怒りの気持ちでいっぱいでしたが、なんと言っていいかわかりません。息子も私の感情を察してか、何も話しませんでした。2人とも無言で帰宅します。そしてしばらく後、リビングにいるヤマトに静かに声をかけます。
ヤマトはしどろもどろになりながらも、事態を説明します。おおむね校長先生から聞いた内容と同じでした。「女性の気持ちをものすごく傷つけたんだよ。絶対やってはいけないことをしたのよ。いくら反省しても足りないような悪いことだから!」私がそう叱っても、ヤマトはいまいち自分がしたことの重さを理解していないように見えました。
「実習生さんが学校の先生になりたくて、勉強のために小学校に来ているのはわかるよね?」
「でも小学校に行くたびに心を傷つけられたら、学校の先生になりたいって思う?」「思わない……かも」「そうだよ。思わなくなっているから大学を休んでいるんじゃないの? ヤマトはお姉さんの夢をつぶしたかもしれないんだよ」
ヤマトはようやく事態の重大さに気づきはじめたように見えます。
「ちゃんと自分のやったことに向き合いなさい。お母さんや先生に言いにくいなら、スクールカウンセラーの先生と話して」「いいよ、カウンセリングなんて」いつも友達グループのなかではリーダー的な立ち位置の息子。カウンセリングルームは弱い子どもが助けてもらう場所で、強い自分が行く場所ではないと思いこんでいるようです。
「カウンセリングなんてかっこ悪い」ヤマトの情けない言葉を聞いて、私は怒りをおさえきれません。けれど小学6年生でこんな悪質な問題を起こしてしまうなんて……。これから私はどうヤマトに接するべきなのか、途方に暮れてしまいました。でもまずは実習生さんに謝罪することが先決です。私は徹底的にヤマト自身の問題と向き合わなければいけない、と決心したのでした。
原因は……親と制限ナシのスマホ?動画サイトから得た情報で
担任の先生の助言もあり、まずは先生と息子の2人で話をしてもらうことに。「カウンセリングルームに行かない代わりに、先生に話した内容はすべてお母さんも聞くからね」との了解を息子に取りつけました。担任の先生によると「やはり軽い気持ちでからかっていたみたいですね。ヤマトくんは目立ちたい気持ちが強いので、今回のような行動につながったのかもしれません」とのことでした。
「動画サイトには性的な内容に限らず、小学生が見るには刺激的なものもあるようなので、ある程度は管理された方がいいかもしれないですね」夫は単身赴任だし私も仕事が忙しく、近頃はヤマトと関わる時間が減っていました。反抗的な言動を繰り返すようになったヤマトを疎ましく思い、見せっぱなしでスマホに制限もかけずにいたのを強く反省しました。
ヤマトはすでに学校を出ていたので、てっきり家にいるものだと思っていました。しかし帰り道に近所の公園の前を通ると、子どもたちが何やら言い合いをしています。その中心にいるのはヤマトでした。
数人の同級生にヤマトが囲まれているように見え、慌てて駆け寄ります。どうやらトモノリくんたちが「ヤマトのせいで怒られた」と責め、ヤマトが「おまえらも同罪だろ」と言い返していたようです。
「ちょっと落ち着いて……」私が割って入るも、子どもたちは興奮しています。「もう友だちやめるからな!」「望むところだよ!」
「もういいよ。帰ろう」トモノリくんは他の子も誘って帰ろうとします。すると誰かが「ヤマトに嫌われると怖いぞー?」とおどけたように言います。しかしトモノリくんは……。
「ヤマトなんて怖くないよ。お母さんが『ヤマトくんは群れていないとダメな子だ。群れていないと強くない』って言っていたもん」トモノリくんはそう言って帰っていきました。ほかの子たちもそれにつづきます。後にはヤマトだけが残されました。
ヤマトは仲間に対して強く出て、輪の中心にいたがる傾向がありました。態度の強さで友だちを従わせたりコントロールしたりして、自分の存在意義を確認してきたのかもしれません。でもそれは決して心の強さなどではなく「内面の弱さ」だと、周りからはとっくに見抜かれていたのでしょう。それは私や夫がヤマトを寂しくさせているから? 正直これからどうしたらいいのか、今はまだその答えが見出せません。でも親としての関わり方を見直すべきなのは間違いないと思っています。
謝罪の手紙も拒否され……「息子の過ちと向き合う」親の責任
帰宅したヤマトはかつてないくらいに落ち込んでいました。自分の部屋にこもって出てきません。友だちに「ヤマトはダメなヤツだ。群れていないと強くない」と言われたことが何よりこたえたようでした。
ヤマトに寂しい思いをさせてしまったのは私です。そのせいで実習生さんを傷つけることになってしまいました。後悔してもしきれません。
「ヤマトも傷ついたと思うけど、きっと実習生さんもそのくらいショックを受けたんじゃないかな? 今のヤマト以上に傷ついたかもしれない」
「謝らないといけないよね」ようやく謝罪の意思を口にしたヤマト。私は翌日、電話で担任の先生にたずねてみます。「実習生さんにヤマトの口から直接謝罪させることはできますか?」しかし先生は言いにくそうに話しました。「いや、それは早々に伝えたんですけど……。息子さんの顔を見るのもイヤで、もう二度と会いたくないそうです」せめて保護者の私から謝罪したいのでお会いできないかとお願いしても、ムリでした。
「では手紙はどうでしょうか? 謝罪の手紙なら受け取ってもらえませんか?」「そうですね、受け取ってもらえるかはわかりませんが……」
ヤマトは手紙を書きました。軽率な言動だった、反省している、その気持ちをつたない言葉でつづっていました。
先生の方から大学を通して実習生さんに連絡してもらいましたが、「手紙は受け取れない」とだけ回答があったといいます。ヤマトが負わせてしまった傷はそれだけ深いということ。受け取ってもらえない事実がすべてなのでしょう。
その後、ヤマトはこれまで通り学校に登校しています。ただ以前のようにお友だちに強くは出ていないと先生から聞いています。
ヤマトは卑猥な言葉を浴びせてまで人の気を引くことで、自分のなかの寂しさを埋めていたのでしょうか。今回の件があるまで、私はヤマトの心の内にまったく気がつきませんでした。忙しさを理由に、どんどん反抗的になっていくヤマトとまともに向き合ってこなかったことをとても反省しています。今後はできる限りコミュニケーションを増やすよう心がけたいと思いました。ヤマトが傷つけてしまった学生さんには心のなかで深くお詫びしながら、夢をつぶしていないようにと願うばかりです。
【大学生の気持ち】実習での恐怖!教師になりたかったけど……
私(サヤカ)は21歳の大学生です。両親がともに小学校の先生だったので、幼い頃から教職への憧れが強くありました。念願かなって教育学部に合格したときは両親もとても喜んでくれました。子どもたちと過ごす毎日を想像し、大学生活を頑張ろう! そう自分に誓ったのです。
私は入学時からいくつかの小学校で教育支援ボランティアをしてきました。子どもたちは素直でかわいらしく、いつも「せんせい、せんせい」と言って慕ってくれます。絶対に小学校の先生になりたいという気持ちをいっそう強くして、教育実習にのぞみましたが……。
私が実習に入ったのは6年生のクラスでした。私が子どもの頃と比べるとずいぶんと大人びたイメージで、特に男の子は体格も大きく中学生かと思うほどです。なかでもリーダー格のヤマトくんが私に積極的に話しかけてくるのですが、たびたび卑猥な言葉があって困惑するようになりました。
「まだ子どもだし」と私は対処に迷っていました。真剣に怒ろうかと思いましたが、どう言えばいいのか判断がうまくできません。せっかくの実習の機会なのに、大きな問題になっても困ります。お付き合いしている彼に相談すると「担当の教授に相談した方がいいよ」と言ってくれましたが、「評価に関わったら」と思うとためらってしまいました。しかし……。
そのうち毎日のようにプライベートな質問をされて気持ちが疲れてしまいます。思い描いていた教育実習とぜんぜん違う……。ヤマトくんの質問はどんどんしつこく、内容も過激になっていきました。
心が恐怖でいっぱいになり、息ができないかと思うほどの苦しさを感じました。そのタイミングで教室に入ってきた担任の先生が気づいてくれ、ついに問題は発覚します。私は体調を崩してしばらく大学を休むことになりました。小学校から大学側へは事情説明がなされたようです。
ヤマトくんからは直接謝罪したい、それがムリならせめて謝罪の手紙を渡したいと申し出があったそうです。しかし私は二度とヤマトくんの顔を見たくありませんでした。両親の前で、私は思わず「学校の先生になるのはやめようかな」と弱音を吐いてしまいます。
両親は「小学校の先生になれば、それこそさまざまな児童と向き合うことになると思う。サヤカ自身で決めなさい」と言ってくれました。
しばらくして、近所に住む小学4年生のマキちゃんが手紙を持ってきてくれました。先日マキちゃんの小学校の文化祭へボランティアに入ったとき、私はマキちゃんたちと一緒に活動しました。
そこには「サヤカせんせいへ」と私への感謝や励ますようなメッセージがたくさん書かれていました。
弱っていた私にはとても沁みる言葉ばかりで、涙がとまりません。いろんな子どもがいると頭ではわかっています。マキちゃんたちのように可愛らしく慕ってくれる子ばかりではないのです。でも実際に荒れている子を目の当たりにし、自分が被害にあってみると……こんなにも動揺してしまうとは思いませんでした。
正直なところ、あのときの恐怖を思い出すと今すぐ教育実習に戻れるとは思えません。でもやっぱり私は子どもが好きだし、その成長に寄り添える教職に就きたい。マキちゃんたちからの手紙を見るたび、その気持ちを再認識しています。しばらく休んだ後に、もう一度じっくり考えてみようと思います。